007記念週間 番外ボンド列伝

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さて、めでたく60周年を迎えた007シリーズの映像化ですが、この間にジェイムズ・ボンドを演じた6人の正統ボンド役者については、前に書いた通り。だが、そのほかにもボンド役者といえる人々が何人かいることも忘れてはならない。あ、パロディとかCMとかはナシでね。いわば正統のちょっと端っこのほうに属する番外ボンド役者たち。

昨日書いたように、正統イオン・プロの007シリーズが開始される1962年よりも8年前の1954年に『カジノ・ロワイヤル』が映像化されて、バリー・ネルソンがボンドを演じている。正統シリーズの系譜には属さないが、彼こそ正真正銘の初代ボンド役者なのだ。だが、今ではなかなか見ることができない幻の初代ボンドとなってしまい、そういう意味ではレア度ナンバーワンの番外ボンドなのだった。

その後、もうひとつの「カジノ・ロワイヤル」が作られる。1967年にイオン・プロではなくコロムビア映画で映画化された「カジノロワイヤル」だ。したがって2006年に正統シリーズで映画化された「カジノ・ロワイヤル」は3度目の映像化なわけである。そもそもそんなことになったのは、原作者のイアン・フレミングが、自身のデビュー作であった小説シリーズ第1作『カジノ・ロワイヤル』の映画化権をさっさと売ってしまっていたから。昨日も書いたように、原作刊行の翌年にはもうテレビ版が放送されている。フレミングはその金で新車を買ったそうだ。なので、イオン・プロの企画が立ち上がった時にはすでに手も足も出なかったのだろう。その権利がテレビ版から流れ流れて、この映画になったらしい。このコロムビア映画版「カジノロワイヤル」は007シリーズをパロディ化したものだが、現役を引退したサー・ジェイムズ・ボンドがちゃんと登場する。すでに老境に入りかけていたこのボンド卿を演じたのが、大物デビッド・ニーヴン。じつは原作者のフレミングがボンドのモデルとして想定していたのが、このデビッド・ニーヴンで、原作者として初代ボンド役者にニーヴンを希望していたという話があるのは皮肉だ。この老ボンドは、DVD化されているので、今でも手軽に見ることができる。

もう一本、番外007映画がある。1982年の「ネバーセイ・ネバーアゲイン」がそれで、これは「サンダーボール作戦」のリメイク。権利上の問題で映像化権がイオン・プロの手を離れた結果の産物だが、ここでは初代ボンドのショーン・コネリーがボンド役に復帰したので、番外あつかいは出来ないね(とはいっても、これ一作だけの復帰だったが)

多くの観客に見られながらも、ついに日陰のままで終わったボンド役者もいる。正統007映画のオープニングを飾る名物といえば、「銃口に向けてドカンと一発」、つまりガンバレル・シークエンスと呼ばれるアレ。今もコレ抜きでは007は始まらない。その「ドカンと一発」だが、ここに登場するジェイムズ・ボンドを主演俳優がちゃんと演じるようになったのは、シリーズ第4作の「サンダーボール作戦」から(はっきりショーン・コネリーの顔がわかる)。では、それ以前は? 「ドクター・ノオ」「ロシアより愛をこめて」「ゴールドフィンガー」の3作では、ボンドはシルエットになっていて、顔もよくわからない。この「ジェイムズ・ボンド」の正体は、スタントマンのボブ・シモンズ。彼はシリーズのアクションデザインをしていた人物で、他には「サンダーボール作戦」の冒頭でジャック・ブバール大佐役を演じているが、彼を「知られざるボンド役者」とすることに異論はあるまい。

現在はイオン・プロが権利防衛を強固にしているため、今後こうした番外ボンドが登場する余地はほとんどない。そのおかげで、彼ら番外ボンドは、映画史的に貴重な存在になったといえよう(笑)

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