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有無谷六次元さんとのいちごつみ。

今年の1月から2月にかけて、有無谷六次元さん(@umu_6_D)といちごつみをしました。
遅くなりましたが、まとめです。

1.生き死には等しく無価値 猫の尻を縫って目指すは星の真ん中/有無谷六次元

2.白昼夢にひらく瞳孔縫っている警官の目は底なしの夜/未補

3.「神経が絡まってます。警官の来ないドーナツ屋が並んでます」/有無谷六次元

4.穴のないドーナツ屋だと罵られ穴という穴あけて東風吹く/未補

5.緊箍児が東風に溶けても鯒面の女の前では眼鏡を外すな/有無谷六次元

6.おじさんにまずいセロリをあげるとき眼鏡にうつる死んだ蟷螂/未補

7.振り向けば鉄風荒ぶ焼け野原まちがって生まれセロリを咥え/有無谷六次元

8.でたらめの答案まちがっている名前リスニングから嬌声がする/未補

9.蚕刑を受ける間じゅう餞別として降ってくるぼやけた嬌声/有無谷六次元

10.真っ黒な足が雪夜を駆けてくるぼやけた音のギターで殴れ/未補

11.うふ、うフふ…… 日がな鉈振る蟻膚病の女の股から真っ黒い蜜/有無谷六次元

12.棄ててきたゆうべの股が喋ってる 今から寝ると言って燃やした/未補

13.呼吸器も棄ててかろやか眼窩に棲む狐面蜘蛛の背が囁くとおり/有無谷六次元

14.滝壺に入水の見出し「呼吸器をつけたままで」と載せてもらった/未補

15.かみさまはけだものが好きに違いない投身入水税がまた上がる/有無谷六次元

16.かみさまに罪を告白する前はえびの背わたをていねいに抜く/未補

17.贖剤の効きが悪いか おろおろと泣くきみの背骨を引っこ抜く/有無谷六次元

18.愛情の効き目が薄い 三度目のセックスでもう口枷をする/未補

19.清く在れとヂガヂガ瞬く濃い嘘霧に口枷したまま吐く痴嗅人/有無谷六次元

20.幕切れの前におしまい 嘘がほんとになってひとりも動かない/未補

私は、有無谷さんの短歌のファンなので、一緒にいちごつみをやらせていただいたのは、ほんとうに僥倖でした。
有無谷さんの歌には、生活感とか、共感とか、既視感とか、そういうものが一切ない。いつも見たことない世界が目の前に出現する。
独特の言葉の使い方、不気味でゾクゾクする造語(鯒面、蟻膚病、投身入水税…などなど)。
ときにSFのような、ときにホラーのような、何とも喩え難い世界観。
最初に読んだときは、たいていそれに怯んでしまう。分からないもの、はじめてみるものは、いつでもちょっと怖い。
でも、恐怖は人を惹きつける。怖いもの見たさ、なんて言葉があるように。

いちごつみを通してほんの少しだけ、六次元に足を浸してみるつもりだったのに、いつのまにかずぶずぶに嵌ってしまって、わたしはまだ元の場所に帰れそうにない。
(六次元はすべての宇宙を行き来できる世界らしいけれど、今どのへんを彷徨っているんだろう…!)

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