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セ・リーグでDHを導入したら、最も利するチームはどこか?
はじめに
ピッチクロックの導入や大谷ルールなど、新しいルール導入に対して積極的な印象を受けるMLBに対して、NPBは消極的な印象を受ける。そんな中、MLBにおける2023年の大きなルール変更といえば、ナ・リーグのDH導入だ。従来よりNPBでもセ・リーグのDH導入は議論が交わされているが、採用には至っていない。今回はMLBに倣って、NPBのセ・リーグでもDHが導入された場合に最も利するチームを考えてみたい。
(個人的には、プロ野球をエンタメとして捉えるならば、投手ではなくDHが打席に立つほうが見ている側としては楽しめる気がする。)
DHを導入して最も利するチームは中日??
DH導入により最も利するチームの定義
まずDHの導入に伴い最も利するチームを下記のように定義する。
”DH導入により最も得点期待値が高まるチーム”
本来、DH導入による影響は下記のように得点増加だけではない。しかし、今回は簡単のため、得点能力向上という側面に絞って考察したい。(今回未考慮のその他の側面の影響については、今後の宿題としたい。)
DH導入により最も得点期待値が高まるチームの考え方
下記手順でDH導入により最も得点期待値が高まるチームを考える。
①各チームの代表的なスタメン選手を求める。(打順未考慮、ポジション考慮)
<求め方>
2023年シーズンの各チームの各ポジションにおけるスタメン出場選手の割合を算出。各ポジションにおける最もスタメン出場の割合が多かった選手を当該ポジションの代表的な選手とする。
②各チームのDH最有力候補選手を求める。
<求め方>
・①で求めた代表的なスタメン選手以外のベンチ入りメンバーから選定
・RC27(※1)が最も大きい選手。ただし、ある程度の打席数を重ねた選手。今回は50打席以上とした。
・交流戦にてDHで出場した選手の履歴も参考にする。
③②で求めたDH最有力候補選手によりもたらされる得点期待値増加を求める。
<求め方>
DH最有力候補選手のRC27より得点期待値増加を求める。
(※1)RC27(Runs Created per 27 outs)(wikiより)
RC27(Runs Created per 27 outs)はRCを元にある特定の選手1人で構成された打線で試合を行った場合、27アウト(9イニング×3アウト=1試合)で平均何点とれるかを算出した指標。
この数値が大きいほど、その選手の総合的な得点能力が優れているとされる。ただし、欠陥として場合によってはマイナス値になることがある。
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①各チームの代表的なスタメン選手を求める。
2023年シーズンのセ・リーグ各チームのポジション別スタメン出場割合と代表的なスタメンは下記の通り。
・中日ドラゴンズ
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上記スタメン出場割合より、求めた代表的なスタメンは下記の通り。
<代表的なスタメン>
捕手:木下 拓哉
一塁手:ビシエド
二塁手:福永 裕基
三塁手:石川 昂弥
遊撃手:龍空
左翼手:大島 洋平
中堅手:岡林 勇希
右翼手:細川 成也
・阪神タイガース
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上記スタメン出場割合より、求めた代表的なスタメンは下記の通り。
<代表的なスタメン>
捕手:梅野 隆太郎
一塁手:大山 悠輔
二塁手:中野 拓夢
三塁手:佐藤 輝明
遊撃手:木浪 聖也
左翼手:ノイジー
中堅手:近本 光司
右翼手:森下 翔太
・広島カープ
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上記スタメン出場割合より、求めた代表的なスタメンは下記の通り。
<代表的なスタメン>
捕手:坂倉 将吾
一塁手:マクブルーム
二塁手:菊池 涼介
三塁手:デビッドソン
遊撃手:小園 海斗
左翼手:西川 龍馬
中堅手:秋山 翔吾
右翼手:野間 峻祥
・DeNAベイスターズ
上記スタメン出場割合より、求めた代表的なスタメンは下記の通り。
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<代表的なスタメン>
捕手:戸柱 恭孝
一塁手:ソト
二塁手:牧 秀悟
三塁手:宮﨑 敏郎
遊撃手:京田 陽太
左翼手:佐野 恵太
中堅手:桑原 将志
右翼手:関根 大気
・読売ジャイアンツ
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上記スタメン出場割合より、求めた代表的なスタメンは下記の通り。
<代表的なスタメン>
捕手:大城 卓三
一塁手:中田 翔
二塁手:吉川 尚輝
三塁手:岡本 和真
遊撃手:坂本 勇人
左翼手:秋広 優人
中堅手:ブリンソン
右翼手:丸 佳浩
・ヤクルトスワローズ
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上記スタメン出場割合より、求めた代表的なスタメンは下記の通り。
<代表的なスタメン>
捕手:中村 悠平
一塁手:オスナ
二塁手:山田 哲人
三塁手:村上 宗隆
遊撃手:長岡 秀樹
左翼手:青木 宣親
中堅手:塩見 泰隆
右翼手:サンタナ
②各チームのDH最有力候補選手を求める。
<求め方>
・①で求めた代表的なスタメン選手以外のベンチ入りメンバーから選定
・RC27(※1)が最も大きい選手。ただし、ある程度の打席数を重ねた選手の中で。
・交流戦にてDHで出場した選手の履歴も参考にする。
①で求めた各チームのスタメン選手を除いたベンチ入りメンバーとRC27を下記に列挙する。
※打席数50以上のみ抽出
※今シーズンの交流戦時のDH出場回数を★で表す
・中日ドラゴンズ
村松 開人/1.6
高橋 周平/1.92
宇佐見 真吾/7.59
アキーノ/0.82
鵜飼 航丞/0.85/★★★
石橋 康太/2.34
アルモンテ/0.91
・阪神タイガース
坂本 誠志郎/2.01
前川 右京/3.99/★★★★
ミエセス/3.35/★
島田 海吏/1.27
渡邉 諒/1.38/★★
糸原 健斗/3.62/★★
小幡 竜平/4.62
・広島カープ
上本 崇司/3.86
田中 広輔/3.58
堂林 翔太/3.38
松山 竜平/3.63/★★★★
矢野 雅哉/2.7
會澤 翼/2.39
林 晃汰/2.86
韮澤 雄也/0.19
末包 昇大/2.75
・DeNAベイスターズ
大和/2.33
楠本 泰史/3
伊藤 光/1.78
大田 泰示/2.83
山本 祐大/3.12
林 琢真/-0.19
オースティン/5.6/★★★★★★★★★
神里 和毅/1.1
柴田 竜拓/1.62
・読売ジャイアンツ
門脇 誠/2.02
梶谷 隆幸/4.62
オコエ 瑠偉/3.16
中山 礼都/2
ウォーカー/5.19/★★★★★
長野 久義/6.69
・ヤクルトスワローズ
濱田 太貴/3.35
内山 壮真/2.95
並木 秀尊/3.29
武岡 龍世/2.03
山崎 晃大朗/3.9
川端 慎吾/4.97/★★★★★
上記より各チームのDH最有力候補選手と各選手のRC27を下記に列挙する。
・中日ドラゴンズ
宇佐見 真吾/7.59
・阪神タイガース
前川 右京/3.99
・広島カープ
松山 竜平/3.63
・DeNAベイスターズ
オースティン/5.6
・読売ジャイアンツ
ウォーカー/5.19
・ヤクルトスワローズ
川端 慎吾/4.97
まとめると下記の通り。
![](https://assets.st-note.com/img/1693097546543-tEkUkmo5uS.png?width=1200)
③②で求めたDH最有力候補選手によりもたらされる得点期待値増加を求める。
<求め方>
DH最有力候補選手のRC27より得点期待値増加を求める。
DH最有力候補選手によるもたらされる得点期待値増加は下記表2の通り。
![](https://assets.st-note.com/img/1693093693659-XgoOdtboCY.png?width=1200)
ということで最も得点期待値を増加させるDH最有力候補は最もRC27が優れる中日の宇佐見であることが分かった。その得点期待値増加は116.9点であり、8/13時点までの中日のチーム総得点305点を考えると影響力の大きさがうかがえる。上記結果より、今期の成績を前提にするとDH導入により最も利するチームは中日ドラゴンズであると結論づける。
(ただし、各選手の今季の打席数は100打席前後であり、サンプル数が十分とは言えない。あくまで参考程度のデータであることをご留意いただきたい。)
最後に
今回、2023年シーズン8/13までの成績を用いてDH導入により最も利するチームはどこか考察してきた。手法としては各チームのDH最有力候補選手のRC27から得点期待値の増加のみを求めるという非常にシンプルなロジックだ。もちろん実際のDH導入による影響は前述の得点期待値増加だけではなく、下記のようなファクターも考慮にいれるべきだ。
・より守備が優れる選手が守備に付くことによる守備力の向上
・先発投手の打席に生み出されていた得点創出の消滅
(阪神の西純也のような選手による得点創出がなくなってしまう)
・DH専門選手の獲得
(巨人のように資金に余裕のあるチームはDH専門の打撃特化の選手を獲得するだろう)
実際のDH導入には上記のように複数の影響が関わると考えられるが、今回はDH導入による得点創出というある一面のみについて考察した。今回、未考慮の上記ファクターによる影響は今後の課題としたい。
今回の中日ドラゴンズが最も利するという結果は、最近めっきり明るいニュースを聞かない中日ファンにとって僅かながらの希望の光になることを願いたい。
おまけ
今回求めたDH導入による得点期待値増加から各チームの得点、失点、勝数、順位がどのように変化するか求めてみた。前提としてDHによる得点増加分は各チームが平等に失点として負担するとする。勝数は得点、失点よりピタゴラス勝率(※2)を用いて算出した。この計算によると中日の勝数はDH導入後、約10勝増加し順位は6位→4位に上がる。本当にこうなるかはかなり怪しいところではあるが、あくまでエンタメとしてこの結果を楽しんでいただきたい。
![](https://assets.st-note.com/img/1693096474369-vR1SYdAXNN.png?width=1200)
(※2)ピタゴラス勝率(wikiより)
ピタゴラス勝率(ピタゴラスしょうりつ、Pythagorean expectation)は、得点と失点からチームの勝率を予測するセイバーメトリクスの計算式である。チームの実際の勝率とピタゴラス勝率を比較する事で、どのくらい幸運であったかの検証も出来る。この名称はピタゴラスの定理と数式が類似しているところから来ている。PECOTAシステムやWARでもこの式を元に勝率を予測している。
算出方法は(総得点の2乗)÷(総得点の2乗+総失点の2乗)である。
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