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アデル、ブルーは熱い色

フランスのコミックが原作だけど、ストーリーも違うし「青い髪の女の子」「同性愛」というエッセンスだけいただいた別作品という感じかな。そもそもの尺が長く、話題となったセックスシーンは早送りしたいくらい長くてお腹いっぱいになるんだけど、あのシーンがあるからこそ2人の関係もよりわかる部分もあって削るわけにはいかないのでしょうねぇ。

主演の2人にとって、とても辛い撮影だったようだけど、あのセックスシーン観てたらそりゃ辛いだろうなって思う。あれだけのものを世間にさらけ出す覚悟もだし、愛し合う2人の非常にプライベートな行為を何日も監視されながら撮り続けられるわけで、想像してみるだけで消耗するし、普通の神経ではちょっと無理だろうという気がする。

キャスティングがとても良くて、アデル役のアデル(本名)の弛緩した感じが素晴らしいし(天然?)、エマ役のレア・セドゥはもうびっくり。他にも色々出てる有名女優だけど、フェミニンで可愛いイメージから一転、めちゃくちゃイケメン。私も惚れそう。

原作者は女性の同性愛者で、原作はマイノリティ故の苦悩にもっとフォーカスしているようだけど、映画は同性愛であるということはわりとどうでもよいというか、観終った後そういえば同性だったな!くらいの感じで、もう思いっ切りの純愛。アデルは一目会った時からエマのことが好きで好きで仕方がない。その思いがただただ切ない。

アデルが初めてエマとすれ違うシーンは短いけど秀逸。レアセドゥの流し目と、惹きつけられてしまったアデルの表情。あー、もう恋に落ちちゃったよねって。あんな目見たら私だって恋に落ちる。私のようなノンケの女性から見ても色気がある彼女が、ミッションインポッシブルでダイヤ大好き!な女の子と同じ人だなんて。

一瞬で恋に落ちたアデルは、その後バーでエマと再会する。チラッと見て強烈に惹きつけられた相手とこんな風に再会することがあったら、それはもう誰だってそのまま突き進んでしまうのではないだろうか。そうしてお互い求めあって一緒に暮らすけど、満たされることなく寂しさがアデルを包んでいく。

そうなんだよね~。近くにいるのに寂しさは消えない。相手のことを好きであればあるほど、自分の思いが強ければ強いほど、寂しさは増していくものではないだろうか。こういう思いって満たされることはないのだろうな。いずれお互いの気持ちが形を変えていき落ち着くことはあっても、皆自分が主人公の人生を生きてるし、もっともっとと思う生き物だから。

よく「○○さんのどういうところが好きですか?」なんてバカな質問する人いるけど、恋に落ちるってそういうことじゃない。好きな人ならどんなところも堪らなく好きだし、嫌いな人なら何されても癪に障るもの。アデルはエマが○○だから好きなわけじゃなくて、もうただ何だか好きで仕方ないし、触れてみたらぴったりだったと言うだけ。エマだって、アデルがくちゃくちゃスパゲティ食べてても、自分とは全く違う堅実な生き方を選んでいても、可愛くて仕方ない。だからといってずっと一緒にいられるわけではなくて、人はちょっとしたことですれ違う。その辺りが、しっかり描かれていると思います。甘酸っぱい映画でした。