[読書メモ]『日本の虐待・自殺対策はなぜ時代遅れなのか』(吉川史絵)

p14
また、保護者教育も同様に必要だと思います。子供を産むだけで、よい親になれるわけではありません。子育てに関して不安があり、誰にも相談できない保護者が虐待をしてしまうケースもあるかもしれません。

p15
臨床心理士は指定大学院または専門職大学院を修了し、協会の資格試験を受けて合格することが必須要件ですし、公認心理師も、大学ないし大学院で臨床心理学についての専門知識を学び、資格試験に合格しないと取得できません(一部例外もあります)。/基本的に大学・大学院での修学を必要としているのがこの二資格なのですが、現在の日本はこの資格以外にも、オンラインやワークショップ等で短期間に取得できるいわゆる民間資格が多く存在しています。また日本では、民間資格を取得せずとも「独学で学んだ」「自分の人生経験を生かして……」などと言って、「カウンセラー」「心理セラピスト」と名乗って開業することもできてしまいます。

p24
[アメリカでは]虐待が疑われる際には、どんな状況であっても、とにかく絶対に通報しなくてはならないのです。

pp25-26
日本では、未だ「体罰」や「愛のムチ」といった暴力行為を軽視する言葉も存在しています。暴力行為を行ったときに、体罰や愛のムチだったと言い訳することで、暴力行為を正当化する人がまだまだ日本には多いようです。

p39
ネグレクトをしている保護者の中には、「虐待をしているつもりはなかった」と主張し、自身の生活環境の苛酷さを訴える人も多いです。生活環境の苛酷さから、結果的にネグレクトになってしまったとして、虐待の意図を否定するわけです。/しかし、虐待においては「過程」が議論されるべきではありません。前述の定義に基づき、結果的に何に当たるのかで虐待は判断されます。/したがって、保護者の生活状況にどのような理由があっても、結果がすべて。未成年者が「ひどい生活環境」にあると判断されたら、それはすべて虐待に当たるのです。

p42
親子関係は人間関係の基礎となりますから、DVを介して屈折した感情を覚えてしまうと、例えば、大人になって異常に低い自尊心を持つことにもなりかねません。また、素直に愛情を享受できず、感情を押し殺すことや、パートナーに愛情を持つこと自体に恐怖を覚えることで悩むかもしれません。

p53
虐待を受けた多くの子供は、最初は協力的で、黙り、恥ずかしがり屋に見えることが多いです。愛情深く、どこか特別な雰囲気をまとっているだけのように見えがちです。このように落ち着いて見える様子が、内面に抱える複数の心理問題をうまく隠してしまうこともあります。

p60
私は、この大人の意識に変革をもたらすものこそ、属しているコミュニティだと考えています。[...]したがって、コミュニティの変革は、虐待防止と発生そのものを根絶させる上で大きな役割を担っています。

p63
コンシーラー(隠すためのファンデーション)

p66
いくつかの州では、法的通報義務者を、職業に関係なく「虐待を見た成人全員」としているそうです(つまり成人の住民全員、虐待を見て見ぬふりをしたら法的罰則が発生するということです)。

p74
Validation とは相手の意見に同意することでも、相手の言うことを正当化することでもありません。相手が経験した感情の動きや反応を理解して、その相手が「こんな感情を持ってもいいのだ」と思えることで、自分の気持ちを恥じることなく表現する自由や、自分の気持ちに正直になる機会を与えることです。

p107
数年前に流行した「マインドフルネス」は、「今この瞬間の自分の精神状態に深く意識を向けること。あるいは、そのために行う瞑想」のことですが、これは実際のところ、仏教観をもとに発展した思想です。そもそもこのマインドフルネスという言葉も、仏教の「念(サティ)」の英訳で、「心にとどめておくこと」「気がつくこと」などと訳されます。

p119
不登校・登校拒否 (Truancy / School Refusal)

p139
ホームスクーリングが、新型コロナウイルスのパンデミックで一つの選択肢として伸びていることもお伝えしなければなりません。

p140
ホームスクーリングはアメリカでは古い歴史があり、学校の一形態として確立されていることから「今後パンデミックが続いても続かなくても、安全に変化なく授業を受けられる」学習環境として、ホームスクーリングは最適なのでしょう。

pp141-142
日本では学校を、社会性も勉強も人間関係もマナーもルールも、大人になるために必要なことをすべて学べるマルチな場所と期待している部分があるのではありませんか? 学校とは、本来であれば勉強をするところであり、学習することが一番の目的であるはずです。/学校に通うことにあまりに大きく期待をかけてしまうと、「友達とうまくいかない」「学校の勉強がわからない」「先生に叱られた」「給食を残してはいけないと言われた」など子供が様々な悩みを抱えやすくなります。/また、学校に通う以外の選択肢が豊富にないと、不登校の子は登校するか否かの選択を迫られることになります。これではますます学校に通うことへのプレッシャーが増え、恐怖は増します。登校拒否を助長させることにもなるでしょう。

p162
フロイトによって提唱された「トーキング・キュア(対話の治療)」では治療し回復するまでに最低数ヶ月、長くて数年かかることが問題とされた上に、一部の患者にはあまり効果がないようでした。

p166
この背景に、変化を嫌う日本人の国民性が強く影響しているのは間違いないでしょう。何となく続いてきた見えない社会規範と日本独自の倫理観のもとで、長期にわたり国が繁栄してきたのであれば、無意識に「このままでいい」という意識が働くのは理解できます。/ところが問題は、それではすませられない現実が目の前に迫ってきているということではないでしょうか。

p167
問題が起こる前に心とストレスのケアとして、私たちがカウンセリングやセラピーを受けるのを当たり前にすること

p187
話の中に他人が理解できない意味のない単語が出てくることもあります。これをワードサラダと呼びます。ワードサラダとは、文法的には正しいが意味が破綻している文のことです。

p200
何か気分がよくなるような活動に積極的に取り組み、不安を感じる時間を意図的に減らすのもよいでしょう。楽しいと思えることに時間を費やすことで、自然と心配事を減らしていけます。/不安を感じているときや感じそうなときは、アルコールの使用を避けましょう。 アルコールや薬物の使用は不安を引き起こしたり悪化させたりする可能性があります。

p209
「来談者(クライアント) 中心療法」では、セラピストやカウンセラーが分析して解釈するのではありません。クライアント自身が中心となって思考や感情を意識的に知覚し、解釈できるように促す人道主義的なアプローチです。

p222
アメリカでは未だにメンタルヘルスに対する偏見が強く、メンタルヘルスが人間の健康に大きく影響し、どれほど重要かを十分に理解していない人が多いのが現実です。

p262
高校になると、普通教科とは別にオナーズ (Honors: 上級) クラス・AP (Advanced Placement:飛び級) クラスという大学進学用のクラスが存在します。オナーズクラスは成績優秀者のクラスです。APクラスは大学の初級レベルのカリキュラムと試験を提供するクラスです。この2クラスにいる生徒は宿題・日々の課題・定期考査において常に85%以上の成績を収めていないとそのクラスに在籍できません。

p278
アメリカではPTSAの役員の押しつけ合いのようなことはあまりないようです。学校見学も、学校はいつでも了承しなければならないので、基本的には学校側の拒否権はありません。


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