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木綿のハンカチーフ
昭和歌謡曲「木綿のハンカチーフ」
幼稚園の送り迎えの自動車の中で母は子どもの歌ではなく昭和歌謡曲をよく流していた。
故郷を離れキラキラと輝く都会に染まっていく男と故郷に残った女。
どちらが悪いわけじゃない。
変わっていく男に女は最後に木綿のハンカチーフをねだる。
小さい頃は明るいメロディが好きで何気なく口ずさんでいた曲は大人になった今改めて聴くと、その明るいメロディが悲しい。
女は男に涙を拭くためのハンカチをねだる。
男が彼女の気持ちに気づいたのかどうかはわからない。都会の喧騒に呑まれて故郷を顧みることを忘れた男に彼女の気持ちに想いを馳せる余裕などない。
女はずるい。自分を泣かせた相手へ後ろめたさを抱かせるために手紙を書いた。男の記憶にいつまでも自分が残るように。女はハンカチをねだった。自分を泣かせた相手のことをいつまでも覚えておけるように。
まるで一つの短編小説を読んだような魅力が詰まった作品。
読んでくださり,ありがとうございます。