[読書メモ]『小飼弾の超訳「お金」理論』(小飼弾)

p17
複式簿記の短期講座を取ってみて、衝撃を受けました。こんな仕組みは、自分でいくら考えても絶対に思い付かない。複式簿記を人類の叡智と言わずして、何を叡智と言うのか。しかも、基本的な考え方はシンプルで、足し算と引き算しか使わない。小学校の高学年なら、十分に理解できるでしょう。

p30
「借金しないことが偉い」と思っている人が多いのですが、借金できるだけの「信用を持っている」ことのほうが偉いのです。

p37
会社勤めをしている人であっても、給料日に実際の給料を受け取るまでそれは「売掛金」である――といった会計的な考え方は、人生において重要な判断を迫られた時、必ず役に立ちます。

p59
1人当たりの教育費について言えば、日本はOECD加盟国の平均を上回っています。ところが、GDPに占める公的支出の割合を見ると、OECDの中でも最低になります。この教育費のギャップを誰が埋めているかといえば、皆さんもお気づきのように、親です。親のお金や教育への熱心さによって、子どもの教育レベルが決まってしまうという意味で、非常によろしくない状態にあります。

p61
教育ではできるヤツを徹底的にできるようにするだけではなく、できないヤツをある程度できるヤツにする、その両方が必要です。残念ながら、日本ではそのどちらに対してもしょぼい投資しかされていない。

p61
何を教えるべきかもきちんと精査せず、教科書の内容だけを増やしていくのははたして正しいのか。たんに教える側が教えやすいものを選んで教えているだけなのではないか。日本という国は、まだ教育の可能性を全然引き出せていないように思います。

p62
留学生に対して学費を補助しても、その人が自国に帰ってしまったら投資として無駄になると考える人もいるかもしれません。しかし、アメリカの場合はそうやって教育投資を行った結果、世界中から優秀な人材を集めることができました。ITを始めとしてグローバル企業が次々と生まれ、今の繁栄を築いたのです。

p66
家事がどれだけの価値があるのかをお金で評価するのは、簡単です。例えば隣近所でお互いの家事をやって、その分のお金を払い合うと考えればいい。そうすれば、日本のGDPも増えることになりますね。見かけ上のお金のやり取りを増やすのは、みんなが思っている以上に簡単です。

p68
自分の考え方を変えるのが、一番エネルギー効率のよいやり方です。考え方を変え自分の行動を変えるところまで持っていけるようにする。

p70
自分の年収が100万円なり200万円なりアップするよう、資格やスキルを得るために手持ちのお金と時間を使うのが、一番賢い投資術です。

pp72-73
直接お金には結びつかないかもしれないけれど、自分のやりたいことについて少しでも何かできるようになったり、わかるようになったりしたら、大人でもうれしい。それが自然な学びというものです。/そうやってできること、わかることが増えていくと、新しいことを学ぶことが習慣になり、さらにできることも増えていく。それが結果としてお金に結びつくこともありますが、結びつかなくてもそうやって学びを楽しめる人は、貯金はなくてもその場その場で工夫して、何とか生活を回していけたりもする。

p73
子どもたちが自分名義の銀行口座を作れるようになったら、小遣いは全部そこに振り込むようにしました。その範囲内で渡したお金を子どもたちがどう使おうが、僕の関知するところではありません。手持ちのお金以上でどうしても必要なものがあれば、請求書を持ってこさせ、僕が妥当だと思えば払うようにしています。

p88
従業員が残業を断ったことで、会社から不当な扱いを受けたのであれば、徹底的にごねる、居座る、仕事をしているフリをしてスクワットする。従業員として当然の権利を行使しているだけだと言い張ればいいんです。

p89
日本の場合は労働者ではなく、雇用する側が図太い要求をしているだけです。

p89
みなさんが経営者を甘やかしてつけあがらせているんです。

p91
「給料を上げて」と言うのは、「どうやったら、ただの二等奴隷から奴隷軍曹や奴隷将校になれますか?」と聞いているようなものです。奴隷軍曹だろうが奴隷将校だろうが、待遇に多少の違いがあるだけで奴隷であることに変わりありません。

p92
僕から見ると、奴隷状態から本気で抜け出したい人は案外少ないですね。慣れれば、奴隷というのはけっこう快適な状態でもあります。

p93
ブラック企業という存在は、「こいつらを奴隷のように使ってやろう」と舌なめずりしているブラック経営者だけで成り立っているわけではありません。使われることをいとわない、奴隷労働のほうがおいしいと考える「ブラック労働者」がいるから成立しています。

p99
雇用主は、わざわざ「お前は奴隷だよ」なんて奴隷に言う必要はありません。「お前が生活するのはこの範囲だ」「お前のお駄賃はこれが相場」と奴隷に信じこませてやればいい。/あなたは、奴隷になってはいないでしょうか?

pp104-105
「死に損ない企業」がゾンビのごとく延命されているというのは、かなり深刻な問題です。/日本には、つぶれていなければいけない会社がいっぱいあります。/日本の大企業がつぶれそうになると、すぐに「救済しろ!」という声が上がります。しかし、儲からない会社をそのままにしておくと、労働者が低賃金、長時間労働で使い倒されることになる。会社という仕組みがなくなっても実際に人が死ぬわけではないけど、諸からない会社を放っておくと、会社に搾取されて過労死してしまう人が出てしまう。

p106
「会社をつぶして中の人をつぶさない」というのが正しいあり方です。/なのに、日本はいつも真逆のことをしているじゃないですか。会社をつぶさないために中の人をつぶしているわけでしょ?

p123
賃金を払えないのなら、会社はつぶれればいいんですよ。

p156
会社が労働者を不利な条件で働かせて、お金や時間を搾取しているのであれば、罰せられるべきは会社、雇用者です。/ただ、どうしてこういう会社が一向になくならないかと言えば、その口車にほいほい乗ってしまう「ブラック労働者」がいるから。/自分自身が、労働力をダンピングしている「ブラック労働者」だという自覚があるのなら、無理な残業はどんどん断るべきなんですね。

p171
消費税(に類した税制)は世界中で導入されており、一度導入されると税率が上がり続けるという傾向があります。

p251
持てる者は、利権を持っていることに罪悪感を覚えたりしません。/これに対して、持たざる者は労働の対価でないとお金はもらってはいけないと思い込んでいる、あるいは持てる者に信じ込まされているのです。

p266
一昔前なら、やりたいことがない人たちに賃金を与えて、無理矢理にでも勤労意欲をかき立てることは、それなりに意味がありました。工場のラインを稼働させるためには、毎日決まったスケジュールで、決まった手順をこなさないといけませんから。/だけど、そういう仕事はまず1人あたりのGDPが安い途上国に行き、さらには機械によって自動化されてしまいます。産業革命以降、あらゆる産業においてこの傾向は加速し続けており、もう止めることはできません。

pp286-287
暗号資産がハッキングされて盗まれたといったニュースが話題になることが多いのですが、これは暗号資産と法定通貨を交換する取引所からパスワードが盗まれ、不正な送金処理を行われてしまったケースがほとんどです。現在のところ、ブロックチェーンの仕組み自体が破られたことはありません。

p295
パソコンにしてもそうですね。20年くらい前までは、僕もパソコンを毎年のように買い替えていたものです。やりたい処理に対して、CPUが遅い、ハードディスクの容量が足らない――。新機種が出るたびに、パソコンの性能が上がっていくのを実感していました。[...]ほとんどの人にとってパソコンやスマホの性能はもう十分。ハイテク製品の寿命というか、買い換えサイクルは明らかに長くなっています。/消費者が欲しいと思う商品が少なくなり、買い換えサイクルが長くなるというのは、つまり需要が減少しているということ。

pp296-297
日本の場合は現金の流通高が他国よりもずば抜けて多いのも気になるところです。2017年の日銀レポートによれば、現金流通高の名目国内総生産(GDP)比は2015年末時点で19.4%。ユーロ圏が10.6%、米国は7.9%、英国は3.7%となっており、日本がいかに現金大国であるかがわかります。しかも、レポートによれば、この現金は「タンス預金」として使われないままになっているらしいのです。/変なおじさんやおばさんの顔が印刷された紙を、ひたすらタンスに溜め込んでいく光景はナンセンスで、何とも滑稽ではないですか。

p299
今はお金持ちであることのメリットがかつてなく低い時代とも言えますね。何せ、一番優れているものが一番の普及品だったりするのですから。

p307
ほとんどの国は、国民から税金としてお金を搾り取ろうとしますが、そんなことをするよりも、お金を配って知恵を搾り取ったほうがずっといい。/実際、再分配を積極的に行っている国は、行っていない国に比べて、うまくやっているということが統計にも表れています。


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