永遠の不死者

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クリストファー・リーが亡くなった(2015年6月7日死去)。合掌。

なんといっても「ドラキュラ」なのだが(朝日新聞の訃報欄の見出しは「ドラキュラ伯爵」)、私が映画をせっせと見はじめた1970年代半ばにはすでにドラキュラ・シリーズを降板しており、俳優としての幅を広げていこうとした時期だったようで、なんかしょっちゅうスクリーンで見かけたものだ。

もちろん「007/黄金銃を持つ男」(1974年)の殺し屋スカラマンガは忘れがたいが、その他にも「四銃士」(1974年)、「ダイヤモンドの犬たち」(1975年)、「エアポート'77/バミューダからの脱出」(1977年)、「サイレントフルート」(1977年)、「ジャガーNO.1」(1979年)、「オーロラ殺人事件」(1979年)と、製作年を見ればわかるように、出まくり。この時期はTVムービーにもよく出ていた。

 その後は大作の脇を固めることが増えて、以後「名優」としての評価を高めてゆくわけだが、私はこの時期の「出まくり・リー」がけっこう好きだ。

なかでも、巷間スピルバーグの失敗作と評価されることの多い私の最愛作品のひとつ「1941」(1979年)のリーは非常に好き。

太平洋戦争開戦時にロサンゼルス近郊の海岸に浮上する日本海軍潜水艦に、なぜだか乗り組んでいるドイツ海軍将校という役回りなのだが(制服姿がカッコイイ)、艦長の三船敏郎をはじめ日米の人々がどんどん狂っていくなかで、最後まで冷静なのが妙に可笑しかった。日本人に対する民族蔑視をチラ見させ(役柄の上でだけですよ)、最後は三船艦長にブン投げられるなど、娯楽映画のカタルシスのツボもきちんと押さえていて、この役どころにクリストファー・リーを配したスピルバーグのセンスはもっと買っていいと思う。

しかしつくづくとフィルモグラフィを見ていると、ドラキュラはもとより、フランケンシュタインの怪物ミイラ男などもやっているし、怪人フー・マンチューも演じたことがある。シャーロック・ホームズにも扮しているが、その兄マイクロフト・ホームズと両方演じたことがあるのは彼くらいではないのか。

そのわりにはハマー・プロのドラキュラ・シリーズを降板(1973年の「新ドラキュラ/悪魔の儀式」が最後)した後は、義理堅く、ドラキュラを演じることはなかった(余談だが、この後のシリーズ最終作にして超怪作の「ドラゴンVS7人の吸血鬼」に彼が出ていなかったのは、つくづく残念だ)

俳優さんの訃報に接するたびに思うのだが、ご本人が死去されても、その姿はいつでもスクリーンで見ることができる。

彼らはみんな、ドラキュラならぬ「不死の存在」なんだな。

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