「恋とゲバルト」のこと

細野不二彦せんせいの漫画「恋とゲバルト」のあまりの素晴らしさを語りたくなったのでひとつ。ツイッターだとネタバレ配慮とかも必要なので面倒なのでこちらにまとめます。あ、基本はネタバレありですのでひとつ。


「恋とゲバルト」について

細野不二彦せんせいの連載漫画作品。
「ピッコロ」で2021年4月から連載しておりましたが、引っ越して講談社「コミックDAYS」で2021年9月~2022年9月まで連載中。現在、29話で第1部完。現在は第2部に向けて作者は充電中だと思われますが、なぜみなさんは「第2部はない」と思っているのでしょうか?(笑)

紙の単行本は講談社モーニングKCで5巻まで刊行中。ただし書店在庫はほぼ払底状態(増刷待ち?)のようなので、ヨドバシなりAmazonなりで電子書籍を買うのが吉です。単話ならコミックDAYSでも読めますが、全部読む前提であれば電書の単行本がいいと思います…。

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ものがたり

そもそもタイトルの「ゲバルト(Gewalt)」という単語がいまでは注釈が必要なレベルの単語なんですけど(笑)、学生運動の時代の1968年の天啓大学(架空)を舞台にしたフィクションです。
第1話の冒頭では東京大学・安田講堂事件(1969年1月)を描いているなど現実の日本との接点を持たせていますが、基本的にはセクト名なども含めて架空のものにしてあります。まあモデルはバレバレなんですが。

主人公・東儀ひろし

本作の主人公はこの大学の新入生である東儀ひろし。純朴な平和を愛する心の持ち主であり基本はノンポリであるものの実は古武道の達人であり、貧困家庭から右翼組織のバックアップを受けて進学したことでもあるため、体育会系の先輩を通した指令が出るなり正体を隠した謎の剣術使い「猿面の男」(悟空)として活動にいそしみます。すなわち主な任務は左翼の排除(物理)になります。
学内左翼セクト・革狼派の事実上のリーダーである策士の青年・公方に心情的に共感しつつあるものの、いまのところ右翼活動に疑問を感じている様子はありません。鉱物好きであり、大の虫嫌い(重要)。
次に述べるヒロインの美智子に露骨に一目惚れして恋愛感情を抱いていますが、29話の時点でその正体が「赤い北斗」であることにはまだ気がついていません。

ヒロイン・北条美智子

本作のヒロインは東儀が騒動の折に学内で出会った園芸部の眼鏡巨乳の美少女・北条美智子。東儀より1年先輩の19歳。
一見すると可憐な美少女ですが、実は高い戦闘力の持ち主であり公方(前述)の指令を受けるなり、男装で正体を隠した戦闘員「赤い北斗」として活動にいそしみます。すなわち主な任務は右翼の排除(物理)になります。家庭環境もあり思想的にも左翼に共鳴しています。
公方に恋愛感情を抱いているのを露骨に公方に利用されていますが、いまのところそれを直視したり左翼活動に疑問を感じている様子はあまりありません。大の虫好きというか狂気を感じさせるほどの食虫趣味
美智子が東儀の自分への恋愛感情にどこまで自覚的であるかは不明瞭ではあるものの、美智子の恋愛感情は公方に向いているので、東儀についてはノンポリの「かわいい後輩」という認識にとどまっているようですが、園芸部の労働力、および左翼のパシリ要員として東儀をオルグしようとドス黒く狙っています。29話の時点で、東儀の正体が「猿面の男」であることにはまだ気がついていません。

物語の構図と展開

上でまとめたように、主人公とヒロインの2人の立ち位置を書くだけですでにお腹いっぱいだと思いますが、あくまでストーリーの主軸は公方やその他の人間との虚実乱れた当時の学生運動であるので、これからこの物語がどういう正体隠蔽系陰謀絡みの展開を見せるのかは、どこから破綻しても不思議ではない緊張感を含めまったく予断を許しません。

控え目に言ってもとても面白いので、ぜひ細野不二彦せんせいには早く第2部の続きを希望してやみませんが、なぜみなさんはここで「打ち切り」だの「第2部はない」だの言うのデスカ?

細野不二彦せんせいへの宿題

「第1部完」の29話までのあらすじはここで述べた通りなのですが、このラストは第1話の冒頭の安田講堂のシーンとはまるでつながっていません
むしろこの第1話の冒頭を「最終回」のラストシーンに持ってきても良いくらいだと思われますので、細野不二彦せんせいにはきちんとこれを埋めていただきたいとも思っています。少なくとも次の内容が期待されます。

東儀が、美智子の父親を殺す

虚実乱れる本作なので、必ずしも東儀が物理で美智子の父親を殺している必要はないのですが、少なくとも「そういうことにした」顛末は必須です。
細野せんせいの構想には入っていると思われますので、少なくともこれだけは描いて貰わないと(笑)

美智子が東儀をオルグする

いまの細野先生なら性描写もOKなので、そこのところをひとつ余すところなく肉体オルグありで。

東儀が右翼運動から心情的に離れる

美智子のオルグの結果として肉欲と理想の狭間で東儀が苦悩しても良いですし、単純に右翼思想に疑問を抱いてでもいいです。安田講堂でも右翼側の戦士であるので、もしかしたら最後までずっと心情的にも右翼のままかもしれませんが。美智子の父親を殺してしまったのでもう美智子のいる左翼側には行けないとかいう苦悩の展開もアリです。

美智子が左翼運動から心情的に離れる

美智子が「自分は公方に利用されているだけだ」と気が付いて恋が冷める瞬間は確実に来ると思います。すでに導火線に火はついています。
この結果、東儀の恋心を受け入れて愛欲の日々に走るのもOK。
左翼思想に疑問を抱くかどうかはわかりません。安田講堂でも左翼側の戦士であるので、もしかしたら最後までずっと心情的にも左翼のままかもしれませんが。

2人が互いの正体に気が付く

あとは何と言ってもコレ(笑)。ぜひ細野先生におかれましては、ここを描ききっていただきたく。


こんなところで。






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