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色々なジャンルのオタクのうち、なぜ #撮り鉄 はとくにトラブルを起こしがちなのか



はじめに

あえてキャッチーなタイトルを付けたのですが、たびたび極端にマナーが悪い害悪鉄道オタクが話題・ニュースになりますね。とくに「撮り鉄」と呼ばれる鉄道の撮影が趣味の人が話題になります。
ここ最近もまた、鉄道会社が設置した子供向けの注意書きと、それに対して「鉄道オタクを侮辱している」と過剰に反応する「図星」な「おおきなおともだち」がニュースになりました。

それどころかマナーの良し悪しといった範疇を超えて、不法侵入や器物損壊、運行妨害など犯罪行為の発生も報道されています。

自分自身、あえて普通列車でたびたび千葉から長野まで旅行に行ったり、A列車で行こうシリーズが大好きで、それに飽き足らず自分で路線図を考える程度には鉄道が好きなので、鉄道ファン全体のイメージが悪化するのはとても悲しいことです。今回は「なぜ鉄道オタク、とくに撮り鉄がトラブルを起こしがちなのか」について考えてみます。

原因①:発達障害の方々に好かれやすい

同じような形の車体が何個も連結し、規則正しい時刻で運行され、決まった路線の上を移動する鉄道という乗り物が、発達障害を持っている人に好まれるという説は耳にしたことがある人も多いでしょう。


また、規則性を崩されると急に攻撃的になる、社会ルールよりも規則性の維持を優先する、なども発達障害の特徴といえるかもしれません。

​たしかに、シャッターチャンスの邪魔になる通行車両や住民に罵声を浴びせる撮り鉄を見ると、その説もうなずけるような気がします。
1つ目の動画の音声をよく聞くと「止めちゃえ止めちゃえ」という声も入っていますから、なんの権限も許可もないまま、一般車両の通行を停止させようとしていることもわかります。
通常であれば上記の行動の前に「逆に通行車両や地元住民からすると邪魔なのは自分たちなのではないか?」「大声を出したり、車両を止めることで住民に迷惑がかかるかも」という思考が行動の前にワンステップ入るはずです。
自分は心理学者ではないのですが、鉄道という乗り物・システムがもつ規則性が発達障害を持つ人々の興味を惹きやすく、そして発達障害を持つ人々の性質がトラブルに繋がっているのではないか?という仮説には一種の説得力があるように思います。
しかしながら、発達障害を持つ人の割合は想像以上に多く、児童のうち1割が該当するともいわれています。自分の知人や友人にもその障害を持つ人がいますが、当然のことながら、彼らが全員害悪撮り鉄になるわけではありません。他にもいくつかの原因が考えられるはずです。

原因②:手に入らないものを追いかける呪い

撮り鉄の人々の行動…すなわちある目的に対する執着心の強さにより、それが社会規範よりも優先されてしまうこと。これが他のカテゴリーの趣味でも散見されることがあります。

推しへの愛の強さ故に、公共の場で異常な行動に走ってしまうのはアイドルやアニメオタクでも見られる行動だと思います。

また自動車界隈で言うと、定期的に「自動車メーカーを批判しモノ物申す」自称評論家のようなアカウントが現れるのですが、まだ免許を取る前の子どもたちだったりすることがままあります。
評論家ごっこだけならばいいのですが、実際に車を持っている人にダメ出し(僕のやってるゲームみたいに800馬力までパワーを上げないとつまらないですよ、など)をしてしまいトラブルになることがあったりします。悲しいですね。
とはいえ、これらの「手に入らないものに執着する人たち」も、たとえば二次元キャラを愛する人も、そのキャラを演じるコスプレイヤーと結ばれるかもしれないし、免許のない過激なクルマ好きの子どもたちも、免許をとって自分の車を持つと落ち着いたりするものです。


ところが鉄道は「どうやっても絶対に手に入らない存在」という点で極めて特殊かつ残酷な存在です。
もちろん例えば中古の車体を購入して自宅の庭に設置することはできるわけですが、実際に運転させるには路線を敷く必要があります。

実際に所有する敷地に鉄道を敷いて「乗れる鉄道模型」を所有している方もいますが、誰にでもできる内容ではありません。
一方でF1マシンや、飛行機やヘリコプター、船や潜水艦など。どれもがんばれば一般人でも所有できるし、実際に操縦することも可能です。

ところが、あくまでも鉄道は車体だけではなく、路線や駅、さらには運行のダイヤグラムや利用者も含めた社会システム・公共交通機関をひっくるめての存在です。
前述の通り、とくに本記事で取り扱う撮り鉄にとっては類似した形状の複数の鉄道車両・系統が、規則正しく運行されることが鉄道の魅力であり、中古の車体自体を所有しても、乗れる鉄道模型を作ってもさして意味はないわけです。

どんなに頑張っても「所有」することができない存在であることが、どうやっても満たされず暴徒化するファンを引き寄せる理由の一つかもしれません。

原因③:カメラという麻薬の依存性

仮説②にもつながるのですが「手に入らないもの」への欲求をどう処理するかについて。
例えば免許を取る前のクルマ好きの子であれば、模型を作ったり車のゲームをプレイするなど。アニメキャラが好きであれば、フィギュアを買って部屋に飾る、イラストなどの二次創作をする、コスプレをして推しになりきるなど。実物が手に入らなくても欲求を別の形で処理する方法はいくつもありそうです。

その「実物が手に入らなくても欲求を別の形で処理する方法」のうちの一つに「写真を撮る」という、比較的メジャーな方法があります。
ただしこの「写真を撮る」という行為・趣味は一種の「麻薬」のような依存性があるのかもしれません。撮影時には一瞬所有欲を満たせても、結局は実際にその対象自体は手に入らず(もしかすると逆に遠のいていく)また写真を撮り続けることでかりそめの所有欲を満たし続けるしかない…という状況が起きやすいのでは?と自分は思います。
糖分の多い清涼飲料水を飲んでも飲んでも逆に喉が渇く「ペットボトル症候群」のような、もしくは地獄でいう「餓鬼道」のような状況です。

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とくに「カメコ」と呼ばれる、「女性」というものを手に入れられない男性がカメラを手にすることで起きる一種の異様な状況は「撮り鉄」にも通じるものがあるかもしれません。例えば「ローアングラー」と呼ばれる、極端に低いアングルで女性を撮影する行為などが問題になったりしています。

ローアングラーに限らず、カメコの男性と彼らが求める「コスプレイヤー」の女性を描いた「野良カメコのピラミッド」は、カメラを持つ男性全員にとって道徳の教科書として一読の価値がある作品です。
仮説②で説明したように、鉄道は個人所有が困難な存在です。そのため、所有欲を満たすための手段として「カメラでの撮影」が選ばれ、そしてその「麻薬的な依存性」が、撮り鉄の起こすトラブルの誘因につながっているのかもしれません。

原因④:鉄道の持つ公共性

鉄道の特徴として「規則性があるため、発達障害を持つ方を引き寄せる」「所有することができないため、ファンはカメラでの撮影という一種の麻薬に依存しがち」という仮説をこれまでに上げてきました。
しかしながらそれだけでは撮り鉄が多くのトラブルを起こすことの説明になるでしょうか?もう一点、忘れてはならない鉄道の特徴が、その公共性です。

「公共交通機関」という言葉があるように、鉄道は社会インフラであり、公共システム・公共財です。鉄道事業法軌道法などの法が定まり、鉄道警察が置かれ、かつて一部私鉄を除き、日本においては日本国有鉄道法によって運営されていた国有の存在でした。
しかしながら、電気や水道などいくつかある社会インフラの中でも、とりわけ「熱心なファン」を誘引してしまったのが「鉄道」という存在でした。

執着するものを撮影するためならば、不法侵入や運行の妨害をも辞さない「熱心なファン」は、鉄道ファンでは見られるものの、例えば同じ社会インフラでも、下水道ファン(が存在するかは不明ですが)が下水道に不法侵入し下水の流れをせき止めてまで撮影を行うというニュースは聞いたことがありません。​​

※映画「人狼 JIN-ROH」の冒頭、下水道のシーンを見るとちょっと撮影しにいってみたいかも、と思っちゃいますね。

「公共性」の観点でいえば、前述のコスプレイヤーとそのカメコを取り巻く状況は(主催者や参加者の並々ならぬ努力や心がけもあって)公共の場所から明確に切り離された場所で行われるため、一般人への影響は極力少なくなるように配慮されているため、大きな社会問題として取り上げられることは稀です。
一方で鉄道は、基本的にはファン向けのエンターテイメントではなく社会インフラであるため、社会の一部として根付いているものです。
鉄道の運用会社も利用者も、あくまで鉄道を社会インフラとして捉えているのに対して、一部ファンが社会規範や法律を犯すこともためらわないほど過激になっているため、多くのトラブルが起きていると自分は考えています。

まとめ

「なぜ鉄道オタク、とくに撮り鉄がトラブルを起こしがちなのか」について考えてみたところ

①:鉄道が発達障害を持つ人を誘引しがちな規則性を持っているため
②:鉄道があらゆる趣味のなかでもとりわけ「所有が難しい」存在であるため
③:所有が難しいため「カメラでの撮影」という一種の依存症に陥りがちであるため
④:鉄道自体が極めて高い公共性を持つ社会インフラであるため

この4つが大きな理由として挙げられるのでは、と自分なりに考えてみました。

この状況を改善するためにできることは、たんに撮り鉄を徹底的に排除することではなく「彼らの一部がなぜトラブルを起こすのか」原因をきちんと検討し、撮り鉄も含めた鉄道ファンと、鉄道会社や利用者、そして地域社会、ステークホルダー全体が最大限幸福になる方法を見つけていくことだと思います。

そうは言っても、極めて迷惑なトラブルを起こす害悪な撮り鉄(とくに法律を犯している犯罪者)の発生を抑制し、撮り鉄界隈地震の自浄がまっさきに着手できることだと思うのですが、果たしてそれは可能なのでしょうか…?

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