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離婚時の年金分割(2023年9月基礎編 問5)

おはようございます。🐤

離婚時の年金分割です。過去問に出てきたことがないな~、これも初見か、初見だったらできなくてもしょうがないな~。

というわけで、離婚時の年金分割について学んでいきましょう。


過去問に出てる

【FP解説】差がつく在職老齢年金と離婚時の年金分割。イメージできれば簡単さ【完全A15】 - YouTube

で、出てる、ほんださんの動画でしっかりめに解説されてる。1級どころかFP2級の過去問にも出てる。ぜんぜん初見じゃなかった、勉強してるとか過去問10年分やったとか豪語してたのに…記憶のすみっこにもぜんぜんひっかかっていなかった。

離婚時の年金分割をざっくり説明

夫婦が離婚をするとき、厚生年金記録(標準報酬月額と標準賞与額の記録)を分割することができる制度があります。

「厚生年金記録を分割できる」

この短い言葉に離婚時の年金分割の全てが詰まっていて、まずは分割できる対象は「厚生年金記録」だということです。国民年金(第1号被保険者)は分割することができません。

厚生年金の給付額の計算方法は、標準報酬月額×割合 とか 標準賞与額×割合 という計算式で算出されますから、ここの標準報酬月額とか標準賞与額が増えると受給額もそのまま増えますので、厚生年金記録が増えるというのは受給額が増えるのと同じ意味になります。

分割の方法には2種類あって、3号分割と合意分割といいます。

3号分割

3号分割の「3号」は、厚生年金の被保険者の被扶養者だった期間、つまり国民年金の第3号被保険者から来ています。

被保険者とか被扶養者とかすぐピンと来ない言葉ですね、ピンと来る言葉に直すと、会社員に扶養されていた期間の分の50%の厚生年金の納付記録をもらうことです。

上の図のような夫婦がいたとします。
白くんは黒さんとの婚姻期間中に5年間の第3号被保険者期間があります。その期間は黒さんが仕事でしっかり稼いで来れるように、家事をしっかり頑張っていました…かどうかは知りませんが、とにかく現在の厚生年金の制度では、黒さんの稼ぎの半分は白くんのものだという考えに立っているのです。

だから、白くんが離婚後に「3号分割」を請求すると、下の図のように黒さんの報酬月額の50%が白くんに分割して与えられます。白くんは3号被保険者であった期間中、黒さんの半分の稼ぎがあったものとして厚生年金の計算がされるのです。

例えばその期間の会社員の給与が50万円だったとしたら、その50%の25万円分の記録が分割されるということで、白くんはその時25万円の給与があり、厚生年金の納付もしたものとみなされるわけです。

なお、この分割で受け取った期間は「被扶養配偶者みなし被保険者期間」として「被保険者であった期間」とみなして扱われます。この期間は老齢厚生年金の額を計算する際には被保険者期間として扱われますが、受給資格期間には算入されません

昨日の寡婦年金のところでも少し説明しましたが、会社員の配偶者というのはとてつもなく優遇されていて、それはなぜかというと、会社員を家庭の面で支えているから会社員として稼ぎを得られるのだと、二人でひとつの夫婦なんだよという考えがあるのです。

だから会社員じゃない方の配偶者に50%を与えるのは理にかなっているのです。これは請求しないともらえないけど、請求すればもらえます。会社員の承諾などはいりません。

注意しないといけないのは、3号分割が認められるのは2008年4月1日以降の期間だけです。

合意分割

つぎに合意分割です。これは相手の承諾を得なくてもよかった3号分割とは違って、文字どおり「相手の合意」が必要です。

例えば、またさっきと同じ例で上の図のような会社員夫婦がいたとします。

婚姻期間中の二人の厚生年金記録は、
白くんは:5年間×12カ月×20万円=1200万円の記録があり、
黒さんは:10年間×12カ月×50万円=6000万円の記録があります。

厚生年金の考え方では、夫婦は2人でひとつということだから、この夫婦は合わせて7200万円の給与を得ていたのだとして、合計の最大で50%(=3600万円)をもらえる権利があるということです。

これは3号被保険者があってもなくても同じで、合意分割の請求がされたら、3号分割の請求も同時にあったものとみなして計算されます

白くんが何もしなかったら、もともと自分の権利だった1200万円の記録が自分のものなのですが、合意分割を請求すると最大3600万円の記録が自分のものになります。

注意点としては、分割の割合は1200万円(自分の1200万/全体の7200万=16.7%)から3600万円(50%)の間で、夫婦で合意した額だということです。婚姻期間外の年金記録は含みません。また、割合だけではなく期間も婚姻期間内で自由に設定できます

3号分割と同様、この期間は「離婚時みなし被保険者期間」として老齢厚生年金の計算には算入されますが、受給資格期間の判定には算入されません。

なお、合意分割の手続きが終わったとして、年金をもらえるのは65才からなのですが、仮に現在65才以上で既に年金を受けている人が合意分割の請求をすると、請求の翌月から改定された年金記録による計算で年金が支給されます。

年金分割(統計データ)

合意分割は、割合や期間は自由に設定できるということなのですが、実際はどうやって決めるかというと、ほとんどが最大限の50%を請求されます。で、合意できなかったらどうなるのかというと、さらに家庭裁判所に調停を請求できます。

そして調停が請求されたら、基本的にはよっぽどの不誠実な行為などがない限り50%で決定されます。

この図では黒さんが圧倒的に収入が多いので、白さんが合意分割を請求するのですが、黒さんが嫌だな、分割したくないなと思って「いやや」と拒否したとしても、白さんが続いて調停を請求したら99%くらいの確率で「50%」と家庭裁判所に決められるのです。

それでもまだ黒さんが「いやや」と拒否したとしたら、家庭裁判所が50%の審判を下すので、結局50%で分割しないといけないのです。厚生年金の夫婦の考え方というのはそれくらい強いのです。白さんが黒さんを助けていたかどうかはそこまで問われません。

夫婦である限り、常にお互いの稼ぎを足して2で割ったものが自分の取り分だということです。厚生年金の計算ではそういうものなのです。諦めてください(何を?)

2023年9月基礎編 問5

一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級学科試験より

1) 老齢厚生年金を受給している者について合意分割の請求が行われたときは、合意分割による改定または決定後の標準報酬を当該年金額の計算の基礎として再計算し、当該合意分割の請求のあった日の属する月の翌月分から年金額が改定される。

⭕️:すでに年金を受給していて離婚、まあ最近は熟年離婚といいますから、よくあることなのでしょうか。FP試験って実生活にすごい密接して役立つことが出題されるんですね。すごい良い問題です。
あ、答えは文章のとおりで、請求書類が揃うと翌月からすぐに改定されるそうです。

2) 3号分割の対象期間は、2008年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者であった期間であり、原則として、その間の相手方の厚生年金保険の保険料納付記録(標準報酬月額・標準賞与額)は2分の1の割合で分割される。

⭕️:3号分割は50%固定です。請求したら拒否されることはありません。「いやや」と言っても聞いてくれないのです。注意点は問題文のとおり、2008年以降の婚姻期間しか認められないことです。

3) 離婚の相手方から分割を受けた厚生年金保険の保険料納付記録(標準報酬月額・標準賞与額)に係る期間は、分割を受けた者が老齢厚生年金の支給を受けるために必要となる受給資格期間に算入される。

❌:分割されるのは標準報酬月額とそれに対する期間なので、当然老齢厚生年金の計算の時には「納付月数」に算入はされますが、受給資格を判定する際の期間には算入されません。
つまりどういうことかというと、国民年金を10年以下しか納付していない配偶者だったとして、その人が5年間の合意分割を得たとしても、合計で10年間以上年金を納付しなければいけないという受給資格を満たさなければ、合意分割分ごと年金は受け取れないということです。

4) 合意分割の請求が行われた場合、婚姻期間に3号分割の対象となる期間が含まれるときは、原則として、合意分割と同時に3号分割の請求があったものとみなされる。

⭕️:選択肢の文章のとおりです。要するに合意分割があったら、その合意した期間(ほとんどの場合は婚姻期間すべて)についての年金記録の合計を、その合意した割合(ほとんどの場合は50%)で分けます。その合意した割合と、実際の差が、多い方から少ない方へ分割されます。
なお、合意分割は2008年以前でも以後でもかまいません、期間の制限はありません。3号分割は2008年4月以降の期間に限られます。

まとめ

すごい、リアルに役立つ知識でしたね。問題作成者に感謝、こういう問題をもっと増やしてほしい。現実に役立つ資格だと言われたい。

  • 厚生年金は夫婦で平等になるように、50%:50%に分割できる

  • 3号分割は、3号被保険者であった期間があれば、相手の同意がなくても請求できる

  • 3号分割の対象は2008年4月以降の婚姻期間(合意分割は制限なし)

  • 合意分割は、3号分割の期間もひっくるめて婚姻期間の合計額の最大50%になるよう分割できる。ただし夫婦の合意が必要

  • 合意分割の期間と分割割合は自由に設定できる

  • ただ、現実は最大の期間、最大の割合(50%)を請求されることが多い

  • 相手が合意しなくても、調停と審判を申し立てれば50%は勝ち取れることが多い

FP試験以外の人にもお役にたてたら嬉しいです。

それではまた、FP~(@^^)/~~~

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