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凧と親切

体調不良でどこにも連れていってあげられなかったので
冬休み最後の日に公園へ。
凧揚げに挑戦。

いい感じの風が吹き
凧は順調に空へ。
息子も軽快に紐を引っ張り走る。

凧は導かれるように
1本の木へ…

まずい!このままでは!
息子を静止するも時すでに遅し…
凧は木の枝へ絡まる。
厄介なことにその場所は
木のてっぺん。

さらに息子はわたしの声に驚き紐を持つ手を離してしまう。

その時、風が…

凧と紐はもはや
わたしのコントロール下ではなくなった。

中年の重たいからだは
ジャンプをしても紐には届かない。
「お母さん、長い枝を探さなきゃ。」
腕の長さも無い小枝をつかみ
見様見真似で何とかしようと
ジャンプする息子に促されるように
長い棒のような何かを探し始める。

奇跡のように1本だけ柵から飛び出てる太い蔓を見つける。
引っ張ってみるとなんとするりと抜けた。
その蔓はさらに先が枝分かれしていている。
これはかなり使える!
いそいそと木に戻り
なんとか紐の持ち手に引っかけられそうな気配。
しかし、わたしは背が低い。
引っ張れそうで引っ張れない微妙な高さ。
おそらく相当、不恰好と言うかおかしな様子だったに違いない。
木に向かって蔓を振り回すおばさん。

「じいちゃん、見て!助けてあげようよ。」
遠くから少年の声が…
おそらくご近所であろうおじいさんとおばあさん、少年が颯爽と登場。
わたしの持つ蔓を受けとると見事な連携プレイで紐を回収。
しかし、紐は枝に絡まってしまい、
凧も動かない。
糸を切って、凧が飛ぶのを待つしかないか的な雰囲気になる。

高価な凧ではないので、もうしばらくやってみてダメなら諦めて帰ることに。

お礼を言ってお別れをする。
凧は回収不能だと息子の説得を試みるものの
うまくいかず
紐を引っ張ったりして凧の救出を目指す。
しかしどうにもうまくいかない。

そこへ別の家族が遊びに来る。
サッカーボールやら野球のボールやらいろいろ持ってきて遊んでいる。
そんな家族団らんのそばで木を揺らすわたし。
「あの、ボールを当てて見ましょうか?」
凧にボールを当てて枝からとれないか試してみることに。

空高く舞ったボールは何と枝に挟まり落ちてこない…
なんてこった!!
わたしは必死に紐を揺らし枝を揺らした。
紐が切れた…。
そして奇跡的にボールは落ちた。
良かった。
凧はそのまま枝に絡まっている。
できるならそのまま風で飛んでいってもらいたかった…
まだ格闘は続く。

正直なところもう帰りたかった。
けれど凧を回収せずに帰ったあとに凧が飛んでいって
誰かに当たったら?
車なんかを傷つけたらと思うと
何とかしないといけないとその場から離れることはできなかった。

凧の紐も何とか手が届くところで切れたので結び直した。
そしてまた紐で枝を揺らす。

息子はすっかり凧との格闘に興味をなくし、サッカーボールや野球に興味津々となり
ボールで遊ぶ一家に乱入。
いよいよ帰るに帰れなくなり、
遊んでもらっている時間、
ひたすら枝を揺らす。

凧が絡まってから1時間ぐらい過ぎた頃にまた先程の少年が登場。
「10分待ってて!今、じいちゃんがはしご持ってくるから!」
ななんと!はしご!
でも、はしごでも届かないですよ!
少年は余裕の笑みで「大丈夫、待ってて!」
もう、待つしかなくなった。

しばらくしておじいさん軽トラで登場!
はしごをさっと担ぎ木のそばへ。
公園を管理している方ともお知り合いで
話をつけたらしく、
もう一人おじさん登場。
わたしはなんだか訳もわからずただ頭を下げまくる。
おじいさん、はしごに足をかけるとヒョイヒョイトそのまま木を登っていく。

このおじいさんはスパイダーマンなのか…

凧は無事に回収された。
そしておじいさんも無事に木から降りた。

何事もなかったように
軽トラで去っていった。

二時間ほどの出来事だったろうか。

見ず知らずの方々に
こんなに親切にされた。
めちゃくちゃ頭を下げた。
もう、ありがとうとすみませんしか
言葉が出なかった。

縁もゆかりもない土地へ来て
友人、知人を作ることもせず
ひっそりと暮らしているわたしに、
凧を木に絡ませるという失態をしたわたしに
手をさしのべてくださった方々。
まさに人情。

こんな風にわたしも
手を差しのべられる人でありたいと思う。

今年は感謝を忘れずに
何度もありがとうと言える1年にしよう。

本当に本当にありがとうございました。

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