過去書いたリニジ系小説 2

覇王ヒロのクランに居た時、「文章書きたい!」つったらいいよって言われたので書いた。taizou×ヒロ。ヒロは「辛い」つってた。

題名はエデンの果て


とある国に王様が居ました。
彼は全ての権力をほしいままにし、沢山の財宝と沢山の美女、そして沢山の家来と一緒に楽しい毎日を暮らしていました。
けれども満足できない王様は、家来に向かってこう言いました。
「あのお城がほしい!戦争をしよう!」
沢山の人間が戦争で死んでいきました。けれども、王様は新しいお城を得ることができました。
王様はいつも上機嫌。美味しいワインとパンを食べて、お祝いをしています。

そんな楽しいお祝いの席に、一人の乞食が迷いこみました。ボロボロの服を着てボサボサの髪を振り乱したその乞食はどうやら女のようでした。女は寒さと飢えに震えながら、王様にこう告げました。
「あでんの果てに実のならない花がさくだろう。それにあおい蝶々がとまったとき、せかいがかわる」
王様は乞食の言葉を聞いて怒り狂いました。
そして乞食を、人のたどり着けない深い森の中の大きな樫の樹に縛り付けてしまいました。

家来達は乞食のいう事など、と笑いましたが、王様の顔は晴れません。
王様はわかっていたのでした。

――覇王にとって、もっとも恐ろしいのは、予言である、と――

      last of aden ~エデンの果て~


そろそろ月が南中に懸かる。それが祭りの合図だった。
ワルプルギス・ナイト。精霊とエルフと妖精の為に、4月の末日、毎年行われる豊穣の祭り。それはエルフの為の密やかで厳かな祭りであったのだが、人間と生活を共にし始めて、その形態は大きく変わった。前はエルフ族のみが飲むことを許されていた甘い蜂蜜酒が人間達にも振舞われている。今、この世界、アデンではどこそこで祭りが行われているだろう。暗い夜空を見上げれば満月の下に、気の早い、どこの誰があげたかわからない花火が大輪を咲かせている。
赤や黄色に点滅するその光に気付かされて、女装ヒロは俯いていた顔を上げた。まだあどけないその表情には、年に似合わぬ憂いが張り付いている。エルフ族の憂いを表した言葉をなんといったか、確か、
「項垂れる百合」
と高い声がかかった。驚き、声に顔を向けると華やかなマリーゴールドの色をした満面の笑みがそこにある。「めぐちぃ」
安心を顔に綻ばせて、彼女の差し出した蜂蜜酒を手に取る。
「ダメだよ。俯いちゃ。項垂れる百合には皆、水をかけたがるんだから」
甘くて度数の強い蜂蜜酒を柔らかげな唇に押し付けて、篭った声でめぐちぃは言った。
そんな事、とヒロが困った表情を彼女に向けたとき、足元から湧き上がる清い水の精霊が彼女達を包む。ウォーターライフだ。
ほらね、とめぐちぃは笑い、精霊魔法をつかった見ず知らずの男エルフに笑顔を向ける。
返すがたなで、彼にはストームショットをかけてやった。美女二人からの思わぬ贈り物に、男エルフの手にある蜂蜜酒が高く掲げられる。
「もうすぐ、南中だよ」
彼を見送ってめぐちぃは言った。
「月があがったら、アジトに帰らなきゃ。皆蜂蜜酒を待ってるの。こんなか弱い乙女に重いものを持たせるなんて、酷いクラン員だと思わない?」
ヒロを促して、足元の大きな包みをめぐちぃは開く。中には、人間用の蜂蜜酒が大量に詰め込まれていた。
「ヒロもおいでよ。きっと楽しいよ」
持ち前の輝くような笑顔で、めぐちぃはヒロを誘った。けれども彼(彼女)の表情はその眩しさに気おされて一瞬、曇る。
「わ、私は・・・」
「いこうよ!」
細くて力強い手が、ヒロの腕を取る。
「こんなところで水ばかり浴びたら、どんな花だって腐っちゃう!」

力強いめぐちぃの手に引かれながら、ヒロは思う。
私がこうだったらどれだけよかっただろう。こんな風に健やかに、正しくあれたらどんなによかったのだろう。
言うに言えない秘密を(彼)彼女は抱えていた、それは呪いの禍々しい強さを持って、彼女の体内奥深くに根を張っている。

話せる島の宿屋前では、既に沢山の人間達が集い、祭りの準備を行っていた。宿屋前で一人佇んでいた魔術師を見つけて、めぐちぃの表情に光が灯る。「水曜日!」
と彼女は言ったが、本来の彼の名前はwednesdayである。けれども、彼はその愛称によって振り向いた。めぐちぃの背負う重い蜂蜜酒と、一人の美女を見止めて、彼が声を掛ける。
「ご苦労だったな。もう皆集まっているよ」
そこまで言って、彼は一人の男の名前を思いついて肩を落とした。「ああ、taizouがまだだ」
めぐちぃもまたその男の名前を聞いて眉を落とした。そしてその後ろで佇んでいるヒロも。
なによう、とめぐちぃが声をあげる。
「私がこんな苦労して持ってきたのに、荷物持ちはいないっていうの?何やってんのよう、あいつ」
呆れたように水曜日も言う。
「どうせ狩りだろ。今日は傲慢ってとこか。あいつ俺達よりモンスターが恋しいんだ」
言いえて妙だったので、めぐちぃも笑う。
「まあ、時間は伝えてあるから時間までには戻ってくるだろ。じゃ、それ宿屋まで運んでくれ」
彼の非常識な申し出に、めぐちぃの頬がぷぅ、と膨らんだ。酷い!とまくし立てて、水曜日に食って掛かる。
「イヤよ!こんな重いもの、これ以上私に持たせる気?!あんた男なんだから持ちなさいよう!」
めぐちぃの声に片目を瞑りつつ、水曜日は彼らしい、毒を交えながら彼女に返す。
「俺のこの繊細な腕と指先を見ろよ。戦闘用には出来てないんだ。そんな重いものもったら魔法を忘れちまう」
始まった、痴話げんかにも似たその口論を遠くに聞きながら、ヒロは辺りを見回した。見回したところで望んだ、その人の姿が見つかるわけがない。ついさっき、水曜日は言っていた。狩り、だろう。と。

ヒロは何故だか、taizouと居ると心が安らぐ。それは、taizouが無口だからだという事をヒロは理解している。自分を詮索しない、自分を特別に見ない、自分を決して過大評価も、過小評価もしてくれない彼の、無口故の優しさである、と。
きっとクラン員は気付いていない。taizouの深い情愛を。いつも仲間を守り、自分を傷つけ、それでも誰かを攻めることをしない、温かな、温かな情愛を。
ふと、ヒロは自分のとなりに何かが降り立ったのを感じた。それはものも言わず腰を折り、自分の目の前に投げ出されていた蜂蜜酒の袋をいとも簡単に取り上げて、宿屋に向かって歩き出した。
黄金の鎧。虹色に輝くマント。
「taizou」
ヒロの声に気付かされたように、言いあいをしていた二人がそれを見る。taizouは水曜日の前に立ち止まり、告げた。
「宿屋に、運べば、いいんだな」
突然の登場に面食らっていた二人だったが、水曜日がまず噴出した。
笑いながら、彼に、ああ、そうしてくれると助かる、と告げた。
再びものも言わず歩き出した山のような背中を追って、面食らったままのめぐちぃが走り出した。憂いていたヒロの表情にも笑顔が戻る。
そして水曜日の声がかかった。
「さぁ、いこうか」

宿屋の中は既に世界をひっくり返したような騒ぎになっていた。蜂蜜酒は度数が強く、飲みやすい。けれどもこの時期にしか飲めない貴重な酒でもある。ここぞとばかりに人間達がそれを浴びるように飲んでいる。いくつかあるテーブルの上ではクラン員が狩りの話に花を咲かせていた。ドラゴンバレーのBEをうちとったが、アデナしかでなかったこと。あるいは夢幻の島でユニコーンをうちとった物は知力の秘宝を手に入れたなどと。
騒がしい宿屋の中に居場所をなくして、ヒロは一人で蜂蜜酒を啜っていた。口の中にそれを入れるとまず口内に広がる、ほろ苦く甘い香りと味。のちに強烈な刺激が舌を焦がして、脳内へと昇っていく。ゆっくりと甘い刺激を飲み込むと、花の香りを持った溶岩のような熱が胃から全身へ立ち上がってくる。全身を酔わす花の香りに揺さぶられて、ヒロは少しだけ表情を緩めた。この酩酊においては、自身の詰まらない呪いなどはとるにたらないものだと思ったからだ。もしかして、と彼は思う。
自分がここで、自分の呪いについて暴露したとしても、この酩酊の中ならば、誰も気にすることはないのではないか。誰もが笑い、そうだったのか、と杯を差し出すのではないか、と。
自分の下半身に纏わり付くどす黒い呪い。これは酒を呑むとよくその鎌首をもたげる。思わず脳裏に走った恐ろしい情景を打ち消して、彼(彼女)は強くもないのに、蜂蜜酒を煽った。目の前が爆発するような刺激に耐えかねて、思わず咳き込んだ。
「大丈夫か」
と、低い声がかかる。taizouだった。
「taizou・・・」
口の端から零れて、空になってしまった杯を見止めて、taizouが蜂蜜酒の瓶を差し出す。
「まだ沢山ある。ゆっくり呑めばいい」
少し赤らんだ顔のまま、ヒロはtaizouに向けて杯を出した。なみなみと注がれた杯を彼に掲げる。
彼もまた幽かに微笑んで、杯を掲げる。残り少なかった杯の中の酒を飲み干して、手酌で再び酒を注ぐ。
いつもヒロはtaizouの前に出ると、口ごもってしまう。彼が無口であることの弊害でもあったが、今日は勝手が違っていた。酒の威力とは本来、こうやって使うべきなのだろう。

「あ・・・、皆のところに、いかないの?」

口ごもりながらもヒロはtaizouに言った。taizouは答えないまま、酒を啜っている。
暫くの沈黙がヒロを苦しめる。辺りはこんなにも騒がしいのに、この一帯だけがやけに静かだった。
何か悪い事を聞いたんじゃないかと思う。彼を傷つけてしまったのかと思う。

「騒がしいのは、本当はキライだ」

憮然と吐き捨ててtaizouは答えた。そのまま続ける。
「その点、お前はいい。あまり、騒がないから」

不安は杞憂だった。その上、自分が何か特別な存在であれたような気がした。静かだから自分の傍にいてくれるのか、それはそれでひっかかったが、それでも彼と同じテーブルで同じ瓶の酒を啜れることは彼(彼女)にとってこの上もなく幸福な事だ。
また、暫くの沈黙があった。今度は努めてそうした。そうしながら、ヒロは彼の輝く鎧や、虹色の小手を凝視する。少し彫りの深い目元、高い鼻。黒くて強そうな髪。そして何かをみているようで見ていない眼差し――。
いつか、離れてしまう時が来るかもしれない。そんな恐ろしい事は、彼(彼女)には考えられないのだけれども、時間というのはいつも無情だ。だからこそ記憶する。彼の声の低さ、彼の眼差し、彼を構成する全てを記憶の中に閉じ込めて、いつでも彼に会えるように。
ふと、taizouがヒロの視線に気付いて視線をこちらに向けた。自分の浅はかな考えを見透かされているようで思わず顔を伏せた。taizouの声がかかる。
「なあ」
俯いたままで答えた。「何」
「お前、今、どこで狩りしてる」
予想と反した答えだったので、ゆっくりと顔をあげてtaizouを見た。そっぽを向きながら頬を染めている顔がいつになく可愛らしく見えた。
「え、えと、水路とか・・・、DVとか・・・」
詰まらなそうな表情が彼の顔に宿ったので、思わず声を張り上げた。
「ふ、二人だったら、FIとか・・・、ご、傲慢の塔とか」
傲慢の塔、の言葉にtaizouの顔に幽かに(それは確かに幽かだった!)が光が灯った。けれども気のない振りをして、彼は一口酒を啜る。
また、沈黙だ。
自分が彼の足元にも及ばない事は自覚している。けれども一瞬でも必要とされたあと、彼の望まない自分になるのはイヤだった。再び、痛い空気がヒロを襲う。
空気を切って、taizouが口を開いた。
「・・・一緒に行ってたwizが怪我で暫く狩りできない。回復をしてくれる奴をつのったけど、やりにくい」
それは申し出の空気を纏っている。ヒロの胸にはじけるような不安と期待がめぐりだす。
「ヒールを、してくれるだけでいい。ポットは重いから」
そしてtaizouはヒロの顔を見た。「暫く、一緒に狩りをしてくれないか」
期待通りの申し出にヒロの背筋は思わず伸びた。飛び上がりかけた足をぐっと押さえたら、声まで押し殺してしまった。
「あ、・・・う・・・、わ、私で・・・いいの?」
いやか、とまたあっちを向いてtaizouが言ったので、ヒロは首を横に振った。それこそ、首が飛んでいきそうな勢いで。
「よかった」
とtaizouは子供のように微笑んだ。その笑顔をみて、踊りだしそうな体を両手で必死で押さえつけた。だけれどもその溢れんばかりの喜びを、顔に表さないのは不自然だ。
体を押さえ込みながら、ヒロは、今日最高の笑顔をtaizouにくれた。

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