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一人断腸亭日乗 9月26日

悲しい話をしようか。

手取り15万から始まる不幸自慢天下一武道会、結局あれ誰が優勝したんだ?
今大会も孫悟空選手の優勝です。何故なら彼そもそも収入がない。収入がなくて幸せな孫君にみんな憧れたあの頃、僕の数人めのカレシだった事を思い出す。

低収入未婚ブスデブ終わってる系メスのうちの不幸自慢も結構イケてるほうだけど世の中には戦闘力が54万越えのフリーザ級がゴロゴロいるし、僕の不幸なんかまぁヤムチャで済まされるぐらいが関の山だろう。

手取り15万の戦闘力はどれぐらいだろう。僕はそこにミスターサタンのカリスマをみた。絶妙な雑魚さとコミカルさで僕としては最上の当てはめだと思うんだけど、どう思う?siri。うん、Siri も沈黙しているし今の内だ、ゾルタスクゼイアンにバレる前にそういう体で話を進めていこう。

今実は食事をしている。月に一度の最良の贅沢、温泉飯である。良い湯に入って、それから飯を食う。月に一度ならミスターサタンだってそういう生活が出来るのさ、どうだい羨ましいだろう。ミスターサタンは久々にこのバイキングに来た。新装開店リニューアル、商魂たくましい大分の飯屋がラグビーワールドカップの外貨を見込んで必死に取り繕ったトスカーナ風、いや南プロヴァンス風だったかな、トスカーナ風南プロヴァンス風を添えてでいい、まぁそういうオシャンティでラグジュアリーでハイセンスなお店に生まれ変わったそこで、こ洒落たアヒージョだの、マリネチーズなんかを食べている。添え物のオリーブが美味しいのがまた悔しい。

僕は正直前の薬膳料理の方が好きだったのだけど、オリーブオイルをふんだんに使えばタピオカギャルだって取り込めるからね。タピオカはオリーブで出来てるから実質一緒みたいなものだ。

でもさ、見当たらない。このお洒落になった、タピオカまみれの、素敵なバイキングに、ミスターサタンが見当たらない。
見渡せばどれもこれも一般市民、そしてお年を召した方。孫の結婚について語るミセス達、ドレスアップした夫婦、上品な物腰のお祖母様。

このバイキングのお値段は1700円、外食としては高い方、だけど風呂とそのあとのメシを体験として捉えると、タピオカの海を泳ぐようなもんで、タピオカの海を泳ぐなら1700円出すでしょ、オシャンティな内装、飾られて光るワイングラス、田舎に住んでるミスターサタンを騙すにはお手ごろ価格なご飯やさんだ。けどもミスターサタンはいない。僕以外。僕は席に座ってずうっと待って、小さな小さなカップに濃い目のイタリアンコーヒーを3杯も飲んで粘ったのだけど結局ミスターサタンはこなかった。店を出たら雨が降り出していた。

もう、外食をする事も、温泉にはいる事も、或いはチープさを無視しながら食事の世界に浸ることも、もしかしたらミスターサタン達には難しいのかな、と考える。マッチをともして見える世界、あの磨かれたガラスの向こうは、幸せな一般市民しか存在しちゃいけない世界になってしまったんだろう。

でもさ、ミスターサタンだぜ?あいつは英雄だったんだ。それはウソの、欺瞞の、虚飾の、それでも英雄だったんだぜ。僕らミスターサタンは一体何を守ったかな、セルから?いいや不景気から、僕らミスターサタンが守ったものは、一般市民の生活だ。

マッチを擦れば現われる、トスカーナ風南プロヴァンス、タピオカ仕込みの幸せな世界。


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