インセプション Inception 視聴後感想

夢と現実の違いはどうやって見分けられるのか

今自分が見ている光景は本当に現実の世界のものなのか


夢の世界を主題にした映画「Inception (インセプション)」を視聴したので感想を書いてきます。

あらすじ

ジドム・コブは、人が一番無防備になる状態――夢に入っている時に潜在意識の奥底まで潜り込み、他人のアイデアを盗み出すという、危険極まりない犯罪分野において最高の技術を持つスペシャリスト。サイトーというエネルギー産業の重鎮の夢の中に侵入し秘密を暴こうとするが…

ジャンル SF/スリラー
監督 クリストファー・ノーラン
主演 レオナルド・ディカプリオ, 渡辺謙, ジョセフ・ゴードン=レヴィット

この映画のあらすじだけ読むとなんのことやらという感じの内容で、冒頭から始まる映像も理解が追いつかない場面から始まります。(SF系の映画は冒頭よくわからないシーンから始まるのはある種お決まりの流れで、飲み屋に入ってお通しが出てくるくらいのノリです)

端的にこの映画の根幹となるポイントをまとめると、

1.人の夢の中に入る技術(映画内ではインセプションと呼称)が確立された世界

2.夢の中では、夢を見ている本人の潜在意識や記憶が投影される

3.夢の中での数時間は、現実世界の数分程度であり体感時間が異なる

4.夢の中で死ぬ、または強いショックを受けると現実の世界へ覚醒する

1の内容はこの映画を見る上で大前提になる世界観で、寝ている人に機械から伸びるチューブのようなものをつなぎ、別の人につなぐことで夢の世界に入り込むことができます。

2の内容は夢の中の世界はその夢を見ている本人の潜在意識や記憶が投影された世界になっており、登場する人物は自分が見知った風景や人物が出てきます。

3の内容は夢の世界で体感する時間は現実の世界の時間の進みとは大きく異なります。

4の内容は夢から覚醒するトリガーとなる部分の話で、死や大きなショック(映画内ではキックと表現)を体感することで目が覚めます。

大まかにこの映画で多用される独自のSF要素の部分はここらへんになります。

映画冒頭までの内容で感想を述べていきます。


登場人物について

ドム・コブ(主人公):

人の夢に入ることに関しての知識が豊富な人物で、それを利用して他人の夢に入り秘密を暴くことで利益を得ている。長年の経験や知識からクレバーな立ち振舞をしているが、ある人物が登場することで冷静さを欠いてしまう。強い。

サイトー:

エネルギー産業におけるトップに近い会社の社長。コブからインセプションを用いることで利益をもたらすとセールスされるがあまり興味を示さない。自身の利益が出る行為に対して忠実で行動にすぐ移せる人物。

アーサー:

コブの相棒。頭は硬いが夢の中の世界での立ち回り方を深く理解している。強い。

モル:

謎の女性。コブと親しげにしているが、どこか不安定な言動をしている。


話の進め方について

序盤:

世界観の説明を小出しにしつつ、コブがサイトーにアプローチを掛ける。この時点でまだ理解しきれていないポイントが多くあるが、夢の世界で起きることを楽しみつつ登場人物の意味深な会話を記憶に入れていく。インプット少なめ。

中盤:

ある目的に向けて、登場人物たちが仕込みを始める。その仕込の内容はインプットする情報が多いが、映像や会話、アイテムなどで飽きない作りになっていた。新たに登場する人物が多いがキャラが良く立っているため混乱しにくく楽しめる。コブの精神を揺らがせる、大事な話の展開があり主人公の秘めている部分に触れる部分がストーリーにより惹き込ませてくる。

終盤:

中盤の仕込みを回収していくパート。展開が早く、場面転換が多く発生するが丁寧に中盤で仕込まれてたパートのおかげでストーリーについていける。仕掛けられていた伏線はすべて回収されていく。

総評:

SF映画は序盤の世界観の説明が頭に入ってこないと話についていけないこともよくあるが、この映画においては序盤以外に丁寧に世界観の説明がされるため理解が追いつかない展開は少なめためとても観やすい(SF映画が好きな人からすれば自身で思考する余地が多くあるわけではないため少し物足りなくなるかもしれない)。

また登場人物の中でその人物が抱える問題点について着眼される人物は2名ほどしかいないため、それぞれの登場人物について深く思考を巡らせることも少なくストーリーで集中して楽しめる。そのため主人公やキーとなる人物以外のサポートする人物たちが織りなす会話や行動を純粋に楽しむことができた。

SF映画において、重視されている(個人的にそうだと考えている)点は、技術的な部分のフィクションが以下に興味を引く内容かだと思っている。この映画が主題にしているのが睡眠時に見る「夢」の話で、親しみやすいテーマであり、コブが話す夢における行動がもたらす影響については現実味のある内容のため終始興味深い内容だった。

公開されてから少し時間の経っている映画ではあるが、興味がある人は是非見てほしい。Amazon primeの会員であれば無料で観れる。

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B00FIWNIQ8/ref=atv_hm_hom_1_c_w3sIkr_brws_4_7


以下、ネタバレを含む感想






夢のときに体験する出来事について、どのような意味を持つのか、自身が潜在的に持っている意識の投影であるなどよく言われているため自分が見た夢の意味について思い出すことも多い。

自分が直近で見た夢は、大学時代に単位が足りず絶望するという昔の体験に基づいたトラウマのような内容であり、それを見た私は今でも潜在的に恐怖していることなのかなと考えてみたりする(この夢はよく見る)

インセプションの主人公であるコブも、自信が夢の世界について深く研究しており誰よりも熟知しているが、アリアドネに対して助力を求める必要があるほどの欠点が不安要素として常にちらついていた。

このアリアドネという女性がとてもこの映画において大事な立ち位置をしていた。学生でありながら柔軟な思考を持ち夢の世界を構築するにおいて綿密が想像をできるため主人公たちの計画をサポートすることもでき、コブが持つ不安要素の部分がなんであるかを知りその部分の解決に向けてサポートをしていく。

人が持つトラウマの部分に触れていくことはタブーに近い行為であるが、同情からではなく計画という目的のため、またコブを救うため(ここに関してはアリアドネの思考が説明されているわけではないので見たままの内容から推測)アリアドネがコブの夢の世界に閉じ込められたモルに対して理解と解決を促すのはとても自然であり、コブが大きく拒絶するような内容でなかったため辛くなるような展開はなかった。

物語の終盤でコブが持つトラウマがモルが亡くなったことである、ということではなく実は自身が夢の中で植え込んだ潜在意識が原因であるという説明には正直聞いていてとてもつらくなる。最後の場面で彼女と向き合えたのはご都合的では?と思わせないためにアリアドネが少しずつ彼のトラウマに触れていったことで、この展開に違和感を持たせない自然な流れを展開していた。(ある意味カウンセラー的な役割を担っていた)


映画の中でオモシロイと思った設定は、夢には階層があり夢の中でまた眠るとより深い階層の夢に進めるということと、深い夢の中で死んでしまうと虚無という何も存在しない空間に落ちるという点。

階層が深くなるほど現実世界の時間の流れからより離れ遅くなる。この設定が終盤における緊迫感を生み出しているので良い設定だった。

終盤で作戦の実行中にサイトーが死にかけることで虚無という世界についての説明があり、そこに落ちることでとてつもない膨大な時間をその中で過ごさないといけないという説明があったにもかかわらずコブがその世界にサイトーを連れ戻すため赴くという流れも面白い。


サブを固める登場人物たちも個性的で、特に好きだったのは夢の中であれば特定の人物になりすますことができる能力を持った人物だった。性格も飄々としておりとても強い(便利なキャラでこの人がいなかったら計画は回らなかっただろう)


ドンパチするシーンではもう少しはっちゃけてくれても良かったと思う反面、夢を見ている人物に対して、現実味のない空間を見せてしまうことは計画上NGであるという設定があったためその点についても整合が取れている。


夢の世界の話であると言われると映画パプリカのような世界を想像するが翌々考えてみれば大人になってから見る夢はどれも現実の世界で体験したことをベースに構築されているものが多い。

そうして考えるとこの映画におけるSFの要素は人の夢の中に入るという部分のみで、それ以外は完全に現実に起こりうる内容だったためこの映画を観たことによって今後私が見る夢の内容にも変化をもたらすことがあるかもしれない。また寝ることが楽しみになる一つの要因が増えたのはとても喜ばしい。






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