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霧島訪拝 二拍手

霧島、二度目の訪拝。

五月三日、早朝六時。混む事を予想し、早めに家を出る。

予想に反して、国道は空いている。よい流れで九時には日向市に到着。

雨に降られる。滑りやすくなる上、慣れない道であるので一層慎重に運転をする。

丁度野尻の辺りで渋滞。やはり、と笑いながら時速40キロでのろのろと。車間距離は十分にとっておく。雨が激しく車のフロントガラスを叩く、ここちよい音だと想う。

渋滞の原因は事故であったよう。横転した車と警察車両が見えた。そろそろと車を進める。野尻を過ぎれば、霧島はすぐそこである。

正午ちょうどに霧島神宮到着、雨足がゆるむ。流石大型連休、雨の中であるのに、参拝に並ばねばならなかった。

慈雨に濡れたる頭を下げて神前

傘をさしての参拝は息苦しいので、濡れるのも致し方ないと途中から傘を閉じてしまった。手水舎にも寄り付けなかった。手水舎の背後にはご神木の大杉が居る。傘の花に雨に打たれて笑う様を見た。


傘の花見下ろして御神木

到着したのが一時を過ぎていたから、何か喰わねばならぬ、と腹が言った。だがどこもここも人の群れで、人の腹に文句もつけられないから、腹の虫を黙らせて、仮面を集めているという数寄者の店に寄った。ただ黙って人が飯を食うのを待つよりはもの言わぬ仮面でも眺めていたほうが、腹の虫も癇癪をおこさぬかとおもうた。確かに、癇癪は収まった。鬼は人を滅法愉快にする。

それもこれも来年の話

霧島から宮崎高千穂、阿蘇に至るまで鬼の話は数多い。霧島九面、と鬼の面は霊験あらたかなそうな。高千穂には、嫁を取られ、五体を引き裂かれたあわれな鬼八、なる鬼がいる。今だ鬼八塚にて例祭を行うは彼の子孫。嫁と子供を守るために中央にたてついて、五体に引き裂かれた。だが彼は、秋元神社にて神となれり、ししかけの祭りも、石神のなごりであろうさ、高千穂。旧い神は死んではおらぬ、また蘇る。さても、隼人の民の勇壮なるは正に鬼の如し、熊襲、土蜘蛛と卑下され、神楽の舞妓と堕とされても、須佐なるおのこの血脈は今だ絶えざらん。

霧島、高千穂、西都原古墳群には、戦争の気配が在る。そして、勇壮な軍を率いたであろう男の気配が在る。隼人の民は暦を持っていたそうな。

腹が減っては戦もできぬので、飯を食う。路の駅にて、黒豚の定食をいただく。結果、この日食べた食事らしきはこの一食であった。

16時、新燃岳のほど近くにある、新湯に到着、強い硫黄の香りに酔わされる。小雨の中受付を待っていると、宿泊予定であろう、登山用の格好をした人々が体をタオルで拭きながら入っていった。小さな湯屋である。

噴かすほどは荒ぶりきれぬ新燃岳
硫黄の香も雨音と霧に溶けていく
白色の湯の中で足を揉む

お湯を頂いて、国分へと出る。ホテルが取れるはずもないから、ネットカフェのフラット席で横になる。その日はそのまま眠ってしまった。


#旅行記  

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