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香りの沼5: 夏的香り

日本の夏はむわんと暑く、香水をまとうにはあまり向かない気がします。どれほど「素晴らしい!」と気に入った香りでも、夏になると途端に香りが強まり、脳天に響くキツさが出てきてしまうからです。秋・冬には毎日親密に接したのに、夏になると距離感がバグり「鬱陶しいんだよ! つか暑苦しいわ」となってしまうあの現象。すまない、君たち(香水)のことを嫌いになったわけじゃないんだが……。
そんな中でも「おや、あなたとは夏中よろしくやっていけますね」という香りは、不思議なことに存在します。今日はそんな夏的香りから、おすすめのものをいくつかご紹介します。


パンパ ウメダ:フエギア

夏の草原の香りです。みずみずしい植物の息吹を感じる、本物の草の匂い。
子どもの頃、私は広い庭つきの一戸建てに住んでいました。夏は雑草が嫌になるほど伸びてきて、毎週芝刈り機で草刈りを行う必要がありましたが、この香水は芝刈りを終えた瞬間そのものの香りがします。
刈りたての草の匂いは鮮烈です。子供の頃にはそれが惨殺された草花の悲鳴のように思えて、なんともいえない心地がしたものですが、今となってはこの香りには癒ししか感じません。抜けるような清冽さをまとえば、蒸し暑い日も爽やかに感じられます。公式の説明文は下記。

蒸し暑い雨季の後に、寒冷前線の伴う冷涼かつ乾燥した風の香り。強風により雲を消し、太陽により果てしない緑の草原を照らし出す。イングランドの探検家ヘンリー・ハドソンは記憶に刻んだこのパンペーロのことをよく表現していた。この香りにより彼の記憶が伝達される。

https://fueguia.jp/products/pampa-humeda

「パンペーロ」とはスペイン語で、アルゼンチンにある草原地帯(パンパ)に吹く冷たい風のことなのだとか。夏の草原に吹く涼やかな風……まさしくイメージ通りの匂いですね。非常に美しく透き通るような香水で、夏にぴったりだと思います。

シアンノリ:Abel

桃のフルーティーさと海の塩っけを感じる香り。香り立ちは柔らかく、数時間後には薄まり消えているので、そのへんも夏にちょうどいい気がします。

余談ですが、シアンノリには15mlのレイヤリングセットがあります。ピンクアイリス・グリーンシダー・シアンノリの、15mlの3種セットで、50mlとほぼ同じお値段になっています。様々な香りを楽しみたい方にはセットがおすすめです(もっと小さく、ディスカバリーセットもあります)

話を戻して、シアンノリには塩っぽさを強く感じます。吹きつけた瞬間は爽やかな桃とムスクで、肌に残されるのは塩感。そして香り自体の持続は弱く、たっぷり3プッシュでもすぐに消えてしまう……。公式説明は下記の通りです。

雲間を突き抜く太陽の稲妻が、眼下に広がる青緑の海へざぶんと飛び込む。割れた波はしぶきを上げ、甘美でフレッシュな霧となった。これは海への感謝と慈愛に満ちたロマンチストたちの挑戦。
トップ|タンジェリン、ホワイトピーチ
ボディ|ムスク(植物由来)、グリーンティー、ベルガモット
ベース|アンバーグリス(植物由来)、海苔アブソリュート

https://noseshop.jp/products/154843134

上記の「ベース」部に出てくる「海苔アブソリュート」という面白単語。この塩っぽさはまさしく海苔からきているんですね! 珍しい……!
「アブソリュート」とは香料で、天然植物から溶剤を使って抽出された成分なのだとか。エッセンシャルオイルよりも凝縮されており、非常に強く香るのだそうです。つまり、海苔をぎゅぎゅっと濃縮しているんですね~。なんかすごいや。
私はこの香水を、他のものと重ねて使うことが多いです。これひとつだと儚く香りが溶けてしまうし、塩っぽさが強すぎる気がして……。
もっともよく重ねているのは、ロジェ・ガレのオパフュメフィグ。イチジクのフレッシュなフルーティーさとシアンノリの塩感が合わさり、上品で華やかな香りになります。さらっと香る自然な組み合わせで、夏にもおすすめです!

プンプン | あるがまま: Maison Matine

個人的にはウェイの香り(失礼、ウェイの方々)
キウイ、キウイ、キウイ! という感じ。つけたては爽やか、甘すぎず重すぎず、さっぱり消えて軽やかにまとえます。

新しい世界を受け入れた私達は未来の次なるステップへと集中。あるがままに自然体で。内なる鼓動に導かれ、自分が自分であることを誇る。命を一滴残らず存分に味わい尽くす。ここからはじまる壮大な人生の祝祭。
トップ|ローズ、マンダリンツリーフラワー、オレンジキウイ
ボディ|オーキッド、ピオニー、フリージア、ローズ
ベース|ムスク、サンダルウッド、エボニー、バニラ

https://noseshop.jp/products/mam-pf-pom

快晴の海沿いをオープンカーで走っているとき、こういう香りをつけていたいです。よくある男性的な香りではなく、中性的でさっぱりしています。フルーティーさの後にはフローラル感とバニラが出てきて、優しく着地。シャンプーやボディーソープのような自然さもあり、夏に非常におすすめです。軽やか!


ざっとこんな感じかなぁ。今日はここまで。
夏向けの香りというか、「これなら夏もいけるんじゃない?」という香水は他にも、ルラボのテノワールや、フエギアのラ・カウティーバ、Maison Louis Marieのアンティドゥリス カシスなどがあります。そのあたりも別の機会にご紹介したいです。
暑い夏でも素敵な香りがあればハッピーに塗り変えられますよね。これだ! という1本で酷暑を軽やかに過ごしていきましょう!
それでは~。

#夏のメイク

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