見出し画像

【飼育初心者向け】羊の餌について知って欲しい3つのポイント

羊を健康に育てるためには、適切な餌の選択と与え方が非常に重要です。しかし、羊の消化システムは私たち人間とは大きく異なるため、飼育初心者の方にとっては戸惑うこともあるでしょう。

そこで今回は、羊の餌について知っておきたい3つのポイントを解説します。

1. 餌の種類よりも繊維質が大事


羊の1日の餌の量は、体重の3%程度が目安となります。例えば、体重50kgの羊であれば、1.5kg程度の乾燥した草を与えます。生草の場合は、体重の8%程度、約4kgが適量です。

かなりの量を1日に摂る必要があるため、飼育員は羊たちに沢山食べてもらえるような工夫が求められます。

羊は柔らかい草を好んで食べ、太くて固い茎のような部分を残す習性があります。
なので飼育員にとって、太くて固い草は「質の悪い餌」として嫌われがちなのですが、むしろその部分を積極的に食べさせることが何よりも大切だったりします。

羊に与える餌は、主に乾燥させた草が一般的です。チモシー、スーダン、アルファルファ、オーツなど、様々な種類の草が利用されています。飼育員は、土地の状況や入手のしやすさを考慮して、適切な草を選ぶ必要があります。

ここで多くの飼育員は、良く食べる餌の種類にばかりに目が行きがちですが、今回は"繊維質"の重要性について語ります。

2. 羊にとって反芻とは


羊は草食動物であり、牛と同じく4つの胃袋を持っています。この特殊な消化システムを理解することが、適切な餌の選択と与え方の第一歩となります。

羊の消化において特に重要なのが、反芻です。反芻とは、羊がリラックスして休んでいる時に、口を動かして草を噛み直す行為のことです。まるでガムを噛んでいるように見えますが、この反芻によって羊は食べた草を細かく砕き、消化しやすい状態にしているのです。

反芻のプロセスでは、最初の胃袋である第一胃袋(ルーメン)が重要な役割を果たします。第一胃袋は大容量のタンクのような役割を果たし、食べた草を一時的に貯蔵します。羊は反芻によって、第一胃袋内の草を口に戻しては噛み直し、細かく砕いていきます。

第一胃袋内には、たくさんの微生物が住んでいます。これらの微生物は、草の繊維をバラバラに分解する役割を担っています。羊は反芻することで、草と微生物を混ぜ合わせ、微生物の増殖を促進します。増えた微生物を羊が吸収することで、植物性のタンパク質を動物性のタンパク質に変換し、エネルギー源として体内に取り込んでいるのです。

次に、反芻の仕組みについて簡単に説明します。

反芻が起きるためには、第一胃袋から次の胃袋へ移動する通り道が重要な役割を果たします。繊維の固い部分が通り道を通ろうとすると、通り道がきゅっと閉まり、固い繊維質を口の方に押し返します。羊は再度それを噛み砕いて、細かくなった草を再び胃の中に送り込みます。これが反芻の仕組みであり、羊が意図的に行なっている訳ではなく、反射的に行われることを理解してください。

つまり、反芻を促すためには「太くて固い繊維質」が必要だということです。

3. 反芻を観察する


反芻の重要性を理解し、それを促すためには繊維質の太さが大切だと理解してもらえたら次に移ります。(理解できない方は何度も読み直して反芻してください)

飼育員は、羊一頭一頭に目を配り、その健康状態を注意深く観察することが求められます。特に、複数の羊を群れで飼育している場合、個体ごとの食餌量の把握が難しくなります。そんな中、ちゃんと繊維質を胃の中に送り込めているのかどうかを判断するのは困難です。

そこで、反芻の観察が重要になってきます。

実は反芻する時の咀嚼回数(口をもぐもぐ噛む回数)を数えることで、羊の胃袋の状態をある程度推測することができます。

1度の反芻で80〜100回近く噛む場合は、胃が良質な餌で満たされている状態です。一方、50回以下の場合は、胃の中が満たされていない可能性があります(あくまで私の経験則です)。

飼育員は、この回数を目安に、餌の量や質を調整していくと良いでしょう。

反芻の観察は、羊の健康状態を把握するための重要な手がかりとなります。食欲の低下、反芻の減少、便の状態の変化などは、健康上の問題を示唆する可能性があります。飼育員は、日頃から羊の行動や状態を観察し、変化に気づくことが大切です。

少しでも参考になれば幸いです。



この内容は、以下の放送を文字起こししたものになります。人と羊が繋がることをテーマに、毎日配信中です。よろしければフォローしてくださいね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?