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アニメ

Netflix。ひやむぎに幸福を与えてくれる偉大なサービスだ。毎月1,200円でアニメもドラマも見放題。ぜひこれを機に登録を…。

実はひやむぎは友人のKくんからアカウントを借りているので、無料で見ている。(1契約で5人まで同時にアカウントを持てるらしい)初めて教えてくれたときは何がなんだかわからなかったが、今となってはNetflixがないと時間を持て余してしまう体になってしまった。

Kくんとの仲には、1年半の「空白の時間」がある。彼のご家族を襲った不幸、本人の身体的な不調、そして障がい者認定。大学を共に卒業してしばらく、彼とは連絡が取れなかった。

「まあその節は迷惑かけたねぇ」列に並びながら苦笑いしているKくん。仕事終わりにスターバックスコーヒーで再会した。お礼とお詫びにと言わんばかりに、抹茶フラペチーノをごちそうしてくれた。先ほどすれ違った人が持っていて気になっていたのだ。まさか見られていたとは…!Kくんはいつも人を良く見ている。

およそ2年振り、目の前にいるKくんに何を話そうか。仕事?学生時代の思い出話?この間あんなことがあったばかり。言葉選びに細心の注意を払い過ぎて、話し方がぎこちなくなる。

「おそ松さん、たぶんむぎくん好きだよ!」

素直に驚いた。ちょうど職場でそんな話を聞いていた。ギャグアニメが好きだ、なんて話したことはなかった。

「おそ松さん好きなら、斉木楠雄のΨ難とかも気に入りそうやね!」

Kくんのアニメ語りが楽しくて、気づけばあの時のように話していた。

僕はアニメを見る。『文豪ストレイドッグス』『おそ松さん』『ブラック・ジャック』『四畳半神話体系』など。

異能力、ニート、外科医、阿呆学生。統一性なんてまるで無いが、そこには少なからず「日常」がある。アニメという非日常に組み込まれた日常。まったく関わりのない作中なのに、デジャブのような感覚を持つ。街を走る車の音、牛丼屋、商店街。人の日常を垣間見ると、なんだかほっとする。

2020年。当たり前に過ごしていた日常は驚くほどにガラッと変わってしまった。何も考えずに行っていた居酒屋、ばか騒ぎしていたカラオケ、満員でも気にならなかったバス。マスクをしていないだけで避けられるようになり、アルコール消毒で手は荒れに荒れた。体内に摂取するアルコールは好きだが、皮膚に直接かかるそれは嫌いだ。いつまで待てばいいのかわからない、先の見えない不安に駆られ、次第に不安定になったのは思い出したくもない記憶だ。

それでも日常は続く。顔に当て布をした相手の表情を読み取れぬまま。マスクを取ったのを見て「え?!」と驚くこともある。驚いた理由は想像にお任せする。

Kくんは一人暮らしの拠点を移し、新たに鍼灸師を目指すそうだ。例えようのない様々な苦しみを抜けた先に彼が見出した路を応援したい。

「『鍼灸師K』ってアニメ知ってる?」急にまじめな顔を作って、Kくんに言った。彼はまた、温和な笑顔を浮かべた。

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