【第四回円錐新鋭作品賞応募作】パノラマ式

パノラマ式/未補

半円のねむりを梟のよぎる

冬空をまぜて陶器になる目玉

まどろみの座礁に耽る冬銀河

狐火を交わす呼吸をするために

行き暮れて白鳥の眼に腕を巻く

雪晴やパノラマ式の双子産む

鮫を飼う世界をサボる言い訳に

潮花のふくらみ月面の気もち

まえぶれを薄めてひらく冬すみれ

春隣椅子取りゲームだけ弱い

画布の雪虫を通り抜ける視線

まなざしのひかりのなかへミモザ消ゆ

ものもらい二月は砂に会いたがる

春風やてんてこ舞いの筆記体

土星の輪模写して春のすべり台

真夜中の凧は名前を言っている

永き日の抜けない指輪などのこと

遠くから唇がくる潮干潟

風船を知った空から過去へゆく

逃水の裾を掴んでいるような


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