書く習慣 1ヶ月チャレンジ 27

Day27 誰かに言われた大切な言葉

このお題を見て、まず浮かんだ言葉があります。
それは“(自分が)誰かに言われた大切な言葉”ではありませんでした。

その言葉をわたしはテレビの前で聞いただけ。
それなのに自分が言われたわけではないのに、その言葉に勝手に救われて、自分にとって大切な言葉になりました。

自分が言われた大切な言葉のことを書く。それが本来のお題ですが、今日はお題を勝手に少し変えて、“自分が言われたわけではないのに、大切な言葉” のことを書かせてください。

春だから……。


OK!がんばってね!
がんばろうな
がんばろうな

HIDE(X JAPAN)

1995年末、東京ドームでのライブの後、メイク・ア・ウイッシュという団体を通じ、難病とたたかう自身のファンと対面したX JAPANのギタリストHIDEさんが発した言葉です。

HIDEに会いたいと願ったのは、世界でも20数例しか報告されていない難病とたたかっていて、近々お姉さんからの骨髄移植を受けることが決まっている、まゆこさんという中学生の女の子でした。

まゆこさんとHIDEさんの対面は、『メイク・ア・ウィッシュを通じて、子どもたちが夢をかなえる瞬間に迫った』というような、1時間半か2時間くらいの特集番組の中で紹介されたエピソードのひとつでした。


番組ではまゆこさんの病気の説明と、学校で授業を受けたり、クラスメイトと談笑する様子や、対面の際にHIDEにプレゼントするマフラーを編む姿が紹介されていきます。

X JAPANの大ファンで、特にHIDEが好きなまゆこさんの部屋にはたくさんのX JAPAN、そしてHIDEのポスターが飾られていました。

病気の関係で、話すことや身体を動かすことなどがスムーズに出来ないまゆこさん。けれど自分が出来ることは自分でやるし、出来るか分からなくても挑戦をする。なによりもニコニコと親しみやすい笑顔を絶やさないまゆこさんに、当時小学生だったわたしはすぐに魅了されました。

このまゆこさんっていうお姉ちゃんかっこいいな。まゆこさんの夢がかなって、大ファンのHIDEという人に会えますように!

夢がかなったからテレビで紹介されていると分かっていても、対面の様子が流れるまで、何度もどこかに祈ってしまうくらい、まゆこさんに夢をかなえてほしいと思いました。

ただまゆこさんが会いたい人である、HIDEという人の第一印象は、うわぁぁぁ派手!なんだか怖そう……でした。

なにも知らずに我ながらひどい。
HIDEさんごめんなさい!!

言い訳をすると当時は平成初期だったものの、周りの大人からひと昔前の価値観を聞かされて育ち、世の中のことを知らないというのか、小さな世界が全てだと思っている小学生だったから……。HIDEさんは今まで見たことのない、自分のキャパシティを超えた、それはそれは強烈なヴィジュアルをされた方だったのです。


さて話を戻しまして、HIDEって人は派手だ、怖そうだと思ってしまったものの、番組が進みライブに集まったファンの皆さんの楽しそうな様子や、実際にライブの盛り上がっている様子を見ているとわくわくもしていきました。

そしてライブが終わると、いよいよ対面の時がやってきます。対面する部屋(控え室?)に入ってからは、その部屋にいる人みんなが緊張した面持ちに見え、部屋の中がピリピリしているように感じました。


けれどHIDEさんが入って来た途端、部屋の空気がふわっと柔らかくなります。

HIDEさんは前からずっとそう呼んでいたかのように「まゆちゃん」と呼びかけてニコニコ笑っていました。

あれ?この赤い髪のお兄さん、ちっとも怖くないぞ?!HIDEさんは、まゆこさんをまゆちゃんと呼び、自分のことはおっちゃんと称して楽しそうに話をしています。

まゆちゃんとおっちゃんは、憧れのスターとファンという関係のはずなのに、垣根のない、同じ目線で話している仲良しのお友達とか、兄を慕う妹と、そんな妹が可愛いお兄ちゃん、そんなふうに見えました。

この2人のこと好き。最初から好印象だったまゆちゃんはもちろん、ボソボソっと話し、ふわっと笑う姿を見てからは、HIDEさんにもどんどん好印象を抱き、目が離せなくなっていきました。

対面の時間も終盤に差し掛かった時、まゆちゃんがHIDEさんにひとつお願いをします。

「入院するけど、手紙を書くのでお返事ください」

耳をたかむけて聞いたHIDEさんは、笑顔で明るく返事をしました。

「OK!がんばってね」

そのあと続けて

「がんばろうな」
「がんばろうな」

まゆちゃんをじっと見つめ、うなずながらさっきよりも真剣な顔、そして小さいけれど強い声で言います。

そして2人は笑い合っていました。

どんな意味を込めてHIDEさんが、「がんばってね」のあと「がんばろうな」と言ったのかは、HIDEさんにしか分からないし、2度目の「がんばろうな」は、マイクがなかったら聞こえなかったんじゃないかと思うくらい小さな声に感じました。

それなのに、気付いたらテレビ画面を飛び越えて、あるいは突き破ってわたしの心に刺さっていました。「がんばろうな」までの2人のやりとりを全部を引き連れて。


テレビ越しには温かい言葉に感じたのに、刺さった言葉は、火傷するくらい熱くて、熱過ぎて痛くて、テレビの前でしばらく動けなくなりました。

けれど一瞬の痛みの後、ものすごく優しく効いていきました。傷をそっと覆う絆創膏をもらったような、真っ暗な夜道で迷っていたら、月明かりで帰り道がぼんやり見えたような。

そーっと、静かに、こっそりと。だけどものすごく救われたのです。正確には、テレビの前でわたしが勝手に救われていました。

自分が経験していないのに、言われたわけじゃないのに、救われる。ものすごく不思議な体験でした。

当時のわたしは「がんばれ」と言われるたびに落ち込んでいたのに。自分のために言ってくれていると思おうとしても辛くて仕方がなかったのに。

「がんばれ」と言われるたびに、心が血だらけになったような、真っ暗な夜道で迷子になっている気分になって、人が言われているのを聞くのさえも正直辛かったのに。

だから最初に「がんばってね!」と、まゆちゃんにHIDEさんが言った瞬間、あぁこの人もがんばれって言うんだ……と勝手に落ち込みかけたくらいです。

それなのに、気づいたら救われていた。自分が言われた訳じゃないと分かっているのに救われてしまった。これはもう、なんじゃこりゃー?!な体験でした。

この日までHIDEの存在すら知らず、第一印象は怖い!だったのに。言葉が刺さったあと「この人、この人間好き」、「こんな大人になりたい」と思っていました。

その思いが大人になってかなりの年数が経った今も変わらないなんて想像すらしていなかったし、今でもびっくりしています。


ただ当時は衝撃のあまりHIDEさんやX JAPANの音楽活動を追いかけることを全く思いつがなかったことが少し悔やまれます。

今日見たことをずっと忘れないだろうなと思って、それで大満足してしまったことをちょっと後悔しつつも、それでもこの日、1996年1月のことはこの先もずっと忘れないし、この2人と出会えて良かったとこの先も思うんだろうなと思います。


4月もあと数日で終わり、5月がやってきますね。5月2日はHIDEさんの命日です。

わたしが勝手に救われて、2年ちょっと過ぎた1998年5月2日午前8時52分、HIDEさんはこの世界から突然旅立ってしまいました。

そのことを知った1998年5月3日のこと、この人の置いていった音楽を聞いてみようと決めた5月7日(築地本願寺でお葬儀が行われた日)のことも、1996年1月のあの日と同じくらい今も鮮明に覚えているし、ずっと忘れない気がします。


まゆちゃんはHIDEさんが旅立った後も病気とたたかい、X JAPANの復活、SUGIZOさんの正式加入を見届けて、2009年9月にこの世界を旅立たれました。

どこかの世界で、まゆちゃんとHIDEさんが再会していたらいいなぁ、再会していてほしいなと勝手に願っています。

もし再会したら、今度は「がんばったな」って、まゆちゃんにHIDEさん言いそうだなとか、もうすぐhide with spread beaverのライブがあるし、ライブの後で「どうだった?」、「楽しかった!」なんて、あの日みたいに2人が笑って話していたらいいなと想像してみたり。

しかし“おっちゃん”のHIDEさんは若いまま。それなのに、勝手に救われた小学生のわたしは今じゃ“おばちゃん”です。この世界での年齢だけは、HIDEさんよりわたしの方が年上。なんだか変な感じです。

それでも、相当大きくなった今も、がんばれない時には、あの日のまゆちゃんと“おっちゃん”に絆創膏をもらったり、月明かりに真っ暗な夜道を照らしてもらっている気がします。

それでも、どうしてもがんばれない時も時にはありますが……。それでも、2人に救われていて、これからもずっとずっとあの日見た光景は大切な記憶の欠片です。

がんばろうな
さぁ、今日もがんばって生きましょう!!せっかくこの世界で生きているのだから。

おしまい


と見せかけて、もう少し続きます。
……なぜ?!?!


ここからは、HIDEさんとまゆこさんのお名前の表記について勝手に言い訳?解釈?コーナーです。

今日取り上げた言葉と出会った時、X JAPANのHIDEとして紹介されていたので、今回は大文字のHIDEで統一。また当時の自分が、この人はHIDEさんと覚えたので、主にHIDEさんと表記しました。

HIDEもhideもどっちの表記のひでさんも好きです。敬称略、ちゃん付け、君付け、兄つけ、ヒデラ、松本、松本秀人、赤い髪のエイリアン……色々な名前で呼ばれるひでさんが好きです。

わたし自身、普段はその時々好きなように呼んでいます。

なのでこの先、またHIDEさんの話題をnoteに書くことがあれば、今回とは違う表記をする可能性も大です。

まゆこさんは、この対面の後日談、HIDEさんが旅立たれてからの特集番組の取材などにも協力されていて、名字を含む漢字でのお名前表記を公表されています。

個人的なnoteといえど、お名前を出すからには、正確なお名前表記で書かないと失礼に当たるかな?Mさんとか伏字の方がいいかな?など、お名前の表記をどうするかをHIDEさん以上に考えたのですが、あの日のわたしの記憶が、HIDEさんの呼びかけた“まゆちゃん”という名前の響きが強かったので、このnoteの中では“まゆちゃん”、“まゆこさん”と、ひらがなでの表記としました。

もしおふたりの、特にまゆこさんのお名前の表記に「ん?」と思われる方がいらしたら、ご容赦いただけると幸いです……という言い訳でした。

今度こそおしまい


もしサポートをいただいたら……いただくことがあったら……どうしましょう??どうしたらいいのでしょう??その時に考えまずでも良いですか?