【俳句 2020年春】すこし買う

すこし買う 未補

心臓を置いてしばらくして焼野

夜に手をひらけばひとひらの凧は

手のなかに春がいなくて春の鹿

口中のくらやみ蜆汁まみれ

蟻穴を出るひとすじの傷となる

雨に目が混じりしずかな苗木市

対岸の人の薄目を雪崩かな

熊穴を出て空き箱をすこし買う

天国の対語はなくて春鰯

運命は濡れながら来る荷風忌も

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