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10年ぶりのパリ vol.8 高級トイレ

宿からルーブル美術館まではのんびり歩いて15分くらい。パレロワイヤルを抜けるとすぐだ。パレロワイヤルには中庭を囲む回廊にブティックや画廊が並び、並木や噴水がある中庭では読書したり子どもを遊ばせている人がいっぱいいて何とも平和。アート作品も中庭に点在していて、のんびり散策するにはぴったりのロケーション。

・・・なはずなんだけど、パレロワイヤルの回廊を歩きだした辺りからどうもお腹の調子がおかしい。ゴロゴロゴロ・・・ぐるぐるぐる・・・。ああ、なんかヤバイかも。

これだけは声を大にして言いたいんだけど、結構色んな国に行ってる方だと思うけど、日本ほどトイレ事情が素晴らしい国はないのね。もう本当に心から賞賛したい。最近は駅だって汚くて臭いところなんて少ないし、高速のSAだってパウダールームがあって便座もホカホカだし、街中だってデパートやショッピングビルにいればキレイで快適なトイレがあるし、最悪急を要する時は数メートル置きにあるコンビニに駆け込めばいいわけで、つまり、そちらの問題で困ることはない。そしてそれが当たり前の世界で日本人は日々暮らしてるわけです。

でもひとたび海外に出たら、この平和な状況は一変する。すでに空港から、常に下の心配を頭の隅に置いて緊張感を持って生きる世界に突入する。夏に行ったデンパサールなんて、出来たばかりの新空港に到着して、「わー!ひろーい!ピカピカー!バリじゃないみたーい!」なんて散々心躍らしておいて、トイレ入って用足したら流すレバーが外れてた。げっ!と四苦八苦して流し、出た後に隣近所見てみたけど、どこも外れてて詰まって溢れてる個室もあった。2回目だけど空港できたばっかり。どんな業者が工事してるんだよと。どんなメーカーが作った部品だよと。

まあでも、レバー外れてても用が足せればことは済むわけだけど、恋の街パリはトイレがその辺にいっぱいあったりしない。日本だったらね、このパレロワイヤルの中に普通にみんなが使えるトイレがあってしかるべきなんだけど、まあないわけです。ひょっとしてどこかに使えるトイレがあったかもしれないけど、そもそも聞けるような人もいない。ちょっとヤバそうなお腹を抱えつつ、家族には平気そうな顔をして、でもそろそろ申告しておこうかと「あー、なんかトイレ行きたいかも?」とブツブツ訴え始めた。

でもことは意外にも急展開で、ルーブルに着いた頃には冷や汗が出てきた。この日は短い時間しか取れなかったので、行列に並んでルーブルを見る予定はなく、ルーブルのピラミッドを息子に見せて、そのままチュイルリー庭園を散歩してコンコルドくらいまで行ってみようか、というプランだった。けど、もうそんなに歩くなんて到底無理。どんどん状況が悪くなり鳥肌まで立ってきた。ようやく家族にも「一大事です!」と非常事態宣言をしてトイレを探してもらう。

ああ、そういえば、ルーブルの地下にはショッピングセンターがあったような…フードコートもあるしそこなら!と思いだし、体を引きずるようにして歩いてショッピングセンターに急いだ。いかにもトイレいっぱいありそうな雰囲気に一瞬ほっとするも、トイレの看板が全く見当たらなくて白目。随分歩き回ってようやく見つけたそこは、受付がある有料トイレだった。

海外ではわりと、有料トイレは珍しくない。と言っても数十円なのでまあ納得がいく。この時は色々気にしてる余裕がサッパリなかったのでバーッと払って入ったけども、そのお値段たるやなんと2.5ユーロ、300円以上!東京だったらチェーンのカフェでコーヒー飲んでもお釣りがくる。さすがに小ぎれいで不快感はなかったけど、日本のデパートのトイレに比べたら劣るレベル。私が入ったトイレの横には別の入り口があって、「ジャパニーズスタイルトイレ」と書いてある。どうやらウォッシュレットが付いてるもようだけど、3ユーロしてたと思う。使う人いるの?

とにかくそこで瀕死の状態から脱することができたのだけど、私が出たら旦那がすごい軽い感じで「俺もしとこっと~」と入って行った。自分が使った手前もあるし、ことがことだけに何も言えなかったけど、2人で5ユーロ600円以上というね。いや、小銭の話だけどさ、物には他と比較した適正価格ってのがあると思うからさ、すごい損した感は否めないよね。

(注)パリの有料トイレは概ね50サンチームくらい。