大名はつらいよ

先日、「超高速!参勤交代」を見てきました。

かつては年に200本近い映画を見ていた私も、近年は数カ月に一度、映画館へ足を運ぶかどうかになっています。なので、つまらない映画にめぐりあってしまうのは何としても避けたいのですが、いっぽうで他人様の評判とか感想を聞いて判断するのはキライというヘソ曲がりなのが困り者。好みもかたよってるし(笑)。けっきょくのところ、自分の「鼻」で面白そうな映画を嗅ぎあてるのが頼りです。

「超高速!参勤交代」は、ちょっと予告を見かけただけで、その「鼻」にビビッときた作品です。

見終わって、自分の「鼻」が衰えていなかったことに安心しました。「超高速!参勤交代」は、面白い! 未見の人は、機会をとらえてぜひ見るべきです。面白い映画、娯楽映画ってのはどういうモノなんだか、よく分かると思います。

まだ公開中の映画についてあんまり語ってもいけないので、「超高速!参勤交代」鑑賞を強くオススメしておいて、話は別の映画に。

なぜ、私の「鼻」に「超高速!参勤交代」が引っかかったかというと、そこに私の大好きな映画と似た匂いを嗅ぎつけたからです。

その映画は「ジャズ大名」。

筒井康隆の原作(短篇)を、岡本喜八監督が映画化した傑作、1986年の大映映画です。封切りで見たんだなぁ。

時は幕末、東海道の難所に城を構える藩が、幕府と官軍の板ばさみになって苦労するお話し。そこへ難破して漂着した黒人ジャズ演奏家たちがからんで大騒ぎになるんですが、見終わって実に楽しい気分になる映画です。

江戸時代の大名っていうのは、一部をのぞいてほとんどの藩が貧乏所帯。おまけに幕府の締めつけは厳しく、そのへんは「超高速!参勤交代」も「ジャズ大名」も共通して描いているところ。内憂外患こもごも来たれり、殿様も楽じゃないんですよ。そこを知恵と要領で切り抜けようっていう雰囲気がウェットにならずに描かれていて、そのへんが私の「鼻」にも響いたんでしょうかね。

「超高速!参勤交代」では、最後にけっこう真面目な殿様がしっかりと忠義を示してしまうんですが、「ジャズ大名」の殿様は、最後に全部「オレ知らん」とブン投げてしまうんですね。おお、なんと清々しい! 映画自体もそこでブン投げてしまっていきなり終わりになるという潔さ。さすがは映画のアルチザン、岡本喜八です。そういう映画、好きですか?

天下国家や人生を真面目に考える映画もいいですが、「オレはオレで勝手に楽しむ、あとは知らん」ってブン投げるのは、もっとも私の好むところ。他にもそういう映画はあるし、大好きですよ。そのうち紹介しますね。なかでも、この「ジャズ大名」は、世界最高の「ブン投げ映画」だと思うんですよ。そんなジャンルがあるかどうか知らないけど。

現実世界でも、そんなふうにブン投げてみたいもんですね(笑) 

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