大秘境物語
【無料で全文お読みいただけます】
私が子供のころに読んだ怪奇本に、たいがい出ていたのが、「秘境」というやつ。
当時はまだ人跡稀な地域が地球上に多くあったのです。アフリカ奥地、アマゾン流域、サハラ砂漠の真ん中とかが定番で、そこには謎のUMAが潜んでいたり、超古代文明の遺跡が眠っていたり、謎の組織の本拠地があったりするのが黄金パターン。
そんななかで、私が好きだった話に、「中国奥地にエベレスト以上の高峰が存在する」というのがあります。なんの本に出ていたんだっけな。チベット上空だかを飛んでいた航空機が、高度10000メートル以上を飛んでいたのに、山にぶつかりそうになったという話。怪しげでいいでしょ。
当時のチベットは地理的に奥地なだけでなく、政治的な意味でも立ち入り困難な「秘境」だったのです(鉄のカーテンももはや死語)。もちろん現在ではそんな山は存在しないことがわかっちゃいましたが、何か謎めいたロマンっぽいものを感じましたね。
現代では地球の表面はほぼ踏査され、あまつさえ宇宙空間からも俯瞰できるようにまでなっているので、もはや地球上には「秘境」と言える場所は存在しえなくなってます。
その点、分厚い海水の層におおわれている深海底と、地殻の奥深くの地底には、まだ「秘境」のロマンが残っていますかね。
そういえば、かつて「地球空洞説」というのがありました。
地球の中心部は学界の定説では、ドロドロに溶けた高温高圧の核があることになっているのですが、じつはそれは嘘で、本当は巨大な空洞が広がっているというもの。中心には「中心太陽」があり、地球の両極には、そこへの入り口となる巨大な穴が開いていて、内部には地表面以上の緑の陸地が広がっているんだそうです。
シャングリラのような理想郷、地底王国のような伝説は古くからあるのですが、この「地球空洞説」に信憑性を与えていたのは、人類史上初めて航空機による極点到達を達成(1926年北極、1929年南極)した、探検家・飛行家として知られるリチャード・バード少将の体験談。
前記の功績などでアメリカでは国民的英雄でもあるバード少将が、1947年に極地を飛行中、眼下に広大なジャングルが広がる地の上空にまぎれこんだというものです。
そこには緑の樹木が生い茂り、生物らしきものもいたとか。
バード少将の機は知らぬ間に巨大な穴を通り抜けて、地球内部の空洞に突入したものとされました。
いや、どう考えても無理だろ、それ……などとおもいますが、「穴は広大過ぎて、人の眼では認識できない」「重力は地球中心に向けてではなく地殻の中心に向けて働く」「オーロラは、じつは中心太陽の光が反射しているのだ」などともっともらしく畳みかけられると、なんとなく信じられるような気がするのがミソ。
アメリカの気象衛星が上空から撮影した極地の写真で、極点を中心にぽっかりと空白があるものが発表されて「やっぱり」的な話題が出たこともありました(実際はデータ欠落によるものだった)し、UFOはじつはこの空洞から飛来するのだなどという話もあります。この「地球空洞説」、人々の心の奥底に訴えかけるものがあるんでしょうかね。
最近、テレビのバラエティで「秘境駅」(単なる人里離れた無人駅)がよく取り上げられるように、人間は「秘境」が大好きなものらしいです。
残念ながら「最後のフロンティア」である宇宙を探検に行くにはまだ時間がかかりそうですから、それまではちまちまと海底や洞窟の奥に「秘境」を求めることになりますね。
超常現象なんか信じない 目次
【本文はこれで全部です。もしもお気に召しましたらご寄進下さい(笑)】
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?