その名は「ビッグ・X」

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リチャード・アッテンボローが亡くなった。

すべての男の子が一度は見なければいけない「男の子映画」の名作中の名作「大脱走」で、脱走計画のリーダーをつとめるバートレット中隊長を演じていたのが、私には絶対的なアイコン。

大英帝国勲章を授与され、ナイトの称号も受け、一代貴族にも列せられている名優にして名監督をこれ一作で語るのもどうかと思うが、他の映画といわれても、「ジュラシック・パーク」の財団会長役とか、「遠すぎた橋」の監督さんとかが浮かぶくらいで、やっぱり脱走計画のリーダー、その名も「ビッグ・X」が絶対なんです。

ゲシュタポの手からドイツ空軍の収容所へ移されたときにわずかに見せるホッとした表情、200人脱走の計画を披露するときの不敵な笑み、「ハリーを開けろ。掘るんだ、24時間」の名セリフを吐くときの毅然とした表情、最後に同僚に見せる寂しげな笑み……すべてが私の脳裏に刻み込まれている。忘れようったって、忘れられない。合掌。

いい大人が、手塚治虫のマンガじゃあるまいし、大真面目に「ビッグ・X」なんて名乗るのは気恥ずかしい、なんて思った人は「男の子」マインドが足りないってことです。

さて、訃報に接し、ちょっとリチャード・アッテンボローのプロフィールを見ていたら、意外な事実に遭遇しました。

さかのぼること30年ばかり昔、出版社に入社したての私は、倉庫で毎日たくさんの本と格闘していたわけですが、なかでも強敵だったのが、大判フルカラー写真満載の自然科学書『地球の生ものたち』。

発売が、入社寸前の1982年3月で、ちょうどテレビ番組と連動していたので、大ヒット。通常の書籍の2倍はあろうかというサイズと重量に圧倒されつつ、入庫してくるこの重たい本を積み上げ、出荷し、伝票を切っていました。おかげで当時の定価4800円は今でも覚えているし、この時期にずいぶん筋肉がついたもんです。

その『地球の生きものたち』の著者の名前を、デーヴィッド・アッテンボロー(有名な動物学者)と聞いてなんとも思わなかったのは、やはり新社会人のプレッシャーがあったのか、それともまったく違うジャンルのものが私の脳の中で結びつかなかっただけなのか。

デーヴィッド・アッテンボローはリチャード・アッテンボローの実弟だそうです。気づくのが30年ばかり遅かったな。いや気づいたからといってどうということもないんだけど。しかし、「アッテンボロー」なんて、そうそうある名字でもないのにねえ。

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