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2021年12月の記事一覧
書評_パリでもっとも有名な日本人が送る__レ_ロマネスク_TOBIのひどい目_
とにかく唖然とする。とにかく笑う。そしてなぜか元気になる。人の不幸は蜜の味と言うが、そういうわけではない。あまりにも突拍子もないことが人生に起こり、それに向き合う姿が滑稽であり微笑ましいのだ。家から盗聴器が出てきたエピソードなんて気になりません?(笑) レ・ロマネスクはボーカルのTOBI氏とアシスタントのMIYA氏からなるポップデュオで、かつフランスで有名な日本人である。嘘ではない。ズンドコ節に合わせてパリの街がいかに汚いかをフランス語で歌い、ブーイング後、拍手喝采をあびたフランス帰りの小粋な二人組である。本著はそんなボーカルのTOBI氏が自身に起こった数々のひどい目について書いた自伝である。(そう、つまりすべて事実!) そもそもTOBI氏がフランスに渡ったのは日本で就職する会社がどんどんと倒産したためである。人生を変えようと思って渡ったのがフランスであった。フランスに渡っても銀行強盗に拳銃向けられたり、その強盗に数日後地下鉄でばったり会ったり、気が付いたら大西洋を漂流したり、などなど話題に事欠かない。 論者の最も好きなエピソードは家から盗聴器が出てきた話である。そもそもこのパリのアパルトマンは亡命ロシア人から借りたという時点でおかしい。ここがTOBI氏のおもしろいところで、彼はいたって真剣で真面目に考えて選択しているのだ。お金がないからたまたまいただいたありがたい話を受けた。その後007のようなドラマティックな展開に巻き込まれるのはTOBI氏の引き寄せ力ゆえかもしれないが。 忘れないように伝えるが、レ・ロマネスクはポップデュオである。つまり歌手である。ぜひ彼らの歌を聴きながら本著を読んでいただきたい。読み終えた後に人生ってなんてばら色ですばらしいのだと自然に思えるようになる。ラ・ヴィ・アン・ローズ! レ・ロマネスク TOBIのひどい目。 作者:TOBI,奥野武範 青幻舎
書評_スペースブローカーはいらないよ__広告ビジネス次の10年
本書は2014年に初版が発行されている。その後3年の間の出来事は加味されたものではないが、それでも主張は的を射ている。広告マンの8割はいらないという主張には同感だ。しいていえば8割というのはいささかの配慮が感じられる。 広告マンとは営業職だけではなく、広告を扱う会社に属する人材全員だ。スペースブローカー思考を脱却できない広告マンにはっきり言って未来はまず無い。現状維持はつまりは相対的な価値を下げることを意味する。大きな変化の一つはメディア事情だろう。 広告代理店の序列を決定づけていたものの一つがマスメディアの広告枠の保有量だ。しかし現在はどうだろうか。“テレビや新聞に影響力がある”という主張に、違和感を覚える方は少なくないはずだ。もちろんその価値がなくなったわけではないが、相対的には低くなっているのだ。理由はもちろんインターネット、さらにはスマホの普及が大きい。 ニュースサイトやSNS、動画サイトなど、世界は非同期で情報収集ができる環境に変わった。個人は、好きな時間に好きな場所で好きな情報を好きな人から得ることができるようになったのだ。見たくない情報を拒むことさえできる。一方で、決まった時間にその場にいる必要のあるテレビや満員電車では邪魔にしかならない新聞など、情報を得るための時間的なコストや精神的コストの高いメディアは敬遠されていく。 今でもムーブメントを起こすにはマスメディアは有効だろう。しかし有効と思われる目的範囲は今後さらに限定されていく。マスメディアが役割を奪われるというよりも、過剰に担っていた役割を適したメディアに返還するという表現が正しいかもしれない。これら広告業界におきたことは高生産性シフトだ。最良のターゲットに最適なメディアで最適な伝え方を、それらは最小限のコストにて要求される。その時に広告マンはメディアの枠売りではいけない。市場は売り手の論理から買い手の論理が幅を利かせている。買い手市場はどのような論理で動いているのか、興味があればぜひ本書を手に取ってほしい。 広告ビジネス次の10年 作者: 横山隆治,榮枝洋文 出版社/メーカー: 翔泳社 発売日: 2014/05/15 メディア: 単行本(ソフトカバー)