ハンカチの思い出
小学2年生でとても仲良しの友達が出来た。行き返りも一緒でお互いの家にも遊びに行っていた。彼女の家は一軒家で犬を飼っていた。触りたくてたまらない私は、何度か試しに近づいてみたけどダメだった。手入れのよくされた秋田犬だった。友達にはしっぽを振って甘えるのに、私には歯をむき出して唸るのだ。これ以上は危険と察知してあきらめる。ビルとは大違いだった。これが和犬というものなのだ主人には忠誠を誓う飼い主にとっては最高の相棒だろう。クラスではみんなよくしてくれた。人の事に無頓着だったので密に嫌な空気が流れていたのに気が付かなかった。一人の女の子がはぶられていた。彼女が極端に大人しかったので、余計わかりずらかったのかもしれない。そうしてついに先生が立ち上がった。女の子のハンカチを取り出して、皆さんはハンカチを持っていますか。怒りに満ちたひと言にみんな圧倒されていた。その日から彼女に対する陰口や無視もなくなった。そして女の子の輪にも入れるようになっていった。私が話しかけた時のはにかんだ笑顔は今でも忘れられない。先生が見せてくれたのはただただ真っ白いハンカチだった。彼女には綺麗な花模様のハンカチが似合うな。