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企業の安全性を計る指標

おはようございます。🐤

私自身の理解と記憶があやふやなところを深掘るシリーズ、第1回は企業の安全性を計る指標です。流動比率、固定比率、当座比率、そして固定長期適合率、あげく損益分岐点比率って言われたら寒気がしませんか?
「怖い、話しかけないで」となりませんか? 私はなりました。

なので、自分からそこに突っ込んでいきます。今日はなんとか比率というのを図解し、理解し、記憶に定着させていく作業をしていきます。なお試験にはほぼ出ないので、一度見たらあとは復習する必要はありません。他の勉強をしましょう。


貸借対照表

まずは、流動比率や当座比率などの数字は貸借対照表の中の数字をもとに計算されています。貸借対照表はある時点での会社の資産の状況を表したもので、左側に資産、右側に負債と純資産、そして左と右は常につり合っているというものでした。

これをもう少し詳しくわけると次の図のようになります。

なぜこんな風に分けるのかというと、資金繰りができるのかどうかを見極めるためです。いくらたくさん資産をもっていても、それが全部土地や建物などの固定資産であれば、簡単には現金にすることができないので、すぐに支払いはできません。

ということで資産を流動資産固定資産に分けます。

流動資産とはおおむね1年以内に現金化できる資産で、現金や預金、1年以内に満期になる定期預金や債券、売掛金や受取手形、そして原材料や商品などがこれにあたります。原材料や商品も含まれるのがポイントで、例えばパン屋さんなら小麦粉やバターが原材料、日持ちのする焼き菓子の在庫などが商品にあたると思います。これは売るためのものなので、売ればすぐに現金化できるという考えです。

固定資産は土地や建物のほかに株式なども入ります。株式なんて売ればいいのにと思うんですけど、関連企業の株などは簡単には売れないのでこちらに分類されます。一般の株式でも特に売る予定が決まっていなければこちらに分類されます。

また、負債も流動負債固定負債に分けます。

流動負債はおおむね1年以内に支払う必要がある負債で、買掛金や支払手形など、普通に取引をしていて発生する債務を含みます。

固定負債は1年以上にわたって借り入れている負債で、社債や長期借入金のうち1年以内に支払期限がこないもの、退職給付引当金などがこれにあたります。

そしてさらに流動資産の分類を細かくします。

流動資産を当座資産とその他に分けます。当座資産とはほぼ現金と同じように「今すぐにでも現金として支払うことができる」というイメージのもので、その他は仕入れた原材料や商品など「おおむね1年以内には現金化できそう」というイメージのものです。

だいたいなんとなくのイメージはわかってきたでしょうか。とにかく簡単に現金として今すぐ支払いに使えるお金と、1年以内には現金になるだろうけど今すぐは無理な原材料や商品など、そして簡単にはお金にできない固定資産というような3つの分類になります。

これらを使って、企業の経営状態を表す指標をつくっていきます。

流動比率

まずは流動比率です。これは流動資産/流動負債で表すもので、要するに1年以内に支払いがくるものに対する支払いの能力を表しています。支払いの能力は商品が売れることなども計算に入れていて、在庫を抱えるかどうかの業種にもよりますが目安は150%から200%くらいを超えてくると健全だというところです。

当座比率

次に当座比率。これは当座資産/流動負債で表すもので、1年以内に支払いがくるものに対して、現金や預金がいくらあるかという比率を表すものです。流動比率と似ていますが、商品の売り上げを見込まないのでさらにシビアです。これが100%を超えているのが健全性の目安です。

固定比率

次に固定比率です。これは企業がもつ固定資産が、どのようなお金をもとにできているかということを表すもので、固定資産/自己資本の計算式で表します。固定資産の話であって固定負債には関係がないのがポイントです。

つまり、土地や建物、機械装置などの固定資産をぜんぶ自分のお金で購入しているか、一部負債に頼っているかという違いです。事業を大きくしようとするときには設備などを借り入れに頼るのが普通なので、その企業の業種や成長段階によっては100%以下というのは難しいですが、ぜんぶ自分のお金で購入している方が健全だということです。

自己資本と純資産の違い

ここで、自己資本と純資産という二つの言葉が同じような意味で使われていますが、だいたい同じようなものです。厳密には次のようなくくりになっています。

なので、C分野(金融資産運用)の応用編で次のような問題が出たとしたら、自己資本は「純資産-新株予約券-非支配株主持分」と計算しないといけないんですね~。

この数字を見てもわかるように、新株予約権や非支配株主持分は全体からすると小さな割合なので、このように明記されている時を除くとおおむね純資産と自己資本は「同じようなもの」として扱うことがFP試験では多いです。

固定長期適合率

固定比率に似ていますが、こちらは長期借入金も含めたものです。事業を拡大する時など、自己資金では足りずに借入金に頼るのですが「自己資金と長期の借入金と合わせた額と固定資産との比率」を表すものです。小さい方が健全で、これが100%を超えているということは、今持っている固定資産を自己資金と長期の借入金を超えた額で取得しているということで、まあまあ危険な状態といえます。

固定長期の「長期」が覚えるポイントでしょうか。固定負債を含む=長期借入金を含むというイメージです。

自己資本比率

貸借対照表の左側全体=総資本(資産)に対する自己資本の比率です。

「純資産」と「総資産」がぱっと見すごく似ているので注意です。

損益計算表

つぎに損益計算表からわかるものです。

インタレスト・カバレッジ・レシオ

これ、毎回のように出題されるので絶対覚えておきましょう。

インタレスト・カバレッジ・レシオ=事業利益/金融費用

となっていて、事業利益は営業利益+受取利息および受取配当金となり、金融費用は支払利息です。試験問題に出るのはこんな感じ。

2023年1月 応用編第2問

要するに、お金を借りると利息を払わないといけません、社債を発行しても利息や割引料など借りた額よりも多くの額を返すことになります。これらはできれば支払いたくない余分なお金ですよね、でも資金を融通するためには必要なもので、これを金融費用といいます。

この返済額をまかなうために、毎年どれだけの事業利益がでているのか、その比率を表すことで企業の健全性を計ろうというものなんですね。事業利益は営業利益のほかに投資から得られる配当や利子を含みます。

事業利益って耳馴染みはある気がしますけど、以前やった「5つの利益」には入っていないんだなぁ。難しいなぁ。

サスティナブル成長率

ROE(1-配当性向)だけ覚えていたら大丈夫。ただROEの計算はReturn On Equityなので、「Return/Equity=純利益/株主資本」だと思うのですがFP1級の試験では「自己資本純利益率=純利益/自己資本」となっています。これはこういうものだと覚えるしかしょうがないです。自己資本です。

よくあるのは、PERとPBRからROEを求めさせる問題です。

PER=株価収益率=株価/一株あたり純利益
PBR=株価純資産倍率=株価/一株あたり純資産

Bookvalue=純資産なので厳密には自己資本とは違うのですが、ここはたいてい「純資産は自己資本と等しいものとする」などの注釈が入っているので、あまり細かいことを気にせずに次のような式にしてしまって大丈夫です。

ROE=純利益/自己資本(純資産)=PBR×1/PER

2021年1月基礎編 問21

PBRの方が小さいので、だいたい小数になって数パーセントの値になります。例えばPER=17.6、PBR=1.10などといった具合なので、1.1/17.6という計算をします。答えが0.08とかそれくらいの数字になって、あとは(1-配当性向)という概ね60%から70%程度の数字をこちょこちょとかけて完了です。

損益分岐点比率

損益分岐点比率と聞くとひぇぇ~と逃げ出したくなりませんか? 私はアイドル踊ってみたのショート動画を見たくなってきます。

おおまかには「営業利益がゼロになる時の売上高/実際の売上高」ということのはずです。つまりこれが100%だと利益ゼロでカツカツ、100%以下だと利益が出ていてウハウハということです。

FP1級の試験では、問題を簡単にするために変動費=売上原価と等しく、固定費は販売費および一般管理費に等しいとされています。だから上の図のようになります。この図は覚えないとしょうがないですね。くり返し解いているうちに覚えてしまいましょう。

変動費とは例えば仕入れや原材料費などのように、これが増えれば売り上げも同じ割合で増えていくという性質のもので、FP1級試験ではこのが一定だと考えます。

つまり、売上高×率=変動費となります。

固定費とは人件費や家賃など売り上げに関係なく、一定に係る費用のことです。FP1級試験ではこのが一定だと考えます。

売上高=変動費+固定費+営業利益ですから、

売上高=売上高×率+固定費+営業利益となります。

損益分岐点では営業利益はゼロと考えるので、

売上高=売上高×率+固定費となります。

この(=変動費率)の求め方は簡単で、変動費/売上高で求められます。

問題文で与えられている数字では、変動費は「売上高-売上総利益」で、固定費は「売上総利益-営業利益」で求めることができるので、求めておきます。

2023年1月 応用編第2問
  • 売上高=2,800

  • 変動費=(売上高-売上総利益)2,800-770=2,030

  • 変動比率=2,030/2,800=0.725(72.5%)

  • 固定費=(売上総利益-営業利益)770-176=594(一定)

  • 営業利益=176

ということで、損益分岐点は

売上高=売上高×0.725+594

となるような売上高となるので、簡単な一次方程式を解くと

売上高−(売上高×0.725)=594
売上高(1-0.725)=594
売上高×0.275=594
売上高=594/0.275
=2,160

となり、損益分岐点売上高=2,160となります。

私は限界なんとかという単語がいまいち意味がピンとこなくて、何が限界なのかと思ってしまうタイプなので、このやり方で解いています。一般的じゃないかもしれませんが参考になれば嬉しいです。

ちなみに、売上高が10%少なくなると

2800*0.9=(2800*0.9)×0.725+594+利益となるので、これも簡単な一次法的式を解いて

2520=2520×0.725+594+利益
利益=2520(1-0.725)-594=99 となります。

あと、2019年9月のようなレアケースにも対応できます。(非常にめんどくさいけど)

売上高と変動費から変動比率を求めて、あとはこちょこちょと計算していきます。

a. 売上高が2億円である場合の変動費が6,000万円、固定費が4,000万円である企業は、固定費を1,400万円削減すれば、損益分岐点が2,000万円低下することになる。

2019年9月基礎編 問33

変動比率:6000/20000=30%
もとの損益分岐点:売上=売上×30%+4000万⇒5714万
固定費を4000万から1400万削減=2600万円
変化後の損益分岐点=売上=売上×30%+2600⇒3714万 ⭕

b. 売上高が2億円である場合の変動費が8,000万円、固定費が3,000万円である企業は、変動費率が10ポイント上昇すると、損益分岐点が2,000万円上昇することになる。

2019年9月基礎編 問33

変動比率:8000/20000=40%
もとの損益分岐点:売上=売上×40%+3000⇒5000万
変動比率10ポイント上昇=50%
変化後の損益分岐点:売上=売上×50%+3000⇒6000万 ❌

c. 売上高が2億円である場合の変動費が8,000万円、固定費が4,000万円である企業が2億円の利益をあげるために必要な売上高は、4億円である。

2019年9月基礎編 問33

変動比率:8000/20000=40%
売上=売上×40%+4000+20,000(利益)
売上=40,000 ⭕

という感じです。これで、企業の安全性を計る指標で、貸借対照表と損益計算書から出る問題は完璧です!

それではまた、FP~(@^^)/~~~

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