「屋根の太陽光パネルは感電の危険があり消火の妨げになる」という話について
概要
さすがにそれはデマじゃないんですかという話をまとめます
危険だという主張
いつ頃からどこで出てきた話か裏を取ってないんですけど、太陽光発電というものをネガティブに捉える人の中から出てきた話として、その否定材料のひとつとして「この話」が囁かれていることに少し前に気がつきました。
だいたいこんな内容の主張かなという認識です。
太陽光発電パネルは明るければ発電をし続けて止められない
従って炎上崩壊中の家屋であっても周囲に放電し続ける
消火作業で大量の水を使うことで、それが消防士に伝導感電する危険
(結論)屋根に太陽光発電パネルをつけると消火活動の妨げになる
正直なところ「よくこんな与太話を考えたものだ」「事実を一部含んでいるデマというものは一部の人に受け入れられやすいのだろうなあ」と思っています。以下、反論を並べて結論に入ります。
(反論1)消防士が感電した事例はあるんですか
あるなら提示して欲しいです。「可能性がある」だけの話じゃなくて。
自分で検索した限りでは、太陽光発電パネルと感電の事例については「設置工事中の作業員がビリっとした」という話は報告されているのは読みました。
うんまあ、僕も冬の乾燥した時期にドアのノブで静電気がパチッとするような経験は何度でもありますね。で、あれってそんなに危険な話で、消火活動中の消防士がその行動を躊躇させるほどの話なのでしょうか。
(反論2)消防士は感電対策してますよね
消火活動中の消防士の服はもともと感電対策をしていますよね。
太陽光発電パネルがあろうがなかろうが、もともと炎上崩壊中の家屋に大量の水をかけたり、時には近寄ったり中に入ったりするのがお仕事で、そこにはむきだしの送電線や半壊した電気製品とかもあるんですから。
で、太陽光発電パネルは、それらに比べて何か特段の危険性でもあるものなのでしょうか。
(反論3)それ感電事故になる電力なんですか
この話をする人が必ず枕にするのが「太陽光発電パネルは明るければ発電をし続けて止められない」という話なんですが、僕はこれ「事実を一部含んでいるデマってのは拡散しやすいよね」と思っています。
そりゃまぁ、それは事実でしょう。で、僕は数字を持ってませんけど、いったい全体太陽光パネルはどれだけの電力を日々発生させていて、それはどれほど人体にとって感電の危険があるほどの膨大な量なのでしょうか。
日本の住宅の屋根にとりつけた程度の大きさのパネルが、日本の普通の陽光があたっている間は人間にとって危険なほどの電流を放出し続けているものなら、それはとても素晴らしい変換効率の夢のエネルギー源なのではないのでしょうか。そこまで素晴らしいものでしたっけか、太陽光発電。
僕は馬鹿馬鹿しいから真面目に計算してませんけど、たぶん消防士の感電が問題になるとかあり得ない量の電流だと思いますよ。ご家庭のコンセントに指を突っ込んだとかいう話じゃないんだから。
あと「途方もない太陽エネルギー」という点で、アニオタの僕は機動戦士ガンダムのソーラ・レイのこととか思い出すんですけど、あれは超巨大サイズの鏡をたくさん配置して、それを一点に瞬時に同期させることで破壊的なエネルギーを産むんですよね…。
とりあえず、感電の危険が!とか言うひとは電力の数字を出してください。
(反論4)それは導入反対の理由になるんですか
以上から、自分はそもそも「消防士が感電するというのはデマ」扱いでいいと思ってるんですけど、仮に「その危険がゼロではない」としても、それは導入を躊躇すべき理由になるものなのでしょうか?
だってそれ、仮にあったとしても消防車が出動するレベルの火災時の話ですよね?
ぼくら、たとえば「地震などの災害時に切れた電線には触るな」というのは事実であるし徹底すべきですけど、それを理由に「電気は危険だから家庭で使うな」と主張するひといる?いないよね。
これを理由に反対するのは無理だと思います。
結論:太陽光発電を否定したいなら別の理由にしましょう
僕は日本での太陽光発電の導入に頑なに反対するひとは、あるいは原発を推進したいからという邪な動機とかではなく「日本の太陽光発電の補助金詐欺は許せない!」とかいう義憤にかられてのことなのかもしれません。あるいは「日本の山の森林を切り倒して太陽光発電パネル設置とか馬鹿げてる」とかいうのが理由かもしれません(僕もそう思います)。
でも太陽光発電に反対するにしても以上の理由から「消防士が感電するから」というのは主張のダメさを強調するだけなので、理由にいれないほうがいいと思うのでした。
2022.6.28補足:アスクル倉庫火災について
ご指摘がありましたが、2017.2.16に埼玉県のアスクル倉庫で発生した火災で報道された記事を読む限りでは「太陽光パネルで消防員が感電する危険」というのは一応「発生し得る」話なので「それはデマです」と断定までするのは適切ではないようです。この点はお詫びして訂正いたします。
詳細は記事をお読みいただきたいと思いますが、記事のポイントはこのへんでしょうか。
ドイツで過去に消防士が感電死した事例が発生
倉庫という大規模パネルを屋根に設置した発電システムでの火災
発電システムを遮断してから消火作業に入った(=危険と判断できる大量の電力を発電できていたと思われます。170世帯分とあります)
屋上パネルに対する「棒状注水」の禁止(水が地上への導線となる危険があるということだと思います)
この火災で感電死した消防士などはいません。
「ドイツで消防士が死亡」事案の詳細は不明なのですが、あるいはダメなことを全部やってしまったのかもしれません(たとえばシステムを遮断しないまま防電が不十分な装備で棒状放水をしたとか)。
この意味では、なるほど「太陽光パネルは消火作業の際に消防士を感電させる可能性がある」までは「デマ」とは言えず「事実」であるようです。この点は重ねて、お詫び申し上げます。
ただし上記の記事でありますように、この事故後の検討会での結論は「この会合において、太陽光発電システムに関して、今後の課題として取り上げられた点はなかったという。」なんです。
つまり「なるほどこういう危険の可能性があることが判明した。なので今後はこの危険性を認識したうえで適切な消火作業を行おう」という話であって、どう読んでも「太陽光発電は危険だからダメ」という話ではないです。
なので本ブログの「太陽光発電を否定したいなら別の理由にしましょう」という結論は変わりません。それは「太陽光発電」の導入を否定する理由にはなり得ず、それだけを連呼するのはデマ…ではないかもしれませんが、もはやなんの議論にも値しない反対理由だと思います。
(おしまい)
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