500円映画劇場「アナコンダ・アイランド」
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ホームセンターの隅によくある、DVDの安売りワゴン。そこは、ここでしか見つからないような「迷画」の宝庫だ。ワンコインで手に入るが誰も買わない、そんな映画を見てみたんだが……
なにしろタイトルが「アナコンダ・アイランド」ですからね。つまり「アナコンダの島」、動物パニックものの定番で南米に実在する大蛇、人間をも丸呑みにするあのアナコンダが主役だと、誰もが思うでしょ。DVDジャケットにも、英題「Anaconda Island」と入ってるし、大蛇のイラストも入ってるし、「悲鳴も呑みこまれる」というコピーも入ってるし……
全部ウソです。
主役のヘビは、全然アナコンダじゃなくて、全長1メートルにも満たないナントカツノヘビ(最初のほうでちゃんと言ってたけど忘れた)。ほんとうの原題は「VIPERS」、つまり毒蛇のほうですね。またしても日本発売元の陰謀でしたとさ。
ということで、その毒が癌の特効薬になるとかで研究されてた毒蛇が研究所を逃げ出して人々を襲うというお話し。襲われるのが携帯の電波も届かない島なので、「アイランド」の方はちゃんと出てきます。
ただし、なりは小さくてもこの毒蛇くん、遺伝子操作で「強化」されてるとかで、みるみる数が増えるし、血清も効かない毒を持ってるし、やたらと跳ぶし、獲物を呑むんじゃなくてゾンビのようにガジガジ齧るし、けっこう強敵。島に来た元軍医が中心になって、島民たちが必死にサバイバルします。ほとんど死んじゃうけど。
しかし、設定にはツッコミどころ満載。
最初に出てくる研究所から逃げ出すのはせいぜい10匹程度なのに、島には数百匹の群れが押し寄せる。いつの間に増えたんだよ。てか、逃げ出してからどんくらい経ってるのか、研究所と島はどのくらい離れてるのか、そもそもコイツら泳ぐのかよ、とかどんどん疑問が湧いてくる。そういえば魚が喰われてるっていうシーンがあったが、その割には船に乗って逃げればオッケイ的な展開になってたな。
要するに脚本が弱いのだ。そのうえ、演出も良くない。途中で主役の元軍医が死んだ戦友について、その戦友の元恋人に語ったりする人間ドラマ的狙いのシーンがあるのだが、会話している二人のどアップの連続で、見ている方が辛くなる。演出が初歩レベルだぞ。
それでも、真の主役たるヘビ群は善戦している。なりは小さくて、安いCGではあるが、何しろ数が多いので充分気色悪い。おまけに、獲物を丸呑みではなく齧るので、スプラッタ色も満載。どんだけ凄いかというと、襲われた人は死体も残さず食い尽くされ、血まみれの服だけが残っていたりするのだ。骨まで喰うのかよ、こいつら。そういえば、ピラニアみたいだとか言うセリフもあったな。
この作品、前に紹介した「ジュラシック・レイク」と同様にカナダ産のテレビ映画なんだが、それにしてもカナダの映画人というのは少々非道すぎるんでないかな。「ジュラシック・レイク」でも、仲間が死んでるのに、さっさとおうちに帰る主役たちのことを糾弾したが(笑)こっちも負けてない。
主役の一人に両親と仲違い中のティーンエイジャーの少女がいる。蛇襲来で孤立し、危機一髪のところを、両親に救われる。かわりに両親が犠牲になり、「あたしまだパパとママに謝っていないのに」とお約束の涙。そこへパパが奇跡の生還で感激の仲直り(ママは死んじゃってるんですけど)。それなりに親子の絆が戻る感動のシーンなんですが、その途端にパパが仲間の誤射を受けて「お前のこと愛してるよ」といいながら、今度はほんとに死んじゃう。なんという非道な展開。可哀相すぎるだろ。カナダの脚本家は、極道ぞろいなのか。
という具合で、いろいろ楽しめる映画ではありました。2008年の作品です。
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