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【突撃!ナレトーーク】第1回 公文のぞみさん(前半)

ナレーター界を盛り上げるべく始動したメディアプロジェクト『HITOCOE』
ナレーターのさかし(坂下純美)あこ(甘利亜矢子)が、これからナレーターの皆さんのライフスタイルや人生観、それぞれの働き方を紹介していきたいと思います!

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東京都内在住の公文のぞみさんは、

二人の重度障がい児を育てながら働くママさんナレーター。
高級感と柔らかさのある声が持ち味で、現在はココナラやランサーズといったクラウドソーシングサイトでもプロ認定の実力でランキング上位に位置し、宅録ナレーター界のトップを常に走り続けている。
AmazonやNISSAN、TSUTAYAなど大手企業のナレーション実績多数
地上波TV放送にも対応できる高音質の収録環境を整え、宅録ナレーションの可能性に本気で向き合うその原動力は「二人の子どものため」と、熱い心の内を語ってくださいました。

公文のぞみさんのツイッターアカウントはこちら

第1回目は、ナレーター・公文のぞみさんの働き方にせまります!

ライフスタイルが変化する中で、リハビリの気持ちで宅録ナレーションを開始!

さかし:ナレーターは一人での仕事が多く、なかなか交流の場がありません。そこでみんながどういうきっかけでナレーターになったのかなぜこの働き方を選んだのかなどをナレーターみんなで共有できれば、それぞれ良い刺激になるのではないかと思い、このインタビューを企画しました。子どもがいるママさんナレーターの方も多いと思いますが、バリバリ働いている人もいれば、時間調整しながら働いている人もいて…働き方っていろいろありますよね。

公文:ナレーターって「短時間で働ける」というのがとても魅力的ですよね。スタジオに行ったらCM収録とか5分で終わったりして。でも実際には仕事をもらうためにボイスサンプルを作ったりしなきゃいけないし、営業もしなくちゃいけない。

さかし:公文さんは、どういった経緯でナレーターの仕事に就かれたんですか?

公文:20代前半、広告制作の会社に入って2年目くらいの時に「声の仕事がしたい」と思って学校に通いました。卒業する時にいくつか事務所がオーディションをしに来てくれて、そこでCMナレーターの事務所に受かり、その後細~くやってました(笑)
でもCMのナレーター事務所っていろんな声の人が必要でたくさんプレイヤーを抱えているから、あまり仕事が回ってこない。その頃の会社の仕事がディレクター兼コピーライターでした。この仕事、まあ徹夜が多い。徹夜明けって絶対声が出ないから困ること多いかもな、と思いながらも続けていました。
それから広告の仕事をやめた後くらいに、超大手の芸能事務所が声の部門を立ち上げるという話を聞きました。そこの事務所には知り合いがいたこともあり、そちらに行きました。でも結局、声の部門は立ち上がらなかったんです。
それで一旦声の仕事は辞めて遠のいていました。
その後、障がいがある子が生まれました。そうしたら育児が結構大変で、家から出られない状態が6、7年続きました
うちの子どもには、ちょっと物音を立てるだけでビクッてしちゃう障害特性があったので、家の中ではいつもヒソヒソ声でしゃべっていて…皆さんが日常生活で出すくらいの声すらも出せない生活でした
そんな生活を送っているうちに、スーパーのレジでも聞き返されるくらい声が出なくなってしまったんです。
それで最初は、社会復帰のリハビリのつもりで宅録を始めました

さかし:自分の声のリハビリのために。

公文:6、7年家から出られないと、老化がスゴい(笑)
声も出ないし、体力も衰えて、つま先が上がらなくてちょっとした段差にもひっかかるし。だから、人間生活としてのリハビリを、子どもも落ち着いてきたしやってみようと思ったんです。
その頃にYouTubeを見ていて「素人の人かな?」と思うような人が広告ナレーションをやっているのが流れてきました。
それで「これなら私もできるかも。やってみよう!」と思って、仕事と思っていないくらいのレベルでやり始めました。

本気になったきっかけは重度障がいをもつ子どもたちのため

さかし:機材を買って、宅録ナレーションを始めたんですね。

公文:最初はとても安い機材で、全て込みで1万5千円ぐらい。マイクはUSBマイクでした。音質は悪かったと思うけれど、ちゃんと普通に録れました。それを1年ぐらいやってみて意外と需要があることに気づき、YouTube以外の仕事も任されるようになってきました。「これは仕事になるかも!」って思って、いろいろ機材などに投資し始めたのもこの時期です。
その時はシンプルに「社会との接点が楽しい!」みたいな気持ちもありました。人としゃべることもなく、メールも来ないし、送らないしっていう生活を7年くらいしていたから「なんだろう、このイキイキとした感じ!メールが来る!」みたいな(笑)
「社会と繋がっていて、家族以外としゃべる、すごく楽しいこれ!」ってなって。別にナレーションじゃなくても何でもよかったんだけど(笑)

さかし:それがたまたまナレーションだったっていう。

公文:そうそう。それで1年くらい経って、ふと思ったことがありました。
うちの子たちは重度障がい児なので、高校までの学齢期を過ぎると行くところがないんです。今は小学生だけど、7、8年経つと行く学校がなくなるので、そこからは家にいるか、もしくは福祉施設にデイサービスへ行くか。
デイサービスってだいたい2時に終わるので、その時間にお迎えに行って家に帰ってくる。そうしたら私、時間がなくなるじゃないですか
自由に外に出られなくなると考えると、今後も子どもたちにお金がかかるから、このまま「宅録で」ナレーションの仕事をやっていけたらいいんじゃないかと思い至って「本気で宅録でやっていこう!」と決めました。

あこ:すごい!!本気で取り組み始めたんですね!!

宅録ナレーターの底上げを!目標を立てて突き進む

公文:それから篠原さなえさんのナレーションレッスンを習い始めたりしました。

篠原さなえ:
ナレーター、司会、レポーター、声優など幅広い芸能活動を行う。特にスポーツ中継を得意とし、高校野球などで女性実況アナウンサーの先駆けとなる。現在プレイヤーとして活躍しながらも声のプロへの個人指導も積極的に行い、大学でも教鞭をとっている。
著書に『「魅せる声」のつくり方』『日本人のための声がよくなる「舌力」のつくり方』(以上ブルーバックス)『人生が変わる声の出し方(CD付き)』(すばる舎)

公文:7、8年後には家から出られなくなると、午前中、近所に買い物に行くくらいしかできなくなる。実質的に家に閉じ込められるわけじゃないですか。でも収入があるほうが絶対いいし、何かしないといけないと思うと、宅録で仕事を取っていくことをまじめにやっていこうと。
でもスタジオに行くのに比べると宅録はまだ安い案件が多いから、その宅録市場を全体的に底上げしていかないといけないな、とも思っているんです。
自分のためにもね。
こう言うと偉そうだけど、底上げして社会に「宅録ナレーションはプロがやっている、技術もある、しっかりしたお仕事なんです」と示したい。遊びじゃなくて、ちょっと余った時間に副業でやるとかでもなくて、本業でやっていいくらいのお仕事なんです、という立ち位置に「宅録ナレーションを底上げしたい」という思いになってきて。そうすることで、ひいては私の仕事も充実してくるんじゃないかな、と。
それでTwitterとかで偉そうにいろんなことを発信してる(笑)
みんなの意識を上げたいという思いがとてもあって、だから「こういうのはちゃんとしなさいよ」というのをガンガン言っていきたいんです、みんなに。
私って偉そうだから「これ、絶対反感買ってるな」って思いながら(笑)

さかし:私のナレーター友達は「公文さんのTwitterに刺激受けてる」って言ってました。熟読してるみたいですよ。めっちゃファンで!

公文:本当!?突然メールをくれる人もいます。最初、Polly名義の時は何も考えていなくて、発信も社会と繋がれる楽しさが漏れ出てるような感じだったけど、本名に変えて以降は「宅録ナレーターの地位向上」とかいろいろ考え始めました
宅録ナレーターってやっぱり聞こえがよくないと思っていて。一つには、プレイヤーが多すぎること。ナレーションの訓練の経験がない人も参入してきている。でも、そこも含めて全体的に技術ややりとりのマナーなどが向上するとかなりイメージ変わってくると思うし、「まともに仕事を振ってもいいかも」と思ってくれる制作会社も増えてくるんじゃないかなと目論んでいます。
ちょっと長期計画だけど、私のなかでは7、8年でそれを達成したい。さなえさんにも「最終的には『宅録ナレーションだけで食べていってます』ブランディングします」と言っています。
今はスケジュールが合えばスタジオにも行ったりしているんだけど、そこが全部無くなっても食べていけるようにしたい。現状を維持しつつ、更にもっと稼いでいけるようにしていきたいなと思っています。
今は基本そんな感じでやっている。だから始めた時とはかなり違うスタンス。始めた時はリハビリ、社会復帰だったので(笑)

さかし:宅録自体を始めたのは何年前ですか?

公文:2年前です。今が3年目の4ヵ月目(2021年11月取材当時)。子どもがいたら宅録はとてもいいですよね。だって自分の体調だけじゃなく子どもの体調もあるから。
もしスタジオ収録の日の朝に子どもが体調崩したらどうするか。うちは基礎疾患がある子たちで、私には替えがきかない母業がある。
そう思うと「宅録すごいな」って思って。
自宅でオンライン収録というのもありがたい。もし子どもが熱を出していても、収録時間直前のギリギリまで近くで様子を見られるから、そこもスタジオ収録とは全然違う。
だから「自宅で収録できる」って可能性がある働き方だな、と思っています。

さかし:行き帰りの時間まで短縮できちゃう。

公文:そうそう。私の場合、1時間前に現地に着いてスタジオの場所を確認しているので、実際にはもっと時間がかかるんです。前日からコンディション整えたりとかいろいろ考えると、この働き方素晴らしいなと思います。
でもスタジオ行ったほうがぶっちゃけナレーションが上手くなるとは思う
スタジオ収録したことある人とない人とでは、ちょっと違うと思う。

さかし:直接その場でディレクションされるという経験があったほうが、宅録ナレーターとしても強いかなとは確かに思いますね。

公文:そうそう。テンションや音の高低など、どれくらいの読み幅を求められるかを感じられるので。自分では「これくらいでいいかな」と思っていても「もっとこうして」って言われるから「え~!そこまで!?」みたいな。「もっと速く」と言われて「そんなに~!?」って(笑)
だから、今はたまにそういう仕事入れたほうが自分の技術向上のためにはいいなと思っています。あと7年間しかないけど今のうちにスタジオでの収録もしたい。
とはいえ、私が宅録ナレーターでやっていこうと思ったのは重度障がいを持つ子どもたちのためなので、やる気になったからと言っても「スタジオたくさん行きたいです」っていう感じでもなく「行けたら行きます」くらい。
「宅録にちゃんと投資する!」って、そう決めているから。
私はもう「ここしかない!」って決めているので、投資することに全然躊躇がないんです。さっさと自宅にスタジオ作る、お金もかける。
「コロナが収束して再開したらスタジオ行きたいです」と思っていたら、宅録への投資にも迷いが出るとは思う。とてもわかる。
私はそこに迷いはない。家を一番良くしたいから!
スタジオに行ける、しかも一人暮らしとかだったらどんどん行ったほうがいいと思う。成長のためにも。やっぱりそのほうが営業もしやすい。あと、若いんだったら一度事務所に入ったほうが多分いい。

さかし:可能なら、少しでも事務所で揉まれたほうが経験としてはいいと思う。私も揉まれてきました。事務所入るために一回がんばった人と、その経験がない人とでは肝の座り方が違うこともありますよね。

公文:私、会社にいた頃の最後のほうに、フリーランスを応援する雑誌の制作チーフをやっていたんです。なので「〇〇について、フリーランス的にはどうか」という発信をよくしています。ナレーターがどう、というよりは「会社に帰属しない働き方について、こういうのは気をつけたほうがいいんじゃない?」とか。
いろんな話をインタビューで聞いてきているから「やっぱり起業って大変だよな」とか「フリーで働くのってリスクたくさんあるよな」というのがあって。
前はわりと、日常のちょっと思ったどうでもいいことをつぶやいていたんですけど、フォロワーさんが増えてくるとつっこまれやすいので、ちょっと考えて書かなきゃいけないなって思うと、なんか偉そうになってしまってる(笑)

・・・・・・後半へ続く

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初回から話が盛り上がり長くなってしまったので、今回はここまで!
後半は公文さんの初仕事のエピソード、仕事と子育ての両立などについて語っていただいています。お楽しみに!
さかし&あこでした!!

公文のぞみさんのツイッターアカウントはこちら

坂下純美:東京在住のナレーターで一児の母。都内スタジオでの収録を主に活動。1年ほど前に宅録を開始し、Twitterで情報を集めながら日々勉強中。ツイッターアカウントはこちら

甘利亜矢子:静岡在住のナレーター。司会業を中心に伊豆半島全域を走り回る日々。只今0歳児育児の為、司会業は育休中。宅録は駆け出しで、スタートラインに立ったばかり。ツイッターアカウントはこちら

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