「メイストーム」という言葉が生まれるきっかけとなった嵐の事例

「メイストーム」という気象の言葉があります。
その名の通り、5月の嵐です。

デジタル台風 天気図データベースより

1954年5月10日9時、低気圧は北海道の東へ進み、
中心の気圧は952ヘクトパスカルとなりました。

北海道の留萌では、
1954年5月10日に962.5ヘクトパスカルという気圧を観測し、
未だに統計開始からの最も低い記録となっています。
このほか、小樽や岩見沢、倶知安でも、統計開始からの最低気圧は、
この日に記録したものになっています。

この急速に発達した低気圧は、移動速度も速く、
風がいっそう強く吹きました。
このとき、根室沖に出漁していた漁船が嵐に巻き込まれ、
400隻以上の船が遭難、
350人以上が死亡または行方不明となりました。

このときの嵐は、5月10日の嵐ということで、
「ゴヒトマル」や「ゴトウ」と呼ばれています。
実は、この「ゴヒトマル」または「ゴトウ」と呼ばれる嵐こそ、
「メイストーム」という言葉のきっかけになったものなのです。

<参考 防災歳時記 「メイストームで海や山が大荒れ」 (元気象庁天気相談所長・NHK気象キャスター 宮澤清治氏)>

「メイストーム」とは

気象庁の季節の区分では、3月、4月、5月は春です。
メイストームは、春の嵐の一種と思うかもしれませんが、
ちょっと別物として分けておいたほうが良いのかなと思います。

九州大学「メガストーム情報データベース http://fujin.geo.kyushu-u.ac.jp

いわゆる「爆弾低気圧」は、冬から春にかけて多くなります。
爆弾低気圧とは、急速に発達する低気圧のことです。
ただ、5月になると、爆弾低気圧の発生は少なくなるのです。
5月の発生が少ないにもかかわらず、発生してしまった爆弾低気圧により、大きな被害が出てしまいました。これこそが「メイストーム」なのです。

なので、気象解説の際に、
「春は低気圧が発達しやすく、強風の季節です。
5月のメイストームにも注意しましょう」では、
正確な解説とは言えないのではないでしょうか。

「5月になると、急速に発達する低気圧は少なくなってきますが、
時には発達することがあり、メイストームと言われるような
嵐になることがありますので注意しましょう」



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