優駿牝馬(オークス)の気になる馬

【気になる馬の前に……】

 非桜花賞組にやたらハイペースなレースがありますね。
 今回出走してくるパレハが逃げた忘れな草賞がかなりのハイペース、前半12.5-10.5-11.5-11.7-11.9の58.1、パレハ、プシプシーナ、オオナミコナミの3頭が競り合う形で逃げてしまった結果のハイペースなので単騎での逃げになれば流石に早くなることは無いかと思っていたが早い逃げを打った馬がもう一頭。
 前走未勝利勝ちから出走してくるヴィントシュティレが東京2000mを12.7-10.9-11.3-11.5-12.0の58.4で流してキレの無さを補う形で消耗戦に持ち込み勝ち上がり。
 前走それぞれにハイペースで逃げた馬に加えて、桜花賞を逃げたショウナンマヌエラがこれに加わっての逃げ3頭。流石に58秒台のハイペース逃げになるとは思わないが、3頭とも直線での瞬発力に欠けることを考えるとスローに落としてしまっては勝ち目がかなり薄いのである程度流れるのを承知でポジションを主張してくる可能性もあり、ハイペースになると……展開がややこしくなりそうですね。

・チェルヴィニア

 前走の桜花賞では13着と大きく負けてしまったが、流石にアルテミスSからの直行ローテは無理がある。
 イクイノックスで東スポ杯から皐月賞の直行ローテで好走したノーザン×木村厩舎ならばなんとかなるかもと期待はしたが、流石に厳しかった上に、直前でルメール騎手落馬負傷の乗り替わり、不利な大外枠からの競馬とレース云々の前に前走度外視としたい要素がモリモリ。
 更に肝心のレース内容も厳しく、スタートは出たが馬郡密集で内に入れるタイミングが無く、チェルヴィニア自体の能力、スピードの高さも相まって馬のリズムを崩さないようにしている内にじわじわとポジションが上がってしまい道中で足を溜められないだらっとした競馬に。
 いまいち足が溜まっていない状態で迎えた直線では内から外から内から外から何回も不利を受け全く自分の走りをすることが出来ず、13着大敗は実力以上の負けと言っていい。
 2歳時点のアルテミスSでたたき出したパフォーマンスは強烈の一言。馬郡の中であればそこまで早くない流れでもじっくりと構えることが出来ており、前半48.0-後半45.6、上り3F11.4-11.2-11.0のレースラップを上がり最速33.3で突き抜けは2歳の10月に出していい時計ではない。
 血統的にもハービンジャー×キングカメハメハは今年の大阪杯のように、根幹距離だけど、非根幹距離のような持続力が求められる舞台設定に適性が強く、今回仮に逃げがハイペースで飛ばしての大逃げ展開になり、後半長くスパートを求められ、全馬未知の2400mという距離で脱落戦になればこの馬が突き抜けてもおかしくない。
 キャリアの中で高いパフォーマンスを発揮したのが持続力を求められる東京、新潟外回りというのもいかにもオークス向き、距離が伸びて良さが出そうであり、ここで巻き返しに期待できる。
 ルメール騎手に手が戻るのも良く、前走の着順で人気を落とすならば、現時点では前走桜花賞組から最も買いたいのはチェルヴィニア。

・コガネノソラ

 前走のスイートピーSの走破時計1.45.6は歴代ダントツの走破時計。
 スイートピーSどころか、同条件で牡馬の一線級が集う共同通信杯の時計を遡ってもここまで早い走破時計は無く、はっきり言って1.45.6という時計は異常な早さ。
 レースラップとしても12.2-10.5-11.3-11.6-11.9-12.4-12.2-11.9-11.6で前半1000m57.5の異常なハイペース。離しての逃げなので馬郡はそこまでハイペースで流れたわけでは無いとしても、大逃げ馬がいる時点で直線を向く前に逃げ馬を射程圏に入れるためにロンスパを強要されるので、ミドルペースからの強烈なロンスパ展開で上がり34.1の最速で勝ち切ったのは素直に評価できる内容。また、レース映像を確認しても、直線で馬郡の外に持ち出して追い出したときの手ごたえはかなり力強く、持続力、東京の長い直線でも最後までストライドを大きく伸ばせる体幹と心肺機能の強さは桜花賞組と比較しても見劣りしない。
 未勝利戦を逃げて勝ち、1勝クラスを先行して勝ち、スイートピーSを中団後方から追い込んで勝ちと脚質に幅があるのも魅力。
 また、もしかしたらハイペースの大逃げ展開になるかもしれない今回、前走で既にハイペースで逃げる馬に付き合わず、馬郡でマイペースに追走し足を溜めることができたという実績があるのは他の馬に無いストロングポイント。
 非桜花賞組からオークスで好走するために求められる”マイルより長い距離で上位の上りを使った実績”を持っているのも大きい。
 血統的にもフローラSを上がり最速で追い込んだ次走、オークスを制したユーバーレーベンと同じゴールドシップ×ロージズインメイ、人気薄でも侮れない一頭。

・ミアネーロ

 前走はフラワーカップを勝利している重賞勝ち馬でありながら、あまり人気しなさそう。過去を遡ってもフラワーカップからの臨戦で好走しているのがスタニングローズくらいしかおらず、オークスに向けて主流の前哨戦じゃないというのも大きいかと思うが、中山で求められる適性と東京で求められる適性は大きく異なることを考えると仕方ない。
 そもそもフラワーカップ自体が中山らしく、前目で上手く立ち回る馬が好走するレースであり、過去の結果を見ても上位の上りを使った馬が勝ち切っているパターンがほとんどない。
 そんなレースをミアネーロは内の中団で上手く立ち回ったとはいえ、中山の短い直線で馬郡を捌きながら足を伸ばして上がり3位の差し切りであり、立ち回りだけでなく、末脚を活かしての勝利なのは評価できる。
 ……というかミアネーロ、デビューから3戦中山だけ使ってますが、どう見ても東京向きですね。体系はすらっと足長でそれに見合う大きなストライドの走り。加速の仕方も小回りのコーナーで加速するよりは、そのストライドを活かして直線での加速の方が得意。前走の中山のような小回りかつタフな馬場状況という舞台設定はかなり適性から逆行していたと思うので、それを勝利できたというのはメンバーの中でよほど能力が抜けていたという理解で良いと思う(馬体や追切の走りから適性乏しいと見たので前走は自分の予想では軽視したわけですし……)。今回東京に舞台が変わるのは初めてとはいえ大きくプラスと考えてよさそう。
 また、前走のフラワーカップ自体時計は地味だが内容の濃いレース。レースラップが12.5-11.5-12.1-12.1-11.8-12.0-12.0-12.0-12.0と測ったようなワンペース。最初から最後まで延々と12秒フラットが続くような展開で、明確に息を入れるようなタイミングは無く、馬場状況を考えるとかなりスタミナ、パワー、持続力が求められた。それをコーナーで逆手前になるようなタイミングもありながら難なく差し切ったのは強いの一言。
 フラワーカップから次走でフローラSに出走したエルフストラックやカニキュルがそれぞれに見せ場のある競馬をするなど、レースの質としても悪くなかったようで、前走の1着はオークスに向けても素直に評価していいんじゃないかと思う。
 ここ2年でドゥラメンテ×非サンデーの組み合わせの馬が3頭も馬券内に来ているというのも買いたい要素。
 更に、これはオカルトだが、鞍上が津村騎手というのも面白い。というのも津村騎手の昨年からの重賞好走実績を見ると
・フラワーC→スプリングC→マーチS
・かしわ記念→新潟大賞典
・中山金杯→フェアリーS
 など、一度重賞で好走すると、次の週の重賞でもその勢いにのって連続で好走することが珍しくない。今週ヴィクトリアマイルで悲願のG1制覇を成し遂げた次週、これまでに無いレベルの勢いに乗った津村騎手がG1でも連続好走を見せてくれる可能性もあり得そう。
 ミアネーロ、魅力的です。

(その他気になる馬)

 現状特に気になっているのはチェルヴィニア、コガネノソラ、ミアネーロの3頭だが、他の馬についても少々

・エセルフリーダ
 前走ミモザ賞で1勝クラス勝ちだが、この馬もミアネーロ同様どう見ても中山より東京向き。
 末脚の伸ばし方、走りは直線でよりよさが出る印象で、タフな中山2000を上がり最速で勝ち切ってからのオークス参戦は中々面白そう。
 血統的にもキタサンブラック×ハービンジャーで長く足を使わされるタフな展開への適性には期待できそう。
 近2走で大きく馬体重が減っているのは気になるものの、調教の動きや枠しだいでは穴で抑えて見ても面白そう。

・クイーンズウォーク
 前走は適性的に短く思えるマイル戦、内が荒れ気味の馬場で、走り的にも外で揉まれない方が力を出せそうなこの馬が内枠を引かされてしまったというのも敗因としては大きいと思うが、8着は少し負けすぎ。
 そして何よりも気になるのは調教過程。一週前CW→日曜坂路加速→最終CWというのが王道パターン、最終が坂路のパターンもあるが、基本的にはしっかり日曜に坂路で早い時計を入れてくる中内田厩舎にも関わらず、今回12日の坂路時計が全体68.5と遅い。平場も含めてこれはめったに見ないパターンなので、なにか順調さを欠いているのではないかと気になる。G1に向けてあえて坂路を少なくする理由が分からない。

・タガノエルピーダ
 チューリップ賞は不利な枠だったことも響いた上に展開的にも恵まれなかったということもあり4着で桜花賞への出走権を逃したが評価を落とす内容ではない。
 次走の忘れな草賞ではタフなハイペースからのスパート展開を実力通り制してオークス挑戦。
 前走しかり朝日杯FSしかりタフな展開でしっかり結果を出せているのは今回のオークスでも活きてきそうであり、1000m58.1とマイル並みの流れを2000mで踏んでからの臨戦過程は理想的。ある程度人気にはなると思うが侮れない。

 桜花賞好走組のスウィープフィート、ステレンボッシュ、ライトバックも距離不安無さそう、もちろんここでも軽視はできない。
 特に前走決してスムーズだったわけでもないのにしっかり勝ち切ったステレンボッシュは軽視していい馬ではない。

 多彩な路線からタレントが揃った今回のオークス。かなり面白くなりそうですね。

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