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最短で売れっ子ナレーターになるには? 

あなたがフリーのナレーターなら、一度は制作会社に営業をしたことがあるはず。練りに練ったボイスサンプルを作り、宣材写真を貼ったプロフィールを準備。SNSで繋がったり、問い合わせフォームからメールを送ったりして、ナレーターとしてどんなに有能かをアピールする。こんな営業方法を数十件、数百件と繰り返し、やっと仕事に結びついたのは1件だった、という話は珍しくない。むしろラッキーな例だろうか。

動画制作を中心としたコンテンツ作り全般を担う「株式会社コアセプト」草野央光社長が提案するのは、そんな王道の営業方法に比べると”裏道”とも言えるやり方だ。企画提案から動画制作まで深く携わる「コアセプト」ならではの視点で、ナレーターの新しい生存戦略を具体的に浮かび上がらせよう。これを実行するかしないかで、あなたのキャリアの明暗はくっきりと分かれるかもしれない。


草野央光(くさの・ひろみつ)/株式会社「コアセプト」代表取締役。長野県出身。大学在学中にたまたまアルバイトをした動画制作プロダクションに就職。3年半経験を積み、2017年に「コアセプト」起業。事業内容は、動画を中心にしたコンサルティングおよび制作業務/ブランディングに関する業務など多岐にわたる。

「コアセプト」は課題解決集団

動画制作プロダクションとして見られがちなんですが、課題の整理と言語化などのゼロベースから入ることが多いです。クリエイティブという手段を使って、まっさらな状態から一緒にお客様の課題を解決しています。

弊社の取引先の5〜7割ぐらいはエンドクライアント(代理店を挟まないお客様)。最初のお打ち合わせで企画がまだまとまっていない場合が多いです。なので、まず具体的に何を作ったらいいかを決めていく。お客様が「こういうのを作りたいんだけど」と仰ったときに、その背景から伺って「それでしたら、こんなのはどうでしょうか?」という提案から始めていきます。

課題解決集団のコアセプトさん、ナレーションで仕事を取るにはどうすれば良いですか?

ナレーターさんの営業方法は実績の有無で手法が異なってくると思います。

実績のある方は、自身の強みを輝かせる。

実績が多く「何でもできます」は「何でもできません」になっちゃうので実績ベースで得意分野を絞り込む。で、安定していたり、取りやすいところを狙う。具体的に例を挙げるとヘルスケア領域はその一つです。医療用語は専門性が高くイントネーションが難しいので、収録の際に、そこの経験値が高いほどお客さんとしては安心できる。専門性が高い業界の実績が多ければ多いほど、仕事が取りやすくなります。

実績のない方は、まず顔出しOKかどうかで戦略が違う。

動画にタレントさんを入れるほどの予算がない企業って、思っているより、すごくたくさんある。そこの溢れたパイをまだ誰も拾ってないんですよ。タレントとナレーター2人をキャスティングするんだったら、1人にどっちも任せた方が楽だし安く作れる。ナレーターさんは説明も上手いし、そうすると全体の雰囲気も作れますしね。皆さんプロフィールに「顔出しOK」って記載がない場合が多いですが、デカデカと書いた方がいいです。

ただ年齢やビジュアルで担当できる分野は左右されます。例えば40〜50歳ぐらいがターゲットの、通販やアンチエイジング系化粧品の商材を主戦場にして「モデルとしても出られますし、ナレーションも出来ます」っていう人が売り込むと、商品理解もしてるでしょうから話が早いです。

一方で若手に関しては、ある程度ビジュアルが整っていて、スーツがパリッとしていれば需要があります。「ある程度」って言うのは身だしなみに気を遣っていればそれなりになります。個性的な服装はNG、髪型や眉毛が整っていて、アイロンがかかった服装で、靴が綺麗で清潔感があればOK。好きな人とのデートにいく感じだと思ってください。

キャッシュポイントは明確にしつつ、オファーの大切さを忘れない。

それから「タレント・モデルとして顔を出せます、プラス声も出せます」って言いつつ、顔出しでお金を取ろうとしない方がいい。「俳優としての出演料はお気持ちで構いません。その代わりナレーションの仕事を積ませてください。」みたいな感じで売り込みをするんです。みんなボイスサンプルだけの売り込みはするから、そこと差別化が出来ます。

しかも作業フロー(作業工程)的に、動画撮影のタイミングってナレーションよりずっと前段階なので、制作陣と早く関われるんですよ。しかも、現場にはクライアント、ディレクター、プロデューサーもいるんで色々な人と関われる。出しゃばりすぎちゃいけないんですけど、それってすごく大きい収穫です。

マーケティングの手法なんですけど、売りたい物を売らないようにした方がいいです。ナレーションを売りたかったら、別の物をまずはタダで売る(=オファー)。そうするとどっちも実績ができます。フロント(集客)商品にはナレーション以外のものを興味の持ってもらいやすいカタチで提示する。お客さんに興味を持ってもらえた後、セット商品としてナレーションを売り込むんです。

商品を増やして、より大きな仕事を!

いつも皆さんが読むナレーション原稿が作れると、もっと仕事を取りやすいです。ナレーション原稿っていつ作るか?撮影の前なんですよ。そうなると、企画提案の次に発生する台本作りのところから関われる。最終的には修正などもあり、原稿は始めの頃から大きく変わりますが、演出意図を深く理解できるので個人的にはオススメです。

プラス、ちょっと訓練は必要ですけど「動画の台本作れます。顔出しやってるので動画に出演できます! 台本作ったので商品理解あります! 声とか含めて全部できます!よかったらお願いします!」なら結構需要がある。「よかったら」ぐらいの距離感がいいですね。で、フロント商材を台本作成にする。

具体的には「台本を5万円で作ります。顔出しはお気持ちで貰える程度で大丈夫です!ナレーションも単価5万円なんですけど、セットだったらナレーション3万円でいいです」とかにしちゃう。単価は安くなるんですけど、セットで8万円になる。気持ちの良い制作会社なら、出演もしてくれてるから切りよく10万で、とか。ナレーションで8万円取るって、案件を二つ三つ重ねないといけない。そう考えたら動画1本で8万円〜10万取れた方がコスパいい。

ナレーター営業としてボイスサンプルを皆さん送っているかと思うんですが、正直サンプルでナレーターを探すことってほとんどないです。言ってしまえばボイスサンプルを選ぶお客さんはプロじゃなくて素人なので「なんとなく」が多いです、好み。「なんとなくこの声質が好き」「合ってるよね」みたいに、上手い下手をそこまで聞き分けられるわけじゃない。なので、ボイスサンプルだけで勝負するのは想像以上にギャンブルになります。だからボイスサンプルで比較される前に、勝負をかければいい。どこかって言うと、仮ナレーションです。

売れっ子への道は、泥臭く!

仮ナレが動画と合っていたら、提案された候補者って1回忘れられちゃうんですよ。候補者は「ちゃんと準備しました」っていうただのプレゼンテーションの資料でしかない。プレゼンの候補者と仮ナレーションつけた人を比べたら、大体6〜7割ぐらいは後者が通ります。仮ナレ入れた人の勝ちです、はっきり言って。仮ナレで違和感なかったらその人から変える必要ない。

その仮ナレ段階で関わるには、ディレクターさんを含めた制作陣との繋がりがあればもちろん良いですけど、普通にプロフィールに「仮ナレ対応出来ます」と書くだけで違うと思います。ただ、仮ナレを録るタイミングって忙しいので、それに対応できる人じゃないといけない。しかも本ナレーション含め2〜3回録らなきゃいけないから面倒くさいです。でも、ほとんどの人は面倒くさいので「仮ナレやる」って言わないですから、そのやり方なら実績がなくても仕事取れます。

もう一つ加えるとすると、仮ナレーションをやりたかったら、空いてる時間はコールセンターではなくて制作会社でバイトした方がいい。もう、近いです。「ちょっとこれナレーション入れてくれる?」ってすぐ声かけてくれますから。制作会社だとコールセンターよりも仕事が大変かもしれないですが(汗)


「雑務係」から「仮ナレーター」、そしてナレーターへ。

制作未経験でもYouTubeとか学ぶ場があるので、動画編集は1ヶ月頑張ればすぐできるようになります。それからクラウドソーシングサイトで安い値段でいくつか引き受けて実績を作る。その後に制作会社へ「編集ちょっとできます」で売り込む、みたいなパターンでしょうか。

例えば「ルールを教えてもらえれば、素材整理からタイムラインに並べるまでならできます」「喋りテロップの書き起こしや打ち直しをして、台本のベースだけ作れます」「台本からナレーション原稿へ起こして、原稿のルビ振れます」みたいな。要するに動画に関わる雑務の需要を取りに行く。

そこから「ナレーション原稿作ったタイミングで一緒に仮ナレ録りますか?、ナレーション含めた素材を全部準備しておきますね」と言える。あくまで一つの案にはなりますが・・・

フロント商材の営業こそ、良質なサンプルを。

突然「ナレーション台本作れるナレーターです!雇ってください」で飛び込み営業されても、大体のディレクターが「いやあ、どうなんでしょう。」みたいな、基本こういう引き気味のリアクションになります。

だから見本を作った方が早い。「私はこんなナレーション原稿を作れます。それをこういう風な台本にできます。」と。台本に加えて絵コンテが描けるとめっちゃ需要あります。別に上手な必要は無くて、コマ割りがわかるような、本当に小学生が描くような絵でいい。もうちょっと言うと、タブレットを使ってトレース(敷き写し)ができるなら、絵の素材を引っ張ってきてなぞるだけでクオリティが高くなります。

顔出しOKで売っていきたい場合も、何パターンかの写真を用意して具体的なサンプルを元にアプローチした方が、ディレクターさんに話が通りやすいです。もしかしたら、パーツモデルでいった方が(仕事に結びつくのは)早いかもしれないすね。例えば何もつけてない唇とリップつけた唇とで何ショットか撮っていって「口元のモデルできます」とか。「目元だけ/手元だけ出せます」みたいなものでも、少なからずお仕事になるので。

挨拶と礼儀の大事さ

声優事務所のマネージャーさんの、10人が10人同じこと言うんです。「事務所に入って指導することって、声については3割ぐらい。残りの7割は、身だしなみと礼儀」。礼儀がなってないとそもそも現場に送り出せないそうなんですね。ちなみに、AMG(アミューズメントメディア総合学院)の声優コースで学んでいる学生さんって挨拶から礼儀までとてもしっかりされていました。

まずは1通のDMから!

今回はナレーターの仕事を取るための手法を話したんですが・・・多分ほとんどの人がやらないと思います(笑)実行に移すってパワーがいるし、大変ですが、もしここまで読んでみてやるぞと思ってもらえたら、今すぐ一件、どこでも良いので営業DMを頑張ってください!

それでもどうすれば良いか分からなければ、DMでもください。まずは行動を!

これからも「HITOCOE」ではナレーターに特化した上質な記事を連載予定です。今回の記事を気に入っていただけたら、スキやフォロー、サポート(投げ銭)を頂けると幸いです。いただいたサポートは、今後の活動費として役立たせていただきます。

株式会社「コアセプト」代表取締役・草野央光

長野県出身。19歳で上京し東京工芸大学に進学。25歳頃、たまたまアルバイトをした動画制作プロダクションに就職。3年半経験を積み、2017年に「コアセプト」起業。事業内容は、動画を中心にしたコンサルティングおよび制作業務/ブランディングに関する業務/マーケティング活動の企画・実施・請負および支援業務、など多岐にわたる。

○「コアセプト」公式ホームページ:https://www.coresept.co.jp
○「コアセプト」公式Twitter:https://twitter.com/coresept_1017
○草野央光社長Twitter:https://twitter.com/coresept_kusano

ライター・日良方かな(ひらかた・かな)

都内FMラジオ局&Voicy「毎日新聞ニュース」パーソナリティー。ナレーターとして自宅に「だんぼっち」改造の録音ブースを完備し宅録にも対応。だんぼっち組立の様子をブログにしたところGoogle検索「だんぼっち 照明」で1位を連続獲得。「ハンドメイド」に特化したポッドキャストを毎月配信中。

○ホームページ:「宅録ナレーター 日良方かな」
○Twitter:@hirakata_kana
○ポッドキャスト:「日良方かなのハンドメイド工房」



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