[読書メモ]『会社に人生を預けるな』(勝間和代)

p15
これまで大多数の日本企業では、リスクを取ってもその分だけの給料は上がらず、逆に仕事の苦労が増えるだけとか、ちょっとだけ出世するとか、あるいはちょっとだけボーナスに色がつくくらいで、リスクを取っても大きくは報われない環境にありました。このため、なるべくリスクを取らないように行動するという傾向がだんだん強くなっていったのです。

p18
「リスクを取れない人」というのは「リスクを取り慣れていない人」でもあります。こういう人は、リスクを変に取ってしまうという傾向があります。

p20
本来なら、私たちは小さい頃から少しずつリスクを取るという習慣を身につけていなければなりません。しかし、私たち日本人の多くは、リスクを取るための訓練を受けずに育ってきました。そのため、社会に出てから慌てふためくことになるのです。

p22
アメリカで行われたある調査では、自分が貧しいと感じている人ほど宝くじを買う傾向にあるという結果が出ています[。]

p24
現代は「適度なリスクを取らないことに対してのリスクの方が、逆に全体のリスクを高めている」時代だと私は感じています。

p25
社内異動などの多少の変化はあるにしても、長年の間に育つスキルは勤めている企業に特化されるようになり、ダイナミックな変化は生まれにくくなります。

p36
OJTにより社内でじっくりと人を育てるだけでは足りず、ITを使った全社的な知識管理や、リーダー層を積極的に生むためのトップダウン型の人材育成など、人材育成の社内システムづくりの方が終身雇用よりも重要になってきています。

p42
私は、一つの会社に終身雇用制で雇われるということは、明るい言い方をすれば小作農、悪い言い方をすれば奴隷制に近いものだと思っています。

p77
日本はすべてにおいて流動性が低いのです。これは、人が流動しないということを前提に社会のメインシステムを組み立てているので当然のことです。

p84
決心さえすれば、変化すること自体はそれほど難しいことではないと私は思っています。

p89
終身雇用制を採っている会社は、業務の内容や行い方が明文化されていないという特徴があります。見て覚える、聞いて覚えるといったような形で、それこそ丁稚奉公的なものになっています。したがって、一人前になるのに、平気で5年も10年もかかってしまいます。これでは効率が非常に悪いのは明白です。/これに対して終身雇用制を採っていない会社というのは、従業員がいつ出て行ってしまうか分かりません。そのため、一刻も早く、半年、1年で独り立ちし、戦力になってもらわないと企業側も困るのです。2~3年で転職してしまう可能性が高い中で、5年をかけてこの人を育てましょう、といったような悠長なことは言っていられません。

p91
会社でロールモデルや見本になる人がいない。だからこそ、私の本をはじめ、さまざまな本を読み、バーチャル上司、あるいはメンターとして活用し、自分たちの新しい道を模索しているのでしょう。

p97
日本人は、リスクを取るという訓練を金融以外でほとんどしていないのに、金融だけでリスクを取れと言っても、それがどういうことか分からないのだ。

p97
終身雇用制による労働の(見せかけの)安定は、個々人のリスクを取る能力を極端に阻害しています。

p101
景気がいい時に浪費をする習慣が身についてしまうと、景気の悪い時に困るということです。

p103
通常、人間は何らかのリスクにさらされた時の行動パターンとして、十分な将来予測ができない場合、どうしよう、どうしようとすぐに慌てふためいてしまう傾向があります。しかし、リスクに対して何が起きているのかを冷静に分析でき、ある程度の幅で将来予想ができるようになれば、周りの状況やシナリオを理解し、いま現在、世の中の人が何を考えて、どう動いているのか、それと並行して自分はどう動くのかを俯瞰できるようになります。すると、いま目の前で起きていることが想定の範囲内となり、慌てる必要はそんなにないことも分かってくるのです。

p110
私たちはついつい、なるべく安いもの、安いものを追い求めて買ってしまう傾向にありますが、安いものは安いものなりの理由があるのです。

p110
知っているリスク、気づいているリスクというものは実はそれほど怖いものではなく、終身雇用制のように、知らないで取ってしまっているリスクの方が怖いのです。

p111
私はなるべく水を飲むようにしていますが、なぜ水がよいのかというと、他の飲み物に比べてリスクが小さいためです。

p116
自分で信頼できる野菜を買い、料理を覚えて自分で作ったほうが早いということになります。

p117
リスクについては漫然と、可視化する前になんとなく避けてしまい、そして実際にリスクが生じた時には、製造者が悪いとか、お上が悪いとか押しつけてしまうのです。

p117
リスクは避けるべきものではなく、上手に付き合っていかなければならないものです。

p118
リスク管理上の最も大きな失敗は、リスクの存在そのものを見逃すことです。

p119
ここで私が言いたいのは、このような警告にいち早く気づくことができるよう、自分の感受性を高めておくことであり、リスクを見抜く双眼鏡を常に携帯しておくことの重要性です。

p123
素人(同然)のドライバーと、タクシー運転手のようなプロのドライバーが運転した場合、どちらの方が同じ距離あたりで事故率が高いのかというと、それは圧倒的に素人の方です。

p126
リスクとは不確実性のことです。

p127
リスク・リテラシーが身についた生活というものは、想像以上に楽しいものです。これが身についていれば、金融危機が起きても、政治的混乱が続いても、不安をあまり感じなくなります。なぜなら、現在何が起きていて、どのような状況にあるのか、将来はどうした方向に進むべきなのかが、ある程度のシナリオ幅の範囲で分かるためです。

p130
終身雇用制に慣れてしまうと、会社というものは私たちのリスクを勝手に管理してくれる存在で、その将来に対してまで全部担保してくれるような錯覚に陥る傾向にあります。しかし、これはいうまでもなく錯覚です。

p140
リスクを取らないことや保守化していくことは、外部環境が変化した場合、その適応が遅れることになり、かえって大きなリスクを取らざるを得ない状況に陥ることを意味します。

p143
こうした「お上」に頼る的な発想は私たちの体にすっかり染み込んでしまっています。そして、一度身に染みついてしまった体質を壊すことはなかなか難しいことです。

p146
私たちはこの不確実性の高い社会において、「お上」に頼らず、個々人がしっかりとしたリスクを取り、判断を行う必要がありますが、この時に必要なことは、正しいリスクを取った人が正しく報われる仕組みです。

pp166-167
人間のリスク感覚を鈍らせる、より大きなものが企業勤めの問題です。日本の終身雇用制度にはやはり、リスク・リテラシーの観点から見ても大きな問題があります。それは、従業員がリスクを取らないような仕組みでガチガチに固められている点です。/それは、社員の管理であったり、景気変動に対するスタビライザー(安全化装置)であったり、その社員が本来であれば自分で考えなければならないキャリアなども全部会社が引き取って考えてくれたりと、従業員が過保護な状態にあることです。

p186
エステに行くということも、自分の皮膚管理の責任を相手に預けてしまうという行為になります。

p204
私は、リスク教育の肝は、「将来に対する想像力」であると思っています。一つ一つのことについて、仮に自分がそれを実行した時、あるいはこれについてリスクヘッジをしなかったらどうなるのだろうかと想像した時、どれだけ将来を予見できるのかということです。

p213
私はよく、0.2%の日々の改善が重要だという説明をしています。これは、毎日0.2%ずつ何かの能力が複利で改善されていくと、100.2%が365日、すなわち365乗すると1年でほぼ倍の数字になるということです。このように、リスク・リテラシーに関しても、毎日、ほんの少しずつでも上乗せしてゆけば、1年で大きな改善が得られる可能性があるのです。

p219
最後に、読者のみなさんへのお願いです。本書を読み終わりましたら、リスクについてどのように考え方が変わったのか、また、どのように行動が変わったのかを、ブログに書く、あるいは、アマゾン、mixi、楽天ブックス、7 & Y などの書評に載せてください。


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