何かが空から落ちてくる

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2013年に世界中を驚かせたロシアのチェリャビンスク州の隕石落下はまだ記憶に新しい。光り輝き、長い煙の尾を引いて落ちてくる隕石の映像は強烈なインパクトがあったわけですが、それを見た私が抱いた感想は、こうだ。

映画と同じだ

そもそも人類の住んでいる場所に隕石が落ちてくることは非常なレアケース。実際のところチェリャビンスクの隕石落下のものが、ハッキリととらえられた唯一の映像だろう。1908年のツングースカの大爆発は有名だが、目撃者がいないし映像もない。他には、世界でいくつか発見されている隕石孔があるだけだ。

でも、映画の世界には「特撮」という武器がある。実際に見ていなくても、ちゃんと目に見えるように作り出すことができるのだ。映画って、すごいね。

問題のチェリャビンスク事件の時に「ここから怪獣が出てくる」と思った人も少なくないだろう。私も思った。そう、SFや映画の世界では、隕石からは怪獣とか異星人とか、ろくでもないモノが出てくるのが相場なのだ。

では、隕石から出てくるナニモノかを主役にした映画の最初はなんだろう?

たぶん、1964年の「三大怪獣 地球最大の決戦」に登場したキングギドラがパイオニアだろうと思う(黒部山中に落下した隕石から出現)。知名度的にも、このキングギドラを第1号に推したい。同じ年に「宇宙大怪獣ドゴラ」もあるが、あれは隕石から出てはこないからね。

私的には、テレビ「ウルトラQ」の「ガラダマ」に出てきた隕石怪獣ガラモンが一番のお気に入りなので、ぜひともそちらを推したいところだが、1966年放送なのでちと遅い。しかし、デザイン的にも秀逸だし、この「ガラダマ」はけっこうサスペンスフルな一編だった。続編の「ガラモンの逆襲」は一転してスペクタクルな、こちらもシリーズ中屈指の傑作だ。

では、海外作品では?

これが、あんがい思い浮かばない。欧米の怪獣映画はおおむね地球由来のデカい生物ばかりなのだ。

1957年の「モノリスの怪物」は数少ない例外だが、これは怪獣といえるかどうか微妙。落下してきた隕石がどんどんどんどん巨大化していくだけなので、意志を持って暴れまわる「怪獣」とは言えないか。でもスペクタクル感もあるB級SF映画の傑作です。

隕石そのものが落ちてきて危ないことになる映画には、古くは1951年の「地球最后の日」や、わが日本の「妖星ゴラス」(1962年)、あるいは1998年に相次いで作られた「ディープ・インパクト」「アルマゲドン」などもあるが(このふたつは亜流の500円映画を山ほど生んだので間違って見ないよう要注意)、私としては1979年の大作「メテオ」を推しておきたい。いや、大味そのものなパニック映画ですが。

「メテオ」の原題は「METEOR」。アメリカ映画なので英語発音は「ミーティア」なのだが(映画の中でもみんなそう発音している)、にもかかわらず邦題は、「メテオ」。

おかげで、以後この誤った英語発音が脳の言語野に定着してしまったのは私だけでは……私だけか? そのくらいのインパクトはあったってことで(笑)

「何かが落下してくる映画」っていうのは、途方もなく大仕掛けなパニック映画にもできるが、一方で安く作ろうと思えばいくらでも安上がりにできる便利なジャンルなので、これからも映画の世界では、ちょくちょく色々なものが落ちて来るだろう。最初に書いたように、現実にはほぼアリエナイ事態なので、安心して見られるっていうこともあるしね。

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