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私が人と羊を繋げる理由~飼育員が語る、新しい絆の物語~

こんにちは、飼育員の丸岡です。今日は、私が人と羊をつなぐ取り組みをしている理由について、お話ししたいと思います。

飼育員としての悩み

私は10年以上、飼育員として羊と関わってきました。動物園で "ふれあい" イベントを行い、お客さんに羊の魅力を伝えようと努めてきました。餌やりや体験毛刈りなど、お客さんが羊に触れる機会を作ることに力を入れてきたのです。しかし、その活動に手ごたえを感じられないでいました。

確かにお客さんは喜んでくれます。羊の毛を刈って「これ、服になるんだよ」と子供たちに話すと、みんな知っていることのように頷きます。でも、その先には何もない。毛刈りが終われば、私の説明も終わり。刈った羊毛は、欲しがる人がいなければゴミとして処分されるだけ。羊毛が服になる過程を実際に見せることはできず、羊について語れることも限られています。

そんな中で、ふれあいイベントを通して本当に羊のことが伝わっているのか?お客さんの心に何か変化は生まれているのか?私は疑問を感じずにはいられませんでした。

模索の日々

10年、15年と活動を続ける中で、私なりに工夫もしてみました。例えば、羊毛でフェルトボール作りのワークショップを開催したりしたのです。でも、結局はその場限りの体験に過ぎず、お客さんの日常に羊が入り込むことはありませんでした。作ったフェルトボールも、やがて押し入れの肥やしになっているだけ。そこから羊への興味が広がっていく様子はありません。

私は、飼育員としてもっとできることがあるはずだと思っていました。ただ羊と触れ合うだけでは物足りない。もっと羊のことを知ってもらい、羊との関わりを持ってもらうために、何ができるだろう?私の頭の中には、そんな問いが常に浮かんでいたのです。

"バディシステム"の始まり

転機が訪れたのは、5年前のことでした。羊毛を実際に使っている作家さんたちの話を聞く機会があったのです。作家さんたちの多くが口にしていたのは、「自分で羊を育てて、毛を刈って、糸にして、作品を作る」という夢でした。その話を聞いた私は、閃きました。作家さんと羊をつなげることで、羊毛がどう生かされるのかを、お客さんにも見てもらえるかもしれない。

そう考えた私は、作家さんたちに提案しました。うちの羊1頭に、作家さん1人が "バディ"として付く。毎年その羊の毛を作家さんに届ける。作家さんはその毛で作品を作り、羊のことを発信する。羊と作家さんの "バディ"が生まれれば、きっとお客さんにも伝わるものがあるはず。そんな思いから、新しい取り組みがスタートしたのです。

化学変化の予感

バディシステムを始めてみると、驚くような変化が起こりました。作家さんたちは自分の "バディ"である羊に、すごく愛着を持つようになったのです。毎年届く羊毛の質や量が、作家さんの作品作りを左右します。だから作家さんは、羊の健康や飼育環境により関心を寄せるようになりました。

私自身も、羊の世話により一層力を入れるようになりました。作家さんに喜んでもらえる良質な羊毛を届けるには、羊をしっかりと育てる必要がある。餌の与え方、健康管理、毛刈りの工夫など、細部まで神経を尖らせました。今では作家さんの顔が浮かぶと、自然と羊への接し方が変わるようになっています。

人と人、人と動物の新しい絆

バディの取り組みは、人と人のつながりも生みました。担当する羊毛が違えば、作家さんが作れるものも変わります。そこで作家さんたち同士が "バディ"の羊毛を融通し合ったり、飼育の工夫を共有したりする姿が見られるようになりました。作家さんたちのコミュニティが生まれたのです。私はこうした変化を間近で見ることができ、飼育員冥利に尽きる思いでした。

そしてお客さんにも、変化が表れ始めました。作家さんたちが羊に興味を持ち、毛刈りに立ち会ったり、飼育の様子を発信したりする姿を見たお客さんから、「私も糸紡ぎを習ってみたい」という声が聞かれるようになったのです。単に羊毛に触れるだけでなく、自分の手で糸を紡ぎ、モノ作りをする。そんな "体験"を通して、羊への理解を深めたいと願う人が現れたのです。

飼育員という仕事の可能性

こうした変化を目の当たりにして、私は飼育員という仕事の可能性を強く感じるようになりました。動物を人に "見せる"だけでなく、人と動物をつなぐ "架け橋"となること。1つの出会いが、動物への愛情を育み、新しい価値を生み出していく。私はそんな飼育員でありたいと、心に誓ったのです。

動物を通して人の心を動かす喜びを、私は今、かみしめています。バディの取り組みで生まれた化学反応を、私は忘れません。この化学反応を、他の飼育員さんにも味わってほしい。悩める飼育員さんの背中を押したい。そんな思いから、私はこの取り組みを広めていこうと決意しました。

志を共にする仲間へ

バディシステムは、羊だけでなく他の動物にも応用できるはずです。例えばウサギなら、ウールの代わりに "フン"で循環を作れるかもしれません。動物の個性を生かした "バディ"を生み出すアイデアを、私は飼育員の皆さんと共有したいと思っています。

今この記事を読んでいるあなたは、飼育員として何か物足りなさを感じていませんか?「ただ餌をやって掃除をしているだけでいいのかな」「動物のことをもっと知ってもらうために、何かできることはないかな」――。そんなふうに思ったことはありませんか?

もしそうなら、ぜひ私に声をかけてください。バディの取り組みについて、喜んでお話しします。うまくいったこと、失敗したこと、共有したい工夫やアイデア、すべてをオープンにします。私一人では、きっと大きな変化は起こせません。志を同じくする飼育員の皆さんと手を携えてこそ、人と動物の新しい関係性が生まれると信じているのです。

飼育員としての決意

動物の魅力を、もっと多くの人に伝えていく。そのために、飼育員として何ができるのか。私はこれからも、仲間の皆さんと共に、挑戦と探求を続けていきます。人と動物、人と人、様々なものをつないでいくこと。それが、私の使命であり、飼育員という仕事の醍醐味だと、今は思っています。

さあ、次はあなたの番です。あなたなりの "バディ"を、あなたなりの方法で生み出してみませんか?私はそれを心から応援しています。

編集:Claude 3
音声原稿:以下リンク


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