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くしゃみの威力

 私の職場は、木造ワンフロアで天井が高く、声が響き渡りやすい。

 たまたま今日、仕事中に後ろの席の同僚が大きなくしゃみをした。

 喉からキャンっと声も出るくらいの大きなくしゃみ。それを手で覆うでもなく、本当に堂々と思いきりくしゃみをした。当然フロア中に響き渡った。

 私は瞬間に思わず振り向いて『もう少し控えめにしてよ』と笑いながら、軽くたしなめた。
 すると彼はひと言、『関係ないだろ』とぼそっと呟いた。

 え?そうなの??

 私は、混乱した。

 明らかに迷惑ではないのか?
 私は確かに彼に背を向けて座っているけど、あなたの前にも人はいる。それにフロア中に響き渡っているのだ。それが関係ない?

 モヤモヤした。
 実は前から彼のくしゃみは気になっていた。タバコを吸う習慣があり、そのせいか時々ひどい咳やくしゃみをした。私は、それを少しも遠慮せずに放つことが疑問でならなかったし、周囲の同僚が『またか』といつも苦笑しているのも知っていた。
それが、今日はあまりにも酷かったのだ。

 でも、そんな返しをされたが故に、急に私が指摘したことが過ちだったのではないかという不安にかられた。

 正しいことを伝える時ほど控えめに。というのは聞いたことがある。とすれば、私は言いすぎたのか。悶々として頭の中がぐるぐるし出した。

 無視すればよかったのか。いつものように周囲が我慢すれば済んだことなのか。

 私は、分からなくなった。正直、今も正解は分からない。

 くしゃみが悪いだなんて言ってない。
 それを私が指摘したことが間違えだったのか?と迷うことに戸惑いを感じている。
 私は一体どうすればよかったのだろう。今日はなかなか答えが出そうにない。


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