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カラフルかつパワフル

映画館で『ゴーストワールド』を観て、その日のうちにまんまと鮮やかな色の服を買った。この冬の私には明らかに色が足りない!

とびきりカラフルでパワフルなものを観るぞ〜と出かけたものの、思いのほか苦しい余韻が続く映画だったな。この作品のことは「あの2人」の物語だと聞いていたけど、いや、これは主人公ひとりのお話じゃん……。
彼女のことをすてきだとか痛いなとか不憫だなとか色々に感じはしたけど、それにしても、自分のお気に入りメンバーに囲まれて生きることの幸せよ。そしてその危うさよな。親密な人と自分をどちらも大切にしながら親密であり続けることの難しさを噛み締めるしかない。

たとえば並んで一緒に歩いてくれる人がいたとしたらそれは本当に心強くて愛しいだろうけど、並んでいると思ったら偶然同じ道を歩いていただけで、分かれ道に差しかかったらその人は呆気なく先へ行ってしまうかもしれない。自分が心を寄せている限りこちらから手を放すわけにはいかなくて、でもだからといって自分の居場所がいつまでも保証されるわけではないんだよな。一緒でなくても相手は特段よかったらしい、と気づくことはとても淋しくて恥ずかしい。
それで他者とか世界を嫌いになるんだけど、それは自分を嫌になることと表裏一体だという気がする。そうだとしたら『ゴーストワールド』とは自分をゴーストのように感じる世界の話なのかもしれない……。色鮮やかな服を着た彼女がとぼとぼ歩くシーンとか、本当にたまらなかった。


この映画で私は何回でも苦しくなれると思うけど、やっぱり憧れも感じる。カラフルでありパワフルであることはかなり魅力的に映る個性なんだと思う。でもそれを純粋な彼女らしさと素敵がっていいかどうかは微妙だ。そう捉えることが彼女を孤独にしてしまうかも……というのは、人のカラーなりパワーは他者と関係するなかで一緒に作りあげられたものだったりもするから、その人にしてみれば「自分は他者あってこそユニークだ」と思えるのもいいような気がする。