007記念週間 初代ボンド秘話

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1954年10月21日、今から60年前の今日、アメリカのCBSで、初めてジェイムズ・ボンドを映像化した「カジノ・ロワイヤル」が放送された。つまり今日は映像版ジェイムズ・ボンドが還暦を迎えためでたい日なのだ。めでたいめでたい。

このアメリカ版ボンド、CBSの「クライマックス!」という短編シリーズの一編として製作されたもの。第3回の放送だったそうで、シリーズはその後1958年まで続いた、なかなかの長寿シリーズ。各回ごとに単発のミステリドラマが放送されるオムニバス形式で、第1回の放送はレイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」だった。探偵マーロウを演じたのは人気スターのディック・パウエル。「クライマックス!」は、IMDBによれば166話まで製作されたとかで、そのうち全部調べてみようかな。

さて、初代ジェイムズ・ボンドたるバリー・ネルソンだが、ではどんな役者だったかというと……よく知らん(笑)

いやいや、長いキャリアを持ち、テレビや映画で幅広く活躍した俳優さんだ。「大空港」の機長役(副機長がディーン・マーティン)や「シャイニング」の支配人役が記憶にあるかもしれない。興味のある人はウィキペディアやIMDBで検索すると、初代ボンドの顔が確認できる。とはいえ、ショーン・コネリーやロジャー・ムーアほどの知名度は、ついに得られないまま、2007年に亡くなっている。

じつは、この「カジノ・ロワイヤル」でバリー・ネルソンが演じたのは、女王陛下の007ではなく、アメリカのスパイ、ジミー・ボンド。アメリカ向けに主人公はアメリカ人に変更されていたのだ。彼を助ける、原作ではCIAのフェリックス・ライターが英国情報部員という設定だ。

そして忘れてならないのが、悪役ル・シッフルを演じたピーター・ローレ。大物である。フリッツ・ラングの名作「M」で追いつめられる殺人鬼を演じ、あの「マルタの鷹」でもハンフリー・ボガートの探偵スペードを脅すなど、悪役としても一家をなした。

イアン・フレミングの原作ではシリーズ第1作である『カジノ・ロワイヤル』は、じつに三度にわたって映像化されている。最初がこのテレビ版、ついで1967年のコロンビア映画版「カジノロワイヤル」、そして正統シリーズの第21作「カジノ・ロワイヤル」(2006年)。

そして、そのいずれにも悪役ル・シッフルが登場する。最初のピーター・ローレも大物だが、次のコロンビア映画版に登場するル・シッフルは、さらに大物のオースン・ウェルズだ(出演時間は短いが)。この二人に比べると2006年版のマッツ・ミケルセンは小物に見えるよな(体型のことだけではなく)

ここで忘れてならないのは、原作の『カジノ・ロワイヤル』の発表は1953年だということ。つまり小説発表の翌年には、早くも映像化されていたということだ。この時点でこの作品の価値を、すでに見抜いていたというのもけっこうスゴイ。ちなみに「ロング・グッドバイ」も、原作は同じ1953年の作品。この「クライマックス!」のプロデューサー、なかなかの選球眼を持っていたようだ。

さて、このテレビ版「カジノ・ロワイヤル」は、長い間、フィルムが紛失してもはや見ることが出来ないとされていたが、1990年代にどこかで発見されたらしく、アメリカでVHSソフトで発売されていた(その後DVD化もされている)。だが、権利問題でもあるのか、国内発売はなく、日本では依然としてレア映像のままだ。初代ボンドの顔、見てみたいでしょ? 国内版の発売を、ぜひ実現してもらいたいものだ。

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