寿司屋のカウンター

小さい頃よく寿司屋に連れて行ってもらった。
カウンターで食べる神田の江戸前寿司だ。
連れて行ってくれるのはじいちゃん。
じいちゃんの口癖は、

「こんなことは学校では教えてくれないからな」

入店前、横をみると
おばちゃんが裏方でシャリを切るように混ぜているのが見える。
ちょっとツンとくる甘酸っぱい匂いと湯気のたった寿司屋の裏風景。
暖簾をくぐると、
しっかりと手入れのされた白木のカウンター。
一人一人の前に大笹が敷かれ、
ガリが添えられる。

白身も鮪も旨いが、この店の一番は穴子。
白く蒸された穴子は、
魚網の上にのせられ炙られる。
ツメをかけて目の前に出される。

旨い以上の表現が欲しいくらい旨い!


「おじいちゃん、なんでタレのことツメっていうの?」
「これは‘煮詰め’のツメって意味だ」
「ツメが下に垂れないうちに食べるのが礼儀ってもんだ。」
「下に垂れるまで食べないなんてのはカウンターで食べる資格がない!」
「こういうことはな、学校では教えてくれないからな。」

そりゃそうだな。
子どもながらに納得。

そんな話しをしていたかと思うと、
店が人でいっぱいになってくる。
暖簾をのぞいて満員の様子を見て帰ろうとするお客が来ると、
「いつでも来れるんだからな、帰ろう。」
そう行って滞在時間10分くらいで出てきたこともある。
粋なのか、気が短いのか、気遣いができるのか

これも学校で教えてくれないけどね。

もっと食べたいなと思いながらも、
そんなことを思い静かに帰宅したことを今でも鮮明に覚えている。

常連は長い時間偉そうに居座るのではなく、

一見客を常連にしてあげるものなんだそうだ。

なるほどだ。

寿司屋のカウンターで、
学校では教えてもらえない教育を受けた 笑

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