鉄道オタクと呼ぶには小さい

久々に実家に帰った。

相変わらずの田舎で、だだっ広い田んぼが続いている。

ただ昔と違うのは、その中を電車の線路が横切っていることだ。

まだ新しいその線路は普通列車や貨物列車だけでなく、新幹線も走っている。

まぁ、自分もその新幹線に乗ってきたのだが。

田舎だと特にやることもなく散歩していると、ふと線路のそばに立つ親子を見つけた。

飛び込みじゃないよな・・・。

俺はまさかと思いつつも、気にしてない風を装いながら親子の方に歩いていった。

すると遠くの方から列車が近づいてくる。

俺は無意識に早歩きになった。

が、子どもは列車に気付くと大きく手を振り始めた。

なんだ、列車を見にきただけか。

ほっと胸を撫で下ろし、歩く速度をゆるめた。

子どもは両腕をぶんぶん振っている。

列車はどんどん近づいてくる。

そろそろ先頭車両がすれ違うというとき、列車がホーンを鳴らした。

子どもは腕を振り続ける。

列車が通り過ぎると、今度は体をこっちに向けてまだ腕を振っていた。

その子の瞳は、キラキラと輝いていた。

比喩なんかじゃなく、本当に輝いて見えた。

親子とすれ違うとき、会話が聞こえた。

「パパ!ホーン鳴らしてくれた!」

「よかったなぁ。」

「帰ったらママに言う!」

名前も知らない子どもの笑顔を見たのがすれ違う直前で良かった。

親子の帰り道が反対方向で、良かった。

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