芝居の先生

通っていたレッスンでは毎週違う講師と呼ばれる人が来ていた。

もちろん人間だから、出会う先生に自分の中で好き嫌いを感じる時があった。

その中に私を先生と呼ばないでといつも言っていて

とてもはっきりしていて嘘がなく、怖くて強そうなのにでも涙もろくて

弱い感じもする女性の先生がいた。その人がなんだか好きだった。

その人のクラスは数回しか受けることができなかったけど、

毎回どんな要求がやってくるか想像できなくて、行くたびにまっさらで

向かっていた。きっと何かを取り繕ってもすぐ見透かされてしまうのが

わかっていたからだと思うけどとにかく少しの怖さと楽しみでいつも

その先生のレッスンに行った。

いちどレッスンのとき、台詞を覚えてなくていい加減な気持ちで人前に

立ったとき、目だけで怒られたことがあった。

それとはっきり覚えて無いのだけど、何かの課題をやっていてそれが自分自身と

リンクして涙が止まらなくなってしまったときその先生がそれを理解できると

共感してくれたことがあった。

何か心から感じていることは空気を伝って自然な表現の中で

わかってくれるんだと体感したことがあった。

とにかくその先生が好きだった。