見出し画像

モーニング俳句 2019.8月

 暑いとはいえやはりお盆をすこし過ぎると空気の重さが変わるというか、影に入ればすごしやすくなりました。二十四節気って実感と合わない、と思っていたのですが、「処暑」は結構その通りかもしれないなと感じます。まあそれも地域によって随分違いが大きいですよね……北海道の高校生が季語と自分たちの生活とのずれに戸惑うという話を最近目にした記憶があります。

8月は俳句ポスト「轡虫」で人選をいただきました。

帆を張れば海も汝のもの轡虫

以下、八月の朝俳句、一ヶ月分です。

雲の峰見上げる喉の遠い声
氷室閉じ見えなくなれば忘れゆく
白南風やわたしは海に帰りたい
国道にトマト潰れて胸の汗
ラメ落とす素爪黄色い夜の秋

広島忌父の語らぬことのあり
夏の果て背中に擦れた座椅子在り
秋立ちてカーブミラーの影淡く
長崎忌ロザリオ手繰る爪に溝
ひぐらしや漆の床に薄埃

芙蓉落つ昨日の花も掃かぬまま
秋日傘喪章ゆれ行くひなたみち
迎火のあいだ野球はつけたまま
盆の月写真に撮れば小さくて
敗戦忌汚れた靴のまま立てり

すいっちょんのひげ切れて手に残るもの
桃の実の繊維ざらりと死の病
椋鳥のねぐらかしまし宵の月
スカーフの鳥の羽ばたく律の風
芋虫のやわらかさまだ指に在り

花ほどは顧みられぬ椿の実
換気扇とめて初風に聴き入る
老犬のいびき高らか処暑の昼
ひきこもるドアの内にはましら酒
胸突坂急発進せよ山椒の実

秋の蚊のタピオカ吸えぬ細い口
秋鯵をかえす菜箸てらり晴れ
二両目に虫の声して聞き入れり
蘭の花弁透けるまで押し付ける
地虫鳴く交差点事故多発中
秋湿り手のひらの傷痛む神


久しぶりに店の焼鳥が食べたいです!!サポートしてください!