ジャッキー・チェンと勝負する(11)

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第11弾は「プロジェクトA2/史上最大の標的」。1987年の作品。

「プロジェクトA」の名場面集から始まる、ハッキリした続編。この翌年にジャッキーは「ポリス・ストーリー」の続編「九龍の眼」を製作してシリーズ化するが、この時点ではこの「プロジェクトA2」が初の続編ジャッキー映画だ。とはいえ、主要登場人物が同じなのと、前作の海賊の残党がわずかにサイドストーリー的に絡むだけで、主たる部分はまったくの別物と言っていいだろう。いや実際、それくらい、前作とはスケール感が違う。

「プロジェクトA」は1983年の作品だから、4年しか違わないはずだが、その4年がジャッキーに何をもたらしたかは画面を見ればわかる。4年前の「プロジェクトA」も、それまでのカンフー映画にくらべれば相当に画期的な規模のアクション映画だったが、そこはかとなく貧乏臭さは残っていた。クライマックスの海賊の隠れ家のセットとかね。さらにいうならば、まだジャッキーはサモ・ハンやユン・ピョウの協力を得て、いや彼らの力を借りなければ、大作映画は作れなかった。色々な意味で。

ところが、今回はどうだ。自らの製作会社を押し立て、ずらりと並べた豪華共演陣も、すべてジャッキー・チェンの引きたて役。サモ・ハンもユン・ピョウも、もうそこには必要ない。ジャッキーが自ら気に入った俳優をチョイスし、並べ、自ら演技をつけている(映画のラストと特典映像で、その監督ぶりが見られる)。もはや堂々の大丈夫(ビッグマン)だ。そういえば、この翌年の「サイクロンZ」が、サモ・ハンらとの最後の競演作になったんだっけ。

というわけでビッグになったジャッキーだが、この作品でのアクションは、じつにジャッキー・チェンっぽい。とくに後半の延々と続く追いかけっこアクションでは、不必要なまでにコミカル要素がちりばめられている。そして、それがまったく邪魔になっていない。見ていて、どんどん楽しい気分になれる。

思えば、これがジャッキー・チェンらしいってことだろう。「ポリス・ストーリー」以降は破壊アクションに舵を切ったジャッキーだったが、この「プロジェクトA2」では、肉体を痛めつけるカンフー的アクションに完全に回帰している。そしてそれを演じるジャッキーは、じつに楽しそうだ。

ジャッキー・チェン映画の、ひとつの完成形が、この「プロジェクトA2」なのだ。そしてこれ以降の90年代、ジャッキーは時代もののカンフーアクションをほとんど手掛けず、ワールドクラスのビッグ・アクション・ムービーの作り手になっていく。その意味でも、ジャッキー史のひとつのエポックといっていいと思う。

余談だが、今回のディアゴスティーニ版の字幕は、かつての日本劇場公開版に準拠したのだろうか、ジャッキー扮する主人公は「ドラゴン」と呼ばれていた。ご存知かもしれないが、原語の広東語版でのジャッキーの役名は、字幕や吹き替えに出る「ドラゴン」ではなく「馬如龍」、耳をすまして広東語版を聞くと、ちゃんとこう呼ばれている(と思う)。ちなみに、清代末期の軍閥に同名の人物がいるが、何か関係があるのか?

ついでに言えば、マギー・チャンの役名も「マギー」じゃなくて「綺珊」だし、カリーナ・ラウも「カリーナ」じゃなくて「秋玲」だよ。

もうひとつついでに言えば、共演の三大女優のなかでは、私はロザムンド・クワンが、いちばん好きです。

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