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ドローンで利用解禁された「5G」

リアルタイムの映像通信が不可欠なFPVドローンでは2.4G帯は遅延が大きいため、5.8GHz帯で通信をしています。
電波法では気象レーダー等への電波干渉の恐れがあるため、屋外のドローンショーで5GHz帯を利用することは禁止されています。

しかし、2023年8月にドローンショー・ジャパンがドローン安全推進協議会とガイドライン策定に併せて、日本の電波法では屋外での利用制限がある5GHz帯の無線LAN通信における実験局をドローンショー分野で国内初の開局を実現し、都内での900台のドローンショーを実施した実績があり、これから5GHz帯の利用も広がるのではないかと思います。

今回のドローンで利用解禁された「5G」は携帯電話回線でいう「5G(=5 Generation)」のことです。

もともと、2020年12月、ドローン機体を4Gや5Gといった携帯電話通信網に接続するしくみが整備されました。日本では「5G」の商用サービスが始まったのは2020年春と日が浅く、基地局の整備も都市部を除いて広がりが遅いため、ドローンでも4G-LTEが主流で使われています。

もちろん、ドローンの飛行にはインターネット通信は必要ではありませんが、いくつかの場面はインターネット接続が必要になります。例えば、機体・送信機のアクティベーションや機体・送信機のファームウェア更新ではインターネット接続が必要になりますが、屋内でも可能な作業のため、特に携帯電話通信網を利用する必要はありません。

しかし、オペレーターがドローンの動きを一時的に監視および制御するような遠隔操作と制御の場面では屋外が想定されていますので、携帯電話通信網を利用したインターネット通信が必要になります。

能登半島地震のような災害現場の映像をいち早く確認するためには、ドローンによる上空からの現場侵入が迅速な事態把握に役立ちます。高所や鉄道の線路上などの危険が伴う場所へ人を派遣するよりもドローン投入により安全に必要な作業ができます。

ここで大切になるのがデータ通信速度です。映像の画質もこれまで720p程度だったものが、1080p(フルHD)や2160p(4K)と高画質化が一般的になり、遅延が少なくリアルタイムで映像を転送するには4G-LTEではすでに限界が来ています。

4G-LTE通信では、データ転送速度が下り1Gbps(=125MB/s)・上り100Mbps(=12.5MB/s)であるのに対して、5G通信は下り20Gbps(=2.5GB/s)・上り10Gbps(=1.25GB/s)と10倍以上の速度になります。これにより、今まで難しかった高画質映像でのリアルタイム把握や大容量データを短時間で受信できるようになるため、迅速な対応が安全に遠隔操作で行うことができます。ドローンにより高画質映像をリアルタイムに把握できるということは、スポーツ中継などで今まででは考えられないような映像を提供できるようになるはずです。

2020年の5G開始から富士通が実証実験をしていた「ローカル5G」はすでに実用的なレベルではありますが、上空での利用は認められていませんでした。もちろん、「ローカル5G」ですから、制限されたエリアでの使用に留まります。

今回のドローンの5G利用の解禁は、このような制限がなく、スマホと同じ感覚で5Gが利用できることに大きな価値があります。

この5G利用解禁を受けて、2024年1月27日、KDDI株式会社とKDDIスマートドローン株式会社は5G SA(=5Gスタンドアローン:auが提供するコア設備や基地局なども含めて5G専用の技術と設備で構成した5Gサービス)の上空向け商用サービスの提供に向け、ドローン専用ネットワークスライスを用いたドローンの飛行実証を実施しました。

ドローンの空撮映像をKDDIスマートドローンの運航管理システムに伝送し、混雑した通信環境においても安定伝送できることが確認されたそうで、商用の5G無線局免許に基づき、5G SAを使用してドローンを飛行させるのは国内初のことです。

5G通信を利用したドローン事業は、社会に大きく貢献できる技術であり、これから他の通信キャリアも実証をしたり、DJIなどのドローン販売企業も5G対応したドローンを国内販売するのではないかと、今年のドローン界隈に期待するばかりです。

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