骨のガーゴイル

まるで彫刻の様に動かなかい白骨化したガーゴイルが突然動き出したのだ。
当然筋肉などとうに腐り落ちている。しかしそれは見えない筋肉で動いているかの如く、自然に歩みよってくるのである。
背中を1滴の汗がつうーっと流れる。目の前で起こっている状況が上手く飲み込めない。
しかしここは何が起こってもおかしくない場所なのだ。
ガーゴイルは無造作に自身の尾を手折り、矛の様にして刺突を繰り出す。
一瞬反応が遅れ、矛の切先が左腕をかすめた。
矛は見た目以上に鋭いらしく、少し触れただけの皮膚がきれいに裂けた。
痛みはあったが血は出ていない。それほど深手ではないようだ。
ガーゴイルは一度引いた刃を再び前へ突き出す。同じ動き。今度は反応が間に合う。
盾を少し斜めに構えて刺突を上手く外側へとそらした。しかし今度は薙ぎ払いを仕掛けてくる。
仕方なく盾で受け止めた。ガンッと盾と矛がぶつかる音が静寂に包まれた城内に響き渡る。
力は強いが結局は骨に過ぎないのか、それほど一撃は重くなかった。それでも鋭利な切先は十分に脅威であったし、
軽さを生かした速さも侮れない。そう考えた彼はバックステップで距離を取り、すかさず懐からナイフを投げつける。
さらにナイフに追随する形でガーゴイルに向かって大きく踏み出す!!
まずガーゴイルは飛来するナイフを矛によって打ち払った。そこで構えが崩れる。
彼は剣を構えてガーゴイルに斬りつけながら左側を走り抜けた。
直後に響くガシャンという乾いた音。矛を持ったままの右腕が落ちる音だ。
彼はその場で反転しつつ横なぎに斬撃を放つ。胴と左腕を簡単に切断し、崩れ落ちたガーゴイルの骨は、
ようやく時の流れを思い出したかのように風化してしまった。

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