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ARABIC JAZZ

先日書いた「PIANO TRIO FROM RUSSIA」の記事は、地味に読まれているようです。地味に読まれるぐらいで良い記事だと思います。

そのCDをサブスクで探して一通り聴いた後、〈アラビック・ジャズの人たちは今どうしてるんだろう?〉と思い、検索してみたら、サブスクにありました。


近年CDが売れないと言いますけど、サブスクでこのあたりの音楽、辺境で育った音楽にすぐアクセスができるって、素晴らしい時代だと思いますよ。

このアルバムは、ピアノの生徒がエジプト土産に買ってきて下さった。盤は実家にあるので今確認できませんが、中身も何が書いてあるか全然わからない向こうの文字。さすがにこれだと輸入して紹介されるのは難しいだろうなと思います。私が名前の読めないピアニストに当たりをつけてCDを書いまくっている時期だったので、生徒さんも珍しい盤は喜ぶだろうと思ったんでしょうね。

これがですね、聴いて頂いたらわかるとおり、西洋音楽の枠組みのなかでやってはいますが、頭で鳴っているベーシックの音が全く異文化。なんというか、西洋音階からどうしようもなく溢れ出てしまったとても強靭なものを感じて、自分も西洋コンプレックスの物真似ばかりしていてはいけないなあと思ったんですよね。
このアルバムは、ジャズという尺度で考えたら、技術や諸々で至っていないという面で相手にしないリスナーも多いと思うのですが、ミュージシャンとして聴いていると、この異国の不思議な生命力にとても感激する部分があります。良いお土産を頂いた。

当時、その生徒の彼女はご家族の仕事の関係で2年ほどカイロに住んでいたのですが、街で西洋音階はほとんどかかっていないこと、ピアノの調律もイスラエルから来てもらうとおっしゃっていたように記憶しています。ジャズフェスもあるけれど、ほぼイスラエルや隣国から来る演奏家ばかりだと。15年以上前の話ですから、今はどうだか知りませんよ。

私は20年以上ジャズ・ポピュラーピアノのレッスンをしていますが、コードを押さえる時に、音名からドレミファソを探ってそこで見つけたドとミとソで最初のベーシックなコードを作るのよ、と言って、作れなかった生徒がまだ一人もいないんですよ。
これって物凄い洗脳じゃない?と常々思っているのですが、当時彼女が過ごしたエジプトの環境で育ったなら、きっとこうやってハーモニーを作ることはできないと思います。

「Arabic Jazz」の別の盤も一緒にご紹介。


「なんか変」「面白い」で片付けることはすぐできると思います。
しかし、極東で鎖国も長かったこの国で、ある時突然開国し文化を輸入し敗戦して、西洋音楽を当たり前のもの、音楽の前提としているって、結構変なことだと思いますよ。自分は音痴とか、楽譜が読めないとか言いながら、もれなく全員ドレミがわかるって、どう考えてもおかしい。

結構前からそういうことは考えていて、そもそも私がピアノ奏者ということで完全なる西洋音階の奴隷でしかないからなのですが、ジャズをやっていると「ギターとコントラバス」「サックスとサックスとドラム」「歌とコントラバス」など、ピッチは自分で決める楽器同士で演奏する自由なものも沢山聴いてきており、そのゆらぎのアンサンブルと面白さも体感してきているので、私の中に「私も解放されたい」という意識がずっと集積しているのです。
ゆえ、昨年冬からその点を乗り越えることを目標に新しいトリオを始めたのですが、少しずつ良いように音楽の別の考え方を試していけるよう、試行錯誤しています。

アラビックジャズのアルバムを聴いていると、全くもって西洋音階の奴隷じゃないですよね。だから興味を持ってずっと気に入って聴いていたのだと思います。

この本にも出会って良かったですし、とても助けられました。




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