ジャッキー・チェンと勝負する(9)

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第9弾は「蛇鶴八拳」。

武術八門の師匠たちが編み出した秘伝を授けられたジャッキーが、その秘伝書を奪おうとして挑戦してくる武術家たちを次々に打ち破るカンフーアクション、いや「カラテ映画」だな。

1977年の作品なので、前回の「少林寺木人拳」と同様、ジャッキーが「スネーキーモンキー」でブレイクする以前の作品(香港での公開は「スネーキーモンキー」の直後)。なので、今見ると、いろいろと違和感満載。

なんといってもジャッキーのスタイルが違う。髪型もヘンだし、顔もお目目ばっちりのアイメイクなので、なんか違って見える。そうした外見だけでなく、キャラクターも違う。この作品でのジャッキーは、最初から「クンフーの達人」として登場するのだ。

われわれがイメージするジャッキー・チェンのキャラクターは、ちょっとダメな未熟者からスタートする。そして、映画の中で修業を積んで腕を上げ、ラストで見事に本懐を遂げる。これは、カンフー映画に限らない、ジャッキーの基本。演じるのが、警官だろうと軍人だろうと怪盗だろうと探偵だろうと、変わらない。だからこそ、主人公として、観客の共感を得られ、親しまれる。

ところが、この「蛇鶴八拳」では、その基本から外れている。というか、まだその基本キャラが確立されていないわけなんだが。

開巻のメインタイトルでは、「木人拳」と同じく、赤一色の背景でジャッキーが演武を披露する。これは当時の「カラテ映画」ではお約束。次いで、オープニングは三人兄弟を相手にしたカンフーファイトだが、ここですでにジャッキーが圧勝してしまう。この後も、次々と襲ってくるカンフーの達人たちを、なぎ倒していくのだが、なかにはブルース・リーの相手役だったノラ・ミャオまでいるのに、達人ジャッキーは難なく勝利してしまう。この映画のジャッキーは、最初から強いのだ。

なので、ジャッキーもハードタッチ。後年のキャラと違って、色仕掛けで迫る美女にも強いし、ドジも踏まない。そもそも明るく笑うシーンもあまりない。ハードボイルドなジャッキー・チェンが楽しめるわけだ。

ジャッキーの、ひょっとしたらあり得たかもしれないハードな一面を見られる作品として、今では価値深い作品なのかもしれない。違和感はぬぐえないが。

この「蛇鶴八拳」も、「少林寺木人拳」と同様、日本公開はずっと後になってからの1983年。80年代の最初ごろには、ジャッキーの旧作が続々と公開されたのだが、そのうちの一本だったと記憶している。なので、1作ごとの印象がはなはだ薄いし、記憶も混乱している。「蛇鶴八拳」も当時見たかどうか、なかなか思い出せなかったが、見てみたら記憶がよみがえった。確かにちゃんと見てました。オレ、えらいな(笑)

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